物語編
第二章 第四十話 物語編
第二章 正 と 奇
第四十話 自生するもの と 寄生するもの
「如何なる才にも、価値を与えるとは、危うい。
確かに、善き才が増えるなら、国は栄えるだろう。
一方、悪しき才が殖えるならば、国は滅びるだろう。」
「正しい道は、自から利を生む、才を研くこと。
邪まなる道とは、他から利を奪う、才を磨くこと。
寄生する者は、自生する者を滅ぼし、自らを亡ぼす。」
「即ち、才には、正と邪の、明確な分別がある。
それを一様に認めるとは、正と邪を越える、邪道。
彼は、才を求める余り、道の本質を違えていないか。」
〈然り、確かに、そこまでは、君の言う通りだ。
だが、彼なら、そこからは、こう言い切るだろう。
そもそも、才に意味などなく、徳の手段に過ぎない。〉
〈確かに、彼は、飽きる事なく、才を集めるが、
その実、彼は、如何な才にも、囚われてはいない。
即ち、完全に自立していて、何も必要としていない。〉
〈飽く迄、彼は、徳に育てるため、才を認める。
自らの得だけに甘んじて、他の得にならない才は、
口だけの徳を蹂躙した如く、形だけの礼で陵辱する。〉