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物語編

第二章 第二八話 対話編

CASE 吉 の裏に 凶

 

マサシ いつも、吉が生まれると、凶が埋まれている。
    即ち、凶なき吉もなく、吉なき凶もないのさ。
マナミ 良い事が起こる、吉って、どういうものなの?
マサシ 吉とは、今よりも、良い事が起こることさ。
マナミ 今よりも、良い事が起こるほど、どうなるの?
マサシ 良い事が起こると、良いの基準が上がるから、
    吉が起こり難くなり、凶が起こり易くなるよ。
マナミ 悪い事が起こる、凶って、どういうものなの?
マサシ 凶とは、今よりも、悪い事が起こることさ。
マナミ 今よりも、悪い事が起こるほど、どうなるの?
マサシ 悪い事が起こると、良いの基準が下がるから、
    吉が起こり易くなり、凶が起こり難くなるよ。
マナミ 何が良い事で、何が悪い事か、解からないね。
    どうして、こんな変な事が、起きてしまうの?
マサシ 吉凶を、分けているのは、自然の方でなく、
    善か悪か、別けているのは、自我の法なのさ。
マナミ つまり、良し悪しなんて、絶対的ではなく、
    相対的だから、巡り廻って、元に戻るのかな?
マサシ そうさ、吉が生まれると、凶が埋まれている。
マナミ ……………………!!

 


 

CASE 吉 の先に 凶

 

サトミ あ~あ、なんか良いこと、起こらないかな。
メグミ そんなこと言ってると、悪いことが起こるよ。
サトミ ええっ、おかしいな、どうして、そうなるの?
メグミ じゃ、なんか良いって、どんなものか解かる?
サトミ ううん、分からないけど、今よりも良いもの。
メグミ じゃ、今より良いって、どんなものか解かる?
サトミ ううん、分からないけど、ほんとに良いもの。
メグミ じゃ、本当に良いって、どんなものか解かる?
サトミ ううん、分からないなぁ、どんなものかしら?
メグミ それだと、探せないよ、しっかりと考えてね。
サトミ う~ん、本当に良いものって、何だろうね。
    でも、悪いものじゃないことは、分かるわよ。
メグミ ということは、これも悪い、これも悪いって、
    否定を繰り返し、本当に、良いものを探すの?
サトミ うん、そういうことになるね、それじゃだめ?
メグミ それって、悪いことが、起きるだけじゃない?
サトミ あっ、ホントだった、どうして、こうなるの?
メグミ うふっ、どうもこうも、こういうことだよね。
    ちゃんと、考えないから、こうなるんでしょ。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 吉 という 凶

 

サトシ ねぇ、何が良いことで、何が悪いことなの?
アツシ それは、自分で決めれば、良いことだけどな。
サトシ ちょっと、適当な事なんか、言わないでよ。
アツシ たとえ、他の人から聞いても、君は認めない。
    最終的に、自分で決めれば、良いことなんだ。
サトシ やだな、僕は真剣なんだ、ちゃんと教えてよ。
アツシ ほら、俺が幾ら教えたって、君は認めないな。
    結局は、自分で決めたら、良いことになるな。
サトシ まぁ、そう言われたら、そう言うことだけど、
    自分は、真剣なんだ、何か良いこと教えてよ。
アツシ それなら、俺から一つ、良いことを教えよう。
    吉凶を、分けて行くほど、凶が増えていくぞ。
サトシ じゃ、吉凶に別けることが、全ての元凶なの?
アツシ そうだ、何が良いかって、考えることが悪い。
サトシ でも、それを言ったら、何も考えられないよ。
アツシ そうだ、考えなくて良い、総べてが良いんだ。
サトシ ちょっと、適当な事なんか、言わないでよ。
アツシ ほらな、他の人から聴いても、君は認めない。
    最終的に、自分で決めれば、良いことだよな。
サトシ ……………………

 


 

CASE 凶のない吉 と 吉のない凶

 

サトミ 吉と凶、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ より良いもの、吉って、どういうものかな?
メグミ 吉とは、器に収められる、優れているものよ。
サトミ より悪いもの、凶って、どういうものかな?
メグミ 凶とは、器に納まらない、選れてないものよ。
サトミ 吉を重んじて、凶を軽んじると、どうなるの?
メグミ 凶のない吉なんて、単なる凶に過ぎないのよ。
サトミ じゃ、優れているほど、選れてないのかな?
メグミ そうよ、値が高くなると、器に収まらないよ。
サトミ 凶を重んじて、吉を軽んじると、どうなるの?
メグミ 吉のない凶なんて、単なる吉に過ぎないのよ。
サトミ じゃ、優れてないほど、選れているのかな?
メグミ そうよ、値が安くなると、器に納められるよ。
サトミ 吉だけは、優れていくほど、選れなくなり、
    凶ばかりは、優れてないほど、選れてしまう。
メグミ そうよ、吉と凶、そのどちらも、必要なのよ。
サトミ じゃ、凶を負いながら、吉を追っていくの?
メグミ うふっ、吉を超えながら、凶を越えていくの。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 人間万事 塞翁が馬

 

サトミ 人間万事、塞翁が馬って、どういうことなの?
メグミ 昔々、ある処に、お爺さんが暮していました。
    ある日、飼っていた馬が、逃げてしまったの。
サトミ お爺さん、かわいそう、これは不運だったね。
メグミ でもね、逃げた馬が、雌馬を連れて帰ったの。
サトミ お爺さん、おめでとう、これは幸運だったね。
メグミ でもね、彼の息子が、落馬して大怪我したの。
サトミ お爺さん、かわいそう、これは不運だったね。
メグミ でもね、その怪我で、戦争に行かずに済んだ。
サトミ お爺さん、おめでとう、これは幸運だったね。
メグミ つまり、人が幸運なのか、人が不幸なのかは、
    人が、区切る所を変えれば、変わって来るの。
サトミ 自然は、善とか悪とかに、分けていないのに、
    自分から、吉とか凶とかに、別けてしまうの?
メグミ うん、自然を切り取って、自我が選り分ける。
サトミ つまり、抜き出した物が、悪いんじゃなくて、
    自然から、抜き出した者が、悪いってことね。
メグミ うふっ、その自我だって、自然に含まれるよ。
    ほら、自我に対しても、悪く区切らないでね。
サトミ ……………………!!

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