第二章 第三四話 対話編
CASE 法 の裏に 徳
マナミ 外から治める、法って、どういうものなの?
マサシ 法とは、外に強いて、欲を抑える理のことさ。
マナミ どうして、法を説いて、他の欲を押えるの?
マサシ 欲と欲って、刻するほど、害が増えるからさ。
マナミ 最初は、見つけやすい、外を治めると良いの?
マサシ そうだよ、暫定の原因は、自分の外に有るよ。
マナミ 内まで治める、徳って、どういうものなの?
マサシ 徳とは、内に布いて、欲を超える理のことさ。
マナミ どうして、徳を解いて、我の欲を越えるの?
マサシ 欲と欲って、和するほど、利が殖えるからさ。
マナミ 最後は、見つけにくい、内を治めると良いの?
マサシ そうだよ、本当の原因は、自分の内に在るよ。
マナミ 最初は、自らを顧みず、外に探し求めるけど、
最終的に、自らを省みて、内に捜し始めるの?
マサシ そうさ、他人の所為にして、何回も失敗して、
何度も反省してこそ、自分の所為に出来るよ。
マナミ う~ん、本当の原因は、自分の中にあるって、
どうして、最初から、誰も教えてくれないの?
マサシ ほらね、法で教えても、認める徳がないのさ。
マナミ ……………………
CASE 法 の先に 徳
サトミ 外に強いている、法って、どういうものかな?
メグミ 法とは、山中の賊を捕える、外の理のことよ。
サトミ 捕え易い、山中の賊って、どういうものなの?
メグミ 外の世界に、問題を原因を、捕らえることよ。
外なる問題は、捕え易いけど、芯を捉えない。
サトミ 捕まえても、心まで捉えず、また現われるの?
メグミ そうよ、同じ問題が、何度でも起きてくるの。
サトミ 内に布いている、徳って、どういうものかな?
メグミ 徳とは、心中の賊を捉える、内の理のことよ。
サトミ 捉え難い、心中の賊って、どういうものなの?
メグミ 内の世界に、問題の原因を、捉らえることよ。
内なる問題は、捉え難いけど、芯を捉えるの。
サトミ 捕まえたら、心まで捉えて、もう現れないの?
メグミ そうよ、同じ問題は、二度と起きなくなるの。
サトミ すべての、問題の源は、自分の心中にあるの?
メグミ それが、認められるのは、最高の境地だけど、
無意識に、他の所為にして、見とめないのよ。
サトミ うん、でも、きっと、みんなも、そうでしょ。
メグミ うふっ、こんなにうまく、人の所為にするの。
サトミ ……………………
CASE 法 という 徳
サトミ どのように、法の勝ち負けは、決まるのかな?
サトシ どれだけ、突き詰められるかで、極まるんだ。
サトミ どのように、徳の勝ち負けは、決まるのかな?
サトシ どれだけ、受け容れられるかで、極まるんだ。
サトミ う~ん、解らない、それって、どういうこと?
サトシ じゃ、君は、地球の形は、どんな形だと思う?
サトミ あたしは、地球は球形だと、想っているわ。
サトシ ぼくは、地球は平面であると、思っているよ。
サトミ あんたは、水平線が丸いの、見たことないの?
サトシ そうなんだ、それならば、君の方が正しいね。
サトミ その通り、法の勝ち負けは、あたしの勝ちね。
サトシ じゃあ、君は、どちらも、正しいって思う?
近くから見れば平面で、遠くから見れば球形。
サトミ ううん、平面なんて、正確に見てないだけよ。
サトシ 君は、地球が平面だと、受け容れられないの?
サトミ 当然よ、球が平らなんて、間違いなんだもん。
サトシ それなら、徳の勝ち負けは、僕の方が勝ちか。
サトミ もうっ、あんたは過ちで、あたしが勝ちなの。
サトシ それなら、君が勝ちで良い、受け容れるから。
サトミ ……………………
CASE 徳 という 法
サトシ 原則から収める、法って、どういうものかな?
マサシ 法とは、解けないけど、説けるものなんだよ。
サトシ どうして、法は説けても、解けないのかな?
マサシ 法とは、漏れないよう、守るべきものなのさ。
説きながら、解いていたら、破ってしまうよ。
サトシ 例外まで納める、徳って、どういうものかな?
マサシ 徳とは、説けないけど、解けるものなんだよ。
サトシ どうして、徳は解けても、説けないのかな?
マサシ 徳とは、漏れないよう、広げるべきものだよ。
解きながら、説いていたら、狭めてしまうよ。
サトシ う~ん、原則を説くから、例外が解かれる。
徳として、例外を説いたら、どうなるのかな?
マサシ 徳を説いた、その途端に、徳という法になり、
法が説かれた、その瞬間に、漏れが生じるよ。
サトシ 確かに、徳とは何かを、説く必要があるけど、
最終的に、行動を以って、示すしかないのか。
マサシ うん、徳は、騙っていると、漏れていくのさ。
サトシ そっか、説くと漏れても、解くと漏れないか。
マサシ うん、だから、僕が説けるのは、ここまでさ。
サトシ ……………………!!
CASE 業 と 法 と 徳
サトシ 陰陽が絡まる、業って、どういうものかな?
アツシ 業とは、因と果を介して、自我を作ることだ。
サトシ 陰陽が解ける、法って、どういうものかな?
アツシ 法とは、因と果を解して、自我を壊すことだ。
サトシ 陰陽が透ける、徳って、どういうものかな?
アツシ 徳とは、因と果を越えて、自然が蘇ることだ。
サトシ そもそも、自我って、因果で作られているの?
アツシ そうだ、因果を介して、自我は移り変わる。
サトシ それなら、Aを重んじて、非Aを軽んじると?
アツシ 因果が偏り、我が業として、自我に刻まれる。
サトシ それから、非Aを重んじ、Aを軽んじると?
アツシ 因果が直り、我が法として、自我に印される。
サトシ じゃあ、Aが業のときは、非Aが法となるし、
逆に、非Aが業のときには、Aが法となるの?
アツシ そうだ、そもそも、因果には、実体はないが、
偏るほど、実感が湧き、実体を感じてしまう。
サトシ 今まで、自然を感じると、思っていたけど、
不自然を、自然になるまで、歪めていたのか。
アツシ 良く解けたな、それこそ、自然が蘇った徳だ。
サトシ ……………………!!
CASE 徳のない法 と 法のない徳
サトミ 法と徳、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 締め上げる、法って、どういうものなのかな?
メグミ 法とは、理に背く者を、切り捨てる理なのよ。
サトミ 拾い上げる、徳って、どういうものなのかな?
メグミ 徳とは、理に叛く者を、受け容れる器なのよ。
サトミ 法を重んじて、徳を軽んじると、どうなるの?
メグミ 徳のない法なんて、単なる偏屈に過ぎないよ。
サトミ じゃ、切り捨てるけど、受け容れないのかな?
メグミ そうよ、悪を育てるのは、他に委ねてしまう。
サトミ 徳を重んじて、法を軽んじると、どうなるの?
メグミ 法のない徳なんて、単なる呑気に過ぎないよ。
サトミ じゃ、受け容れるけど、切り捨てないのかな?
メグミ そうよ、悪を懲らすのは、他に任せてしまう。
サトミ 法だけでは、網を広げても、抜け落ちるし、
徳ばかりでは、器を拡げても、零れ落ちるの?
メグミ そうよ、法と徳、そのどちらも、必要なのよ。
サトミ じゃ、徳を研きながら、法を磨いていくの?
メグミ うふっ、法を究めながら、徳を極めていくの。
サトミ ……………………!!