第二章 第二六話 対話編
CASE 理想 の裏に 現実
マナミ 望んでいる、理想って、どういうものなの?
マサシ 理想とは、未来に招じる、実感のことなのさ。
マナミ 臨んでいる、現実って、どういうものなの?
マサシ 現実とは、現在に生じる、実感のことなのさ。
マナミ 現在に、望んでいるものに、未来に臨むの?
マサシ うん、現実を負いながら、理想を追うんだよ。
マナミ じゃあ、現実を負わないと、理想が適わない?
マサシ うん、現実を重ねるとき、理想が現実になる。
マナミ それなら、どうして、現実を負わないのかな?
マサシ 時々で、求めるものが、移り変わるからさ。
マナミ じゃ、Aを望んだり、非Aを望んだりするの?
マサシ そうさ、矛盾を望んで、現実に臨めなくなる。
マナミ 同じ物を、望んでいれば、理想が適うわけね。
マサシ そうさ、簡単に見えるけど、実際は難しいよ。
マナミ それほど、難しくないように、思えるけど。
マサシ それは、理想に過ぎないね、現実は厳しいよ。
マナミ 逆でしょ、そう思うから、現実に難しくなる。
マサシ 確かに、そうだけどね、現実で確めようか。
ともかく、現実を負わず、理想は適わないよ。
マナミ ……………………!!
CASE 理想 の先に 現実
サトミ 追っている、理想って、どういうものかな?
メグミ 理想とは、論理を解して、未来を想うことよ。
サトミ 負っている、現実って、どういうものかな?
メグミ 現実とは、実感を介して、現在を思うことよ。
サトミ 理想を、現実に変えるには、どうするのかな?
メグミ 現実を負って、理想を追えば、現実になるよ。
サトミ 現在を出発点に、理想を到達点と、認めるの?
メグミ うん、そして、その途中を、合理的に繋げる。
中途に、矛盾が無ければ、因果を辿れるのよ。
サトミ どうして、好き好んで、矛盾を抱えるのかな?
メグミ たとえ、Aを望もうとも、その経過に於いて、
なかなか、Aに臨めないと、Bを望むからよ。
サトミ つまり、Aを望んでいる時は、Aを肯定して、
逆に、Bを望んでいる時は、Aを否定するの?
メグミ そうよ、望みが合わずに、臨みが適わないよ。
サトミ じゃ、途中で妥協するほど、余計に叶わない。
メグミ 今、真剣に欲しいものが、既に妥協のBかも。
サトミ もう、訳が分からない、何を望めば良いの?
メグミ 逆説的だけど、全ての現実を、理想と認めて。
サトミ ……………………!!
CASE プラ と ソク と アリ
サトシ どうして、プラトンは、上を指しているの?
マサシ この世界は、幻影だから、理想を追うべきだ。
これこそ、彼が説く、イデアの教えだからさ。
サトシ なぜ、アリストテレスは、下を指しているの?
マサシ 理想を、追いたいなら、現実を負うべきだ。
これこそ、彼が説く、リアルの教えだからさ。
サトシ つまり、現実から、積み重ねていかなければ、
絶対、理想が適って、現実に成らないのかな?
マサシ そうさ、彼ら二人、両立して真実を説いた。
両者、対立していた、そう考える方が幻想さ。
サトシ つまり、幻想を離れて、理想を追うべきでも、
更に、現実を負わないと、幻想に嵌るのかな?
マサシ それが、現実に隠れる、真実に他ならないよ。
サトシ 真実って、僕の予想など、遥かに越えていた。
そっか、予想を越える処に、真実は在るのか。
マサシ 解ったと、思った瞬間に、幻想に覆われるよ。
サトシ 確かに、想った途端に、真実が隠れていくね。
マサシ そうだよ、それこそ、ソクラテスの教えだね。
無知を知る、これはね、予想を越えて難しい。
サトシ ……………………!!
CASE 現実なき理想 と 理想なき現実
サトミ 理想と現実、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 追っている、理想って、どういうものかな?
メグミ 理想とは、現在を解して、未来に望むことよ。
サトミ 負っている、現実って、どういうものかな?
メグミ 現実とは、実感を介して、現在に臨むことよ。
サトミ 理想を望み、現実に臨まないと、どうなるの?
メグミ 現実なき理想なんて、唯の幻想に過ぎないよ。
サトミ じゃ、未来を追っても、現在を負わないの?
