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物語編

第二章 第三十話 対話編

CASE 仁 の裏に 徳

 

マナミ 愛の心である、仁って、どういうものなの?
マサシ 仁とは、愛を持って、他に得を授けることさ。
マナミ どうして、他に対して、我が得を与えるの?
マサシ 中身を授け、器を空けて、徳を培うためだよ。
マナミ 自ずから、得を害なうほど、損に為らないの?
マサシ 自ずと、損に変わるけど、それが徳に換わる。
マナミ 空の器である、徳って、どういうものなの?
マサシ 徳とは、器を以って、我に損を受けることさ。
マナミ どうして、我に対して、他の損を容れるの?
マサシ 外殻を越え、愛を広げて、仁を培うためだよ。
マナミ 自ずから、我を損なうほど、苦に為らないの?
マサシ 自ずと、苦に変わるけど、それが仁に換わる。
マナミ じゃ、損を受け容れて、器を研いていくし、
    さらに、苦を乗り越えて、愛を磨いていくの?
マサシ 仁は、自分のように、他人を慈しむことで、
    徳とは、自分のように、他人を認めることさ。
マナミ 即ち、自分と他人を、等しく見られるなら、
    自分が、損であるとか、苦しいとか思わない?
マサシ うん、全てが愛おしくて、総てが徳になるよ。
マナミ ……………………!!

 


 

CASE 仁 の先に 徳

 

サトミ 愛を広げること、仁って、どういうものかな?
メグミ 仁とは、欲を超えて、中の実が広がることよ。
サトミ 器を広げること、徳って、どういうものかな?
メグミ 徳とは、欲を越えて、外の殻が広がることよ。
サトミ そもそも、この欲って、どういうものなの?
メグミ 欲とは、自然を切り取り、自我を造るものよ。
サトミ それなら、この我って、どういうものなの?
メグミ 我とは、自然を切り分け、好悪を作るものよ。
サトミ 欲に耽って、我に捕らわれると、どうなるの?
メグミ 徳が減り、好き嫌いを憶えて、愛が冷えるよ。
サトミ 欲に溺れず、我に囚われないと、どうなるの?
メグミ 徳が増え、好き嫌いを忘れて、愛が温まるよ。
サトミ う~ん、好き嫌いを言うと、愛が冷えるなら、
    似ている、好きと愛って、全く違うものなの?
メグミ 嫌なものを、好きに変えてこそ、仁であり、
    嫌いなものを、好きに換えてこそ、徳なのよ。
サトミ う~ん、そういう事なら、好き嫌いが激しい、
    あたしは、愛は深くなくて、欲が深いのかな?
メグミ うふっ、どんなあなたも、私は愛しているよ。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 仁 と 欲 と 徳

 

サトシ 善を究めること、欲って、どういうものかな?
アツシ 欲とは、善と悪を分け、善を極めることだな。
サトシ 善を授けること、仁って、どういうものかな?
アツシ 仁とは、我が善を磨き、他に与えることだな。
サトシ 善を超えること、徳って、どういうものかな?
アツシ 徳とは、我が善を解き、善を越えることだな。
サトシ 欲を持って、磨き上げた善を、他に与えるの?
アツシ ああ、この時、何を望んで、善を報いるかで、
    自らに、何が酬われるか、その果報が変わる。
サトシ 我が考える、善くを望むと、どうなるのかな?
アツシ 更に善くなる、善として、酬いられるだろう。
サトシ 我を超える、良くを望むと、どうなるのかな?
アツシ 全て良くなる、徳として、酬いられるだろう。
サトシ 見返りを求めて、善を授ければ、善で返り、
    見返りを求めずに、善を与えれば、徳で還る?
アツシ ああ、空の器である、在りのままが、蘇える。
サトシ う~ん、磨き上げたのに、元に戻るだけなの?
    そんなの、詰まらない、もっと善い道は無い?
アツシ 好きなだけ、飽きるまで、探して良いからな。
サトシ ……………………

 


 

CASE 徳のない仁 と 仁のない徳

 

サトミ 仁と徳、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 総てを慈しむ、仁って、どういうものかな?
メグミ 仁とは、我が受ける得を、他に授けることよ。
サトミ 全てを認める、徳って、どういうものかな?
メグミ 徳とは、他が受ける損を、我に容れることよ。
サトミ 仁を重んじて、徳を軽んじると、どうなるの?
メグミ 徳のない仁なんて、匹婦の仁に過ぎないよ。
サトミ じゃ、自ら損を受けず、他に得を授けるの?
メグミ そうよ、他の得を奪って、他に得を与えるの。
サトミ 徳を重んじて、仁を軽んじると、どうなるの?
メグミ 仁のない徳なんて、匹夫の勇に過ぎないよ。
サトミ じゃ、自ら損を受けて、誰も得を享けないの?
メグミ そうよ、他の損を容れず、他に得を与えない。
サトミ 仁だけでは、得を追っても、損は負わない。
    徳ばかりでは、損を負っても、得は追わない。
メグミ そうよ、仁と徳、そのどちらも、必要なのよ。
サトミ じゃ、徳を研きながら、仁を磨いていくの?
メグミ うふっ、仁を究めながら、徳を極めていくの。
サトミ ……………………!!

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