第二章　　　仁義礼智
第三十回　仁　の裏に　徳

仁は、愛を持って、彼らに得を与えること
徳とは、器を以って、自らに損を容れること
仁は、愛を広げるため、自らの得を分けること
徳とは、器を拡げるため、彼らの損を受けること

畢竟、徳のない仁は、匹婦の仁に過ぎない
たとえ、憐れんで、他に得を与えたとしても
自らが損しなければ、誰かから得を奪っている
誰かの得を、誰かに回し、自らが得しようとする

必竟、仁のない徳は、匹夫の勇に過ぎない
たとえ、勇ましく、自ら損を受けたとしても
自らが得していれば、誰にも得を与えられない
自らの損を、自らに廻し、自らが得しようとする

仁は、我が如く他を愛す、惻隠の心のこと
義とは、我が悪を羞じ入る、羞悪の心のこと
礼は、我が善を他に譲り渡す、辞譲の心のこと
智とは、我が善と悪を良く知る、是非の心のこと