物語編
第二章 第三二話 物語編
第二章 欲 と 徳
第三二話 良く明らめる と 良く諦らめる
「何を諦めるべきで、何を明らめるべきですか。
私は、欲に目が眩んで、天の理が見えていません。
私には、天の理を諦めてしまう、気がしてならない。」
〈諦めるのは、欲に溺れる欲、小さな欲であり、
明らめるべきは、欲を越える欲、大きな欲である。
欲は、その向きによって、良くもなり、悪くもなる。〉
〈そもそも、人の欲は、良くを究める心のこと。
良くばかり求めていると、いずれ飽くようになる。
多くの欲に溺れる限り、悪に呑まれて心は重くなる。〉
〈もとより、人の欲は、良くを極める心のこと。
悪くなるような良くなら、求めるべき欲ではない。
大きな欲を持てば良い、小さな欲ほど良く悪くなる。〉
〈小さな欲は、嘘に聞えるが、貪欲に似ている。
少しは欲しいと、思える者ほど、不要な物に臨む。
あれか、これかと、迷って居ると、欲に塗れている。〉
〈大きな欲は、嘘に見えるが、無欲に似ている。
心から欲しいと、想える者ほど、必要な物を望む。
これだ、これだと、絞って行くと、欲を越えている。〉