第二章　　　天理人欲
第三二回　欲　の裏に　徳

欲は、良くを持って、善を突き詰めること
徳とは、飽くを以って、悪を受け容れること
欲は、善と悪に切り分け、我が意を積み重ねる
徳では、善と悪を抱き合せ、空の器に移し変える

小さな欲は、善と悪を分けて、得を求める
これは善いが、あれでは悪いと、善く望むと
これも飽いたし、あれも飽いたと、欲に溺れる
小欲を持って、得が究められて、損に窮められる

大きな欲は、善と悪を合せて、徳を求める
これも良いし、あれでも良いと、良く臨むと
これも空いたし、あれも空いたと、欲を超える
大欲を以って、得が究められて、徳に極められる

小さな欲は、良くを究めて、飽くに窮まり
大いなる欲は、良くを究めて、空くに極まる
小さな欲は、空かない悪となり、欲の罠となる
大いなる欲は、飽きない徳となり、空の器となる