第二章 第二五話 対話編
CASE 天上 の裏に 天下
マナミ 天に上がる、天上って、どういうものなの?
マサシ 天上とは、陰陽を超えた、一元に還ることさ。
マナミ この天とは、善悪を越えた、絶対の境地なの?
マサシ そうだよ、天上を修めないと、偏ってしまう。
マナミ 天を下りる、天下って、どういうものなの?
マサシ 天下とは、陰陽が表れる、二元に帰ることさ。
マナミ この地とは、善悪が現れる、相対の境地なの?
マサシ そうだよ、天下を治めないと、乱れてしまう。
マナミ 地を治めず、天を修めると、本物なのかな?
マサシ 地を負わずに、天を追うのは、世捨て人だよ。
マナミ 天を修めず、地を治めると、本物なのかな?
マサシ 天を負わずに、地を追うのは、世迷い人だよ。
マナミ すなわち、天まで上がり、一元を修めてから、
世のために、天から下りて、二元を治めるの?
マサシ そうだよ、真の天下人は、そういう者なのさ。
マナミ う~ん、そういう本物って、本当に居るの?
居るなら、こんな世界に、為らないと思うの。
マサシ でもね、だからと言い、この世を諦めたら、
まさしく、それこそ、世捨て人の発想なのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 天上 の先に 天下
サトミ 天に上る道、天上って、どういうものかな?
メグミ 天上とは、二元の地から、一元に上ることよ。
サトミ 地から天に、還って行くと、どうなるのかな?
メグミ 善と悪が消え、徳の世界へと、去って行くよ。
サトミ 天を下る道、天下って、どういうものかな?
メグミ 天下とは、一元の地から、二元に下ることよ。
サトミ 天から地に、帰って来ると、どうなるのかな?
メグミ 悪と善が現れ、欲の世界まで、戻って来るよ。
サトミ 善と悪に分れる、欲こそが、二元の地であり、
悪と善を合わせる、徳こそが、一元の地なの?
メグミ そうよ、一元に還ってから、二元に帰るのよ。
サトミ どうして、二元に帰らないと、いけないの?
ずっと、一元に留まっていれば、良いでしょ。
メグミ 一元に居ても、二元が有れば、二元でしょ。
サトミ 二元が有っても、認めなければ、一元でしょ。
メグミ でも、いずれ、認めるように、迫られるよ。
サトミ 大丈夫、絶対に、認めないから、構わないわ。
メグミ ほら、そんな、好き嫌いを、言っていると、
もはや、善と悪を分けた、欲の世界じゃない?
サトミ ……………………!!
CASE 天上 という 天下
サトシ 天を修める、天上人って、どういうものかな?
アツシ 天上人は、二元を離れ、一元を修めるものだ。
サトシ 二元を負わず、一元を追うのが、天上人なの?
アツシ 天上人とは、地を忘れて、天を考えるものだ。
サトシ どうして、天上人って、地を忘れてしまうの?
アツシ 一度も、地に降りないで、器が小さいからだ。
サトシ じゃ、地に捕らえたら、天を捉えられないの?
アツシ そうだ、地を思うだけで、空きが埋れていく。
サトシ 地を治める、天下人って、どういうものかな?
アツシ 天下人は、一元を修め、二元を治めるものだ。
サトシ 一元を負って、二元を追うのが、天下人なの?
アツシ 天下人とは、天を忘れず、地を考えるものだ。
サトシ どうして、天下人って、天を忘れないのかな?
アツシ 何度も、天に昇ったから、器が大きいからだ。
サトシ じゃ、地を捕らえても、天を捉らえられるの?
アツシ そうだ、天を想うだけで、空きが生れてくる。
サトシ 即ち、天を修めることなく、地を治められず、
天意を、知らない者には、天下は収まらない。
アツシ この、天意を修めない者は、天下の器でない。
サトシ ……………………!!
CASE 天下なき天上 と 天上なき天下
サトミ 天上と天下、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 一元に還る、天上って、どういうものかな?
メグミ 天上とは、二元を治めず、一元に上ることよ。
サトミ 二元に帰る、天下って、どういうものかな?
メグミ 天下とは、一元を修めず、二元に下ることよ。
サトミ 天上を望み、天下に臨まないと、どうなるの?
メグミ 天下なき天上なんて、天に昇れないだけよ。
サトミ じゃ、天を修めるけど、地を治めないのかな?
メグミ そうよ、地が荒れるから、天が慌てるだけよ。
サトミ 天下を望み、天上に臨まないと、どうなるの?
メグミ 天上なき天下なんて、地が降らないだけよ。
サトミ じゃ、地を治めるけど、天を修めないのかな?
メグミ そうよ、天を忘れるから、地が廃れるだけよ。
サトミ 天上だけでは、地を調えず、天が淫れるし、
天下ばかりでは、天を整えず、地が乱れるの?
メグミ うん、天上と天下、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、天下に臨み、天上を望んでいくの?
メグミ そうなの、天上を修め、天下を治めていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 十 牛 図 壱
サトシ 禅で説く、十牛図とは、どういうものかな?
マサシ 十牛図とは、一元の境地を、牛に喩えたもの。
悟りの段階を、十段に分けて、示したものさ。
サトシ 前半の五つには、どんな意味が、有るのかな?
マサシ 二元を負い、一元を追う、道を説いているよ。
サトシ 第一図である、尋牛は、どういうものかな?
マサシ 真の自己が、有ると知り、尋ねる段のことさ。
サトシ 第二図である、見跡は、どういうものかな?
マサシ 真の自己が、在る徴しが、見える段のことさ。
サトシ 第三図である、見牛は、どういうものかな?
マサシ 真の自己が、垣間見えて、確める段のことさ。
サトシ 第四図である、得牛は、どういうものかな?
マサシ 真の自己を、真の自己と、認める段のことさ。
サトシ 第五図である、牧牛は、どういうものかな?
マサシ 真の自己が、自然となり、馴れる段のことさ。
サトシ ようやく、自然に至っても、未だ終らないの?
マサシ そうさ、これでは、まだ、不自然に戻るのさ。
サトシ せっかく、一元に馴れたのに、未だ続くのか。
マサシ ほらね、その発想からして、不自然なんだよ。
サトシ ……………………
CASE 十 牛 図 弐
サトシ 禅で説く、十牛図とは、どういうものかな?
マサシ 十牛図とは、一元の境地を、牛に喩えたもの。
悟りの段階を、十段に分けて、示したものさ。
サトシ 後半の五つには、どんな意味が、有るのかな?
マサシ 一元を負い、二元を追う、道を説いているよ。
サトシ 第六図の、騎牛帰家は、どういうものかな?
マサシ 一元を連れ、二元に帰り、一元に努める段さ。
サトシ 第七図の、忘牛存人は、どういうものかな?
マサシ 一元を忘れ、二元に存ず、一元を諦める段さ。
サトシ 第八図の、人牛倶忘は、どういうものかな?
マサシ 一元を忘れ、二元も忘れ、二元が無い一元さ。
サトシ 第九図の、返本還源は、どういうものかな?
マサシ 二元が戻り、一元も戻る、二元が有る一元さ。
サトシ 第十図の、入店垂手は、どういうものかな?
マサシ 他と関わり、道を進める、一元を伝える段さ。
サトシ 一元を得ても、一元に拘ると、不自然なのか。
マサシ 他を認めず、閉じ篭る限り、自然に為らない。
サトシ それゆえ、他と触れ合い、道を伝えるわけか。
マサシ そうさ、こうして、自然に、伝えていくのさ。
サトシ ……………………!!