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物語編

第二章 第二九話 対話編

CASE 得 の裏に 損

 

マナミ 良くなること、得って、どういうものなの?
マサシ 得とは、欲を介して、良く解することなのさ。
マナミ 悪くなること、損って、どういうものなの?
マサシ 損とは、欲を介して、悪く解することなのさ。
マナミ そもそも、欲を介さないと、得も損もないの?
マサシ そうさ、良く解するから、損と得が現われる。
マナミ 得が現われると、同じだけ、損が表われるの?
マサシ 欲を介すると、同じだけ、得と損が現れるよ。
マナミ 得と損が、等しくなるのは、どうしてなの?
マサシ 例えば、どの坂の道にも、上り下りが有る。
    もし、上りを得とするなら、下りは損になる。
マナミ 同じ坂だから、上りも下りも、同じだけ在る。
マサシ 例えば、あの月の姿には、満ち欠けが有る。
    もし、満月を得とするなら、新月は損になる。
マナミ 同じ月だから、満ちも欠けも、同じだけ在る。
マサシ うん、同じものを介して、違えて解するのさ。
マナミ そっか、分ける前のものが、同じものだから、
    得と損が、等しくなるのって、当り前なのね。
マサシ そうさ、偶然に感じただけ、当然に観じるよ。
マナミ ……………………!!

 


 

CASE 得 の先に 損

 

サトミ 良く捉らえる、得って、どういうものかな?
メグミ 得とは、欲を持って、良い方を得ることだよ。
サトミ 悪く捕らえる、損って、どういうものかな?
メグミ 損とは、欲を以って、悪い方を得ることだよ。
サトミ 先に得を選ぶと、後から必ず、損を択ぶの?
メグミ 初めに損を択ぶと、後から必ず、得を選ぶよ。
サトミ どうして、そんなこと、言い切れるのかな?
メグミ 例えば、先に財を使えば、後から使えない。
    絶対、先に得をすれば、後から損をするのよ。
サトミ 誰か得を選ぶと、誰かが必ず、損を択ぶの?
メグミ 誰かが損を択ぶと、誰かが必ず、得を選ぶよ。
サトミ どうして、そんなこと、言い切れるのかな?
メグミ 例えば、誰か財を得れば、他は得られない。
    絶対、誰か得をすれば、誰かは損をするのよ。
サトミ 他人は、損ばかりしても、別に構わないから、
    自分だけ、得ばかりするの、出来ないのかな?
メグミ 誰もが、そう考えるから、絶対に出来ないよ。
サトミ でも、そこをどうにか、出来ないのかなって。
メグミ うふっ、良く捉えるほど、後で悪く捕えるよ。
サトミ ……………………

 


 

CASE 損 という 得

 

メグミ あっ、ペンキが、あなたの服に付いちゃった。
    ごめん、サトシ君、ちゃんと弁償するからね。
サトミ 良いのよ、大丈夫よ、そんなの気にしないで。
サトシ ええっ、どうして、君が、許しているんだよ。
サトミ あんたね、これぐらい、赦してあげなさいよ。
サトシ じゃあ、その代わり、君が弁償してくれるの?
サトミ あたしは、あんたには、何もしてないでしょ。
    どこに、責任があるのよ、弁償なんてしない。
サトシ 誰か得をしたら、裏で、誰か損しているんだ。
    損しないのに、得しようなんて、偽善だから。
サトミ 人の罪を負わず、人を許すなんて、偽善なの?
サトシ そうだよ、良い人の振りをした、偽善者だよ。
サトミ まぁ、偽善でも良いわよ、赦してあげなさい。
サトシ 誰かが、責任を取らないと、責任は残るんだ。
    最終的に、最も弱い人が、責任を取らされる。
サトミ それで、良いじゃない、今回は許しなさいよ。
    次回から、あんたのこと、赦してあげるから。
サトシ ほらね、どんなときも、君の善は偽善なんだ。
    他人を許す振りして、自分を赦しているんだ。
サトミ ……………………

 


 

CASE 得 という 損

 

サトシ ねぇ、何が得なことで、何が損なことなの?
アツシ それは、自分で決めれば、良いことだけどな。
サトシ ちょっと、適当な事なんか、言わないでよ。
アツシ たとえ、他の人から聞いても、君は認めない。
    最終的に、自分で決めれば、得られることだ。
サトシ やだな、僕は真剣なんだ、ちゃんと教えてよ。
アツシ ほら、俺が幾ら教えたって、君は見とめない。
    結局は、自分で決めたら、良いことになるな。
サトシ まぁ、そう言われたら、そう言うことだけど、
    自分は、真剣なんだ、何か得なこと教えてよ。
アツシ それなら、俺から一つ、得なことを教えよう。
    損得を、分けて行くほど、損が増えていくぞ。
サトシ じゃ、損得に別けないのが、究極の得なの?
アツシ そうだ、何が得なのかと、考えないのが徳だ。
サトシ でも、それを言ったら、何も考えられないよ。
アツシ そうだ、考えなくて良い、総べてが徳なんだ。
サトシ ちょっと、適当な事なんか、言わないでよ。
アツシ ほらな、他の人から聴いても、君は認めない。
    最終的に、自分で決めれば、良いことだよな。
サトシ ……………………

 


 

CASE 損のない得 と 得のない損

 

サトミ 得と損、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 利を得ること、得って、どういうものかな?
メグミ 得とは、利と害に分けて、利を捉えることよ。
サトミ 害を得ること、損って、どういうものかな?
メグミ 損とは、利と害に別けて、害を捕えることよ。
サトミ 得を重んじて、損を軽んじると、どうなるの?
メグミ 損のない得なんて、単なる損に過ぎないのよ。
サトミ じゃ、得し続けるほど、利が少なくなるの?
メグミ そうよ、害が増えるから、損が多くなるのよ。
サトミ 損を重んじて、得を軽んじると、どうなるの?
メグミ 得のない損なんて、単なる得に過ぎないのよ。
サトミ じゃ、損し続けるほど、害が少なくなるの?
メグミ そうよ、利が殖えるから、得が多くなるのよ。
サトミ 得だけは、利を喪っていく、損を招じるし、
    損ばかりは、害を失っていく、得を請じるの?
メグミ そうよ、得と損、そのどちらも、必要なのよ。
サトミ じゃ、損を負いながら、得を追っていくの?
メグミ うふっ、得を超えながら、損を越えていくの。
サトミ ……………………!!

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