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物語編

第二章 第二七話 物語編

第二章    覇者   と   王者
第二七話 武で治める者 と 徳で治める者

 

天は、君の他に、もう一人の臥龍を遣わした。
その者こそ法徳、君とは、実に、永い付き合いだ。
君の現れる処、いつも彼も現われ、互いに覇を競う。

 

しかし、今は、彼の方が、遥かに勝っている。
たとえ、君が、師直伝の、最勝たる法を説こうと、
彼は、法家の怪物、彼に法で勝つのは、至難の業だ。

 

確かに、君は、法の先に現れる、徳を説いた。
しかし、徳も、説いているだけなら、法に過ぎん。
君が彼に敗れたのは、徳を法で説いた、愚のためだ。

 

理の勝負は、突き詰めて、天意を現してこそ。
徳の勝負は、受け容れながら、民意を集めてこそ。
先の君は、理の勝負でも敗れて、徳の勝負も破れた。

 

彼は、何もない処に、法を生み、国を育てた。
だからこそ、乱世の奸雄として、畏れられている。
彼から見れば、口だけの君は、嘴の黄色い雛も同然。

 

彼に勝つには、彼に優る、天意を示すことだ。
つまり、法治の世に勝る、徳治の世を作ることだ。
彼程の者は、天命で負けるなら、素直に喜ぶだろう。

 

とはいえ、徳に至るまでは、法が欠かせない。
さあ、私に向かって、天の法を嘯いてみるがいい。
天に代わって、君の思い上がりを、砕いてみせよう。

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