第二章 第三三話 対話編
CASE 得 の裏に 徳
マナミ 外なる利のこと、得って、どういうものなの?
マサシ 得とは、害でない利である、相対の利なのさ。
マナミ じゃ、誰か得を味わうと、誰か損を味わうの?
マサシ そうさ、外なる利を、互いに奪い合うのさ。
マナミ どうして、外のものは、奪い合うしかないの?
マサシ 外なる物は、有限であり、相対になるからさ。
マナミ 外に望むほど、相対の世に、巻き込まれるの?
マサシ そうさ、心の透き間を、物で埋めるしかない。
マナミ 内なる利のこと、徳って、どういうものなの?
マサシ 徳とは、害のない利である、絶対の利なのさ。
マナミ じゃ、誰か徳を積んでも、誰も損を得ないの?
マサシ そうさ、内なる利を、互いに認め合うのさ。
マナミ どうして、内のものは、認め合うしかないの?
マサシ 内なる者は、無限であり、絶対になるからさ。
マナミ 内に臨むほど、絶対の界に、満ち足りるの?
マサシ そうさ、心の持ち方で、何とでも為るんだよ。
マナミ それなら、徳の方が、遥かに得だと思うの。
マサシ それが、解らないから、外に訊ねているんだ。
もう、君は、内に尋ねて、認めれば良いのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 得 の先に 徳
サトミ 奪わないと増えない、得って、どういうもの?
メグミ 得とは、有限に観じる、外に求める利なのよ。
奪い合い、得するはずが、損をするものなの。
サトミ 与えないと増えない、徳って、どういうもの?
メグミ 徳とは、無限に感じる、内に求める利なのよ。
与え合い、損するはずが、徳をするものなの。
サトミ 奪い合うと、与え合うでは、どっちが得なの?
メグミ 外の利は、有限であることが、鍵になるのよ。
有限の利を、奪い合ったら、どうなると思う?
サトミ 有限を競って、有限の歓びを、観じるだけよ。
メグミ 有限の利を、与え合ったら、どうなると想う?
サトミ 有限が巡って、無限の喜びを、感じられるよ。
メグミ たとえ、如何なる得を、外に観じていようと、
内で感じているのは、心の豊かさ、徳なのよ。
サトミ つまり、外の物を介して、心を喜ばせるより、
内なる者、心を豊かにした方が、徳ってこと?
メグミ そうよ、心を豊かにすると、無限に喜べるの。
サトミ でも、物に恵まれた方が、得が気がするな。
メグミ うふっ、その得が巡る方が、徳な気がするよ。
サトミ ……………………
CASE 得 という 徳
サトミ 宝くじを当てて、大金持ちに為ってみたいな。
マナミ 先に得をするとき、必ず、後で損をするの。
お金は、先に苦労して、手に入れるべきなの。
サトミ どのように、手に入れても、関係ないでしょ。
マナミ ううん、先に損しないと、得が分からないの。
それでは、徳に変わる、遣い道が解からない。
サトミ 損に変わる、使い道って、どういうものかな?
マナミ 得を使うから、得が損なわれる、使い方なの。
サトミ 徳に変わる、遣い道って、どういうものかな?
マナミ 得を遣っても、徳で帰ってくる、遣い方なの。
サトミ どうしたら、得が徳に変って、返って来るの?
マナミ 流れて来たら、貯め込まないで、受け流すの。
すると、自分を中心とした、流れが出来るの。
サトミ じゃ、自分の為に使わず、人々の為に遣うの?
つまり、我が為に貯めたら、徳に変らないの?
マナミ 得は、貯めて置かないと、使えないけれど、
徳なら、必要なときに、必要なものが揃うの。
サトミ 嘘よ、必要なとき無くて、苦労するだけよ。
マナミ ほらね、苦労してないから、徳が解からない。
サトミ ……………………
CASE 徳 という 得
サトミ 得に変わる、物の考え方は、どういうもの?
マナミ 損得を考えて、損しないよう、突き詰めるの。
サトミ 良く考えて、得に臨んでも、損は望まないの?
マナミ これは善いが、あれは悪いと、解釈をするの。
サトミ 徳に換わる、物の考え方は、どういうもの?
マナミ 損得を考えず、逃げないよう、受け容れるの。
サトミ 何も考えず、何に臨んでも、何も望まないの?
マナミ これも良いが、あれも良いと、感謝をするの。
サトミ う~ん、その考え方は、何も考えてないから、
どんどん、損するように、為って行かないの?
マナミ いつも、必要なものが、目の前に現れるから、
目の前のものを、受け容れる事が、重要なの。
サトミ 必要なのに、必要ないと、逃げているほど、
思いの外、遠回りになって、損してしまうの?
マナミ だからこそ、何でも受け容れる方が、徳なの。
サトミ いやいや、そんな危ない考え、認められない。
マナミ 今のあなたに、必要な教えだと、思わないの?
サトミ 想わないわ、危うく騙され、損する所だった。
マナミ あなたに、徳は説けない、すべて損得になる。
サトミ ……………………
CASE 損 と 徳 と 得
サトシ 全く囚われない、徳って、どういうものかな?
アツシ 徳とは、何でも良いと、捉えていることだな。
サトシ 善く捕らわれる、得って、どういうものかな?
アツシ 得とは、これは善いと、捕えていることだな。
サトシ 悪く捕らわれる、損って、どういうものかな?
アツシ 損とは、これは悪いと、捕えていることだな。
サトシ そもそも、欲を持たなければ、良いじゃない?
アツシ 欲が無いと、何でも無いになり、別物になる。
サトシ う~ん、何でも無いでも、良いんじゃないの?
アツシ いや、良いじゃないと、言っている時点で、
もはや、欲を持っていて、君は元に戻れない。
サトシ それゆえ、欲を以って、損と得を考えるのか。
アツシ そうだ、得を辿って、これは善いを重ねて、
最終的に、徳に至って、どれも良いに変える。
サトシ これ悪いを、これ善いに、変えて行くわけか。
アツシ そうだ、得を積み重ねても、損に換わるだけ。
逆に、損を得に換えれば、徳に生まれ変わる。
サトシ そっか、良くは飽くけども、解けば空くんだ。
アツシ 良く解けたな、それこそ、空の器である徳だ。
サトシ ……………………!!
CASE 徳のない得 と 得のない徳
サトミ 得と徳、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 善くを説く、得って、どういうものなのかな?
メグミ 得とは、これは善いと、二元を誘うものだよ。
サトミ 良くを解く、徳って、どういうものなのかな?
メグミ 徳とは、どれも良いと、一元に導くものだよ。
サトミ 得を重んじて、徳を軽んじると、どうなるの?
メグミ 徳のない得なんて、唯の飽くに過ぎないのよ。
サトミ じゃ、善を説いても、欲を解かないのかな?
メグミ そうよ、欲に捕われて、悪に至るだけなのよ。
サトミ 徳を重んじて、得を軽んじると、どうなるの?
メグミ 得のない徳なんて、只の空くに過ぎないのよ。
サトミ じゃ、欲を解いても、善を説かないのかな?
メグミ そうよ、徳に囚われて、空に到るだけなのよ。
サトミ 得だけは、飽いてしまう、欲ばかりになり、
徳ばかりは、空いてしまう、空ばかりになる?
メグミ そうよ、得と徳、その両方が、必要になるの。
サトミ じゃ、徳を研きながら、得を磨いていくの?
メグミ うふっ、得を究めながら、徳を極めていくの。
サトミ ……………………!!