第二章 第三一話 対話編
CASE 智 の裏に 徳
マナミ 良く解かること、智って、どういうものなの?
マサシ 智とは、良くを持って、良く解することだよ。
マナミ それなら、良く解すには、どうすれば良いの?
マサシ 欲を持って、善と悪に、良く分けていくのさ。
マナミ じゃあ、欲を培わないと、良く解らないの?
マサシ うん、大いなる欲こそ、大いなる智になるよ。
マナミ 良く認めること、徳って、どういうものなの?
マサシ 徳とは、良くを解いて、良く和することだよ。
マナミ それなら、良く和すには、どうすれば良いの?
マサシ 欲を解いて、善と悪を、良く合せていくのさ。
マナミ じゃあ、徳を培わないと、良く悟れないの?
マサシ うん、大いなる徳こそ、大いなる空になるよ。
マナミ つまり、欲を捨て過ぎても、智が培えないし、
逆に、欲を持ち過ぎても、徳が培えないわけ?
マサシ そうさ、器に合わせて、欲を使いこなすのさ。
即ち、器が小さいと、大きな欲を持てないよ。
マナミ 徳に応じて、欲を持つことが、大事なのね。
欲の罠が、解からないから、自滅してしまう。
マサシ だからこそ、智が大事だって、良く解かった?
マナミ ……………………!!
CASE 智 の先に 徳
サトミ 光を広げること、智って、どういうものかな?
メグミ 智とは、欲を超えて、光の界が広がることよ。
サトミ 空を広げること、徳って、どういうものかな?
メグミ 徳とは、欲を越えて、空の器が広がることよ。
サトミ そもそも、この欲って、どういうものなの?
メグミ 欲とは、自然を塗り分け、陰陽を描くものよ。
サトミ それなら、この色って、どういうものなの?
メグミ 色とは、自然を塗り固め、善悪を画くものよ。
サトミ 欲に耽って、色に捕らわれると、どうなるの?
メグミ 徳が減り、善し悪しを憶えて、智が曇るのよ。
サトミ 欲に溺れず、色に囚われないと、どうなるの?
メグミ 徳が増え、善し悪しを忘れて、智が晴れるよ。
サトミ う~ん、善し悪しを知ると、智が曇るなら、
似ている、知ると智って、全く違うものなの?
メグミ 悪いものを、善いと覚ってこそ、智であり、
悪しきものを、善いと悟ってこそ、徳なのよ。
サトミ う~ん、そういう事なら、好きだけ知りたい、
あたしは、智は深くなくて、欲が深いのかな?
メグミ うふっ、それに気づけたのは、智そのものよ。
サトミ ……………………!!
CASE 智 と 欲 と 徳
サトシ 良くを望むこと、欲って、どういうものかな?
アツシ 欲とは、思いのままに、良く究めることだな。
サトシ 明くに臨むこと、智って、どういうものかな?
アツシ 智とは、在りのままに、良く解することだな。
サトシ 空くに臨むこと、徳って、どういうものかな?
アツシ 徳とは、在りのままに、良く合せることだな。
サトシ 欲を持って、善と悪に分けると、どうなるの?
アツシ 大いなる空が、光と闇に別れ、色が現われる。
サトシ 闇を嫌って、光を好んでいると、どうなるの?
アツシ 光が闇に被われて、次第に、飽くようになる。
サトシ 闇を認めて、光を当てていると、どうなるの?
アツシ 闇が光に覆われて、次第に、明くようになる。
サトシ 闇が明けて、色が落ちていくと、どうなるの?
アツシ 善と悪を解く、一元の扉が、開くようになる。
サトシ 分別が無かった、元の世界に、戻っていくの?
アツシ 在りのまま、大いなる器が、空くようになる。
サトシ う~ん、良く究めたのに、元に戻るだけなの?
そんなの、詰まらない、もっと善い道は無い?
アツシ 無かったと、諦めるまで、探して良いからな。
サトシ ……………………
CASE 徳のない智 と 智のない徳
サトミ 智と徳、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 明らかに知る、智って、どういうものかな?
メグミ 智とは、陰と陽を超えて、明を表わすことよ。
サトミ 空らかに行う、徳って、どういうものかな?
メグミ 徳とは、陽と陰を越えて、空を現わすことよ。
サトミ 智を重んじて、徳を軽んじると、どうなるの?
メグミ 徳のない智なんて、老気の翳りに過ぎないよ。
サトミ じゃ、知が先んじて、行が続かないのかな?
メグミ そうよ、過ちを恐れて、業を積めなくなるよ。
サトミ 徳を重んじて、智を軽んじると、どうなるの?
メグミ 智のない徳なんて、若気の至りに過ぎないよ。
サトミ じゃ、行が先んじて、知が続かないのかな?
メグミ そうよ、過ちを怖れず、業を改めなくなるよ。
サトミ 智だけは、畏れを観じて、業を修めないし、
徳ばかりは、怖れを感じず、法を修めないの?
メグミ そうよ、智と徳、その両方が、必要になるの。
サトミ じゃ、徳を研きながら、智を磨いていくの?
メグミ うふっ、智を究めながら、徳を極めていくの。
サトミ ……………………!!