第二章 第四十話 対話編
CASE 正 の裏に 奇
マナミ 主を司るもの、正って、どういうものなの?
マサシ 正とは、主な役を演じる、多数の派のことさ。
マナミ 副を司るもの、奇って、どういうものなの?
マサシ 奇とは、脇の役を演じる、少数の派のことさ。
マナミ 必ず、正が生まれると、奇が埋まれているの?
マサシ そうさ、奇なき正もなく、正なき奇もないよ。
マナミ どうして、そんなことまで、言い切れるの?
マサシ 群体を、形成する個体は、全体を意識するよ。
マナミ 個と全は、切れて見えても、切れて居ないの?
マサシ 意識が、個体の意識を、感じているときに、
無意識に、全体の意識を、観じているんだよ。
マナミ 深い意識で、共通の意識を、認めているの?
マサシ そうだよ、感じないけど、観じてはいるのさ。
マナミ いつも、全体と繋がり、自分の役を決めるの?
マサシ うん、感じられないだろうけど、そうなのさ。
マナミ う~ん、繋がっているなんて、信じられない。
マサシ だろうね、無理に感じる、必要は無いってさ。
マナミ 今の、それ、全体の意識に、何か聞いたの?
マサシ いやいや、無理に観じる、必要も無いってさ。
マナミ ……………………
CASE 正 の先に 奇
サトミ 主に演じるもの、正って、どういうものかな?
メグミ 正とは、影に支えられ、認められ易いものよ。
サトミ 助け演じるもの、奇って、どういうものかな?
メグミ 奇とは、陰から支えて、認められ難いものよ。
サトミ 奇が影で支えるから、正が光に照らされるの?
メグミ そうよ、影からだから、因果が解り難いけど、
奇が影で支えないと、正に光は当たらないよ。
サトミ 正が昂ぶって、奇を滅ぼしたら、どうなるの?
メグミ 正の中から、新たな奇が生まれて、支えるよ。
サトミ 奇が荒ぶって、正を亡ぼしたら、どうなるの?
メグミ 奇の中から、新しい正が産まれて、押えるよ。
サトミ それだと、得する人は、ずっと、得をするし、
損する人は、ずっと、損して、不公平だよね。
メグミ 持ち回りだから、最終的に、公平になるのよ。
サトミ どうして、そんなことが、言い切れるのかな?
メグミ 宇宙全体が、深い処で、繋がっているからよ。
共通の台本を、交代して、役を演じているの。
サトミ そんな奇妙な話、あたしは、認められないわ。
メグミ うふっ、今回、あなたは、そういう役だから。
サトミ ……………………
CASE 8 : 2 の 法 則
サトシ 8:2の法則って、どういう法則なのかな?
マナミ 働き者のアリが八割、怠け者のアリが二割。
絶対に、この比は崩れない、という法則なの。
サトシ 怠け者のアリを、すべて除くと、どうなるの?
マナミ 残った働き者から、二割だけ、怠け者になる。
サトシ 働き者のアリを、すべて除くと、どうなるの?
マナミ 残った怠け者から、八割まで、働き者になる。
サトシ これは面白いね、どうして、こうなるのかな?
マナミ アリに限らず、社会的な生活を営む生き物は、
他者と比較して、自分の位置を決めているの。
サトシ 全体が怠けてたら、自分は働こうとするけど、
全体が働いていたら、自分は怠けてしまうの?
マナミ うん、どんな役も、必要だから、存在するの