メグミ そうよ、幻想に被われて、理想に対わないよ。
サトミ 現実を望み、理想に臨まないと、どうなるの?
メグミ 理想なき現実なんて、只の幻影に過ぎないよ。
サトミ じゃ、現在を負っても、未来を追わないの?
メグミ そうよ、幻影に覆われて、現実に向わないよ。
サトミ 理想だけでは、幻に抱かれ、想い込むだけ。
現実ばかりでは、幻に擁かれ、過ぎ去るだけ。
メグミ うん、理想と現実、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、現実を負い、理想を追っていくの?
メグミ そうなの、理想を感じ、現実を観じていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 民意 の裏に 天意
マナミ 人なる意志、民意って、どういうものなの?
マサシ 民意とは、想像を持って、理想を追うことさ。
マナミ 人とは、幾らでもある、理想を追うものなの?
マサシ うん、想像するだけなら、何を選んでもいい。
マナミ 天なる意思、天意って、どういうものなの?
マサシ 天意とは、創造を以って、現実を負うことさ。
マナミ 天とは、一つしかない、現実を負うものなの?
マサシ うん、創造するときには、一つ択ぶしかない。
マナミ じゃあ、唯一の創造を、無数の想像から選ぶ。
それって、どんな基準で、どのように択ぶの?
マサシ 時間に於て、過去から、一貫性が有ること。
空間に置いて、隅々まで、整合性が在ること。
マナミ それなら、時間的にしても、空間的にしても、
因果として、最も適うものが、選択されるの?
マサシ そうだよ、理想を叶えたければ、因果を考え、
不自然なく、現実を向かえる、因を選ぶのさ。
マナミ 思いの儘、理想を追っても、適わないから、
在りの侭に、現実を認め、天意を解すわけね。
マサシ 解けたら、悉く理に適って、見えて来るのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 民意 の先に 天意
サトミ 多くの意志、民意って、どういうものかな?
メグミ 民意とは、理想を叶える、人の意のことだよ。
サトシ 大きな意思、天意って、どういうものかな?
メグミ 天意とは、現実に適える、天の意のことだよ。
サトミ う~ん、理想は複数なのに、現実は単数よね。
天は、どんな人の理想を、現実にするのかな?
メグミ 天はね、誰に対しても、肩入れをしないのよ。
いつでも、在りのままに、因果を繋げるだけ。
サトミ じゃあ、矛盾が無いものが、天に選ばれるの?
メグミ 時間的にも、空間的にも、矛盾しないものよ。
サトミ 時間的に、矛盾していたら、どうなるのかな?
メグミ 刻し合って、現実になるのが、遅延するのよ。
サトミ 空間的に、矛盾していたら、どうなるのかな?
メグミ 刻し合って、現実になるのは、交互になるよ。
サトミ じゃ、自分の中で、昔と今が矛盾した分は、
自と他の矛盾となり、遅くなる原因になるの?
メグミ うん、いずれ適うけど、忘れた頃になるのよ。
サトミ う~ん、上手く行かない、早く適えて欲しい。
メグミ でも、そう願っている内は、他と刻し合うよ。
サトミ ……………………
CASE 天意なき民意 と 民意なき天意
サトミ 民意と天意、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 民から望む、民意って、どういうものかな?
メグミ 民意とは、理想を極める、人の意のことだよ。
サトミ 天から臨む、天意って、どういうものかな?
メグミ 天意とは、現実を決める、天の意のことだよ。
サトミ 民意を望み、天意に臨まないと、どうなるの?
メグミ 天意なき民意なんて、雀の千声に過ぎないよ。
サトミ じゃ、理想が増えると、現実が決らないの?
メグミ そうよ、無二に定まらず、何も適わなくなる。
サトミ 天意を望み、民意に臨まないと、どうなるの?
メグミ 民意なき天意なんて、鶴の一声に過ぎないよ。
サトミ じゃ、現実が決まると、理想が殖えないの?
メグミ そうよ、有無を言わさず、誰も敵わなくなる。
サトミ 民意だけでは、絡み過ぎて、叶わなくなり、
天意ばかりでは、解き過ぎて、適わなくなる?
メグミ うん、民意と天意、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、天意を解し、民意を介していくの?
メグミ そうなの、民意を感じ、天意を観じていくの。
サトミ ……………………!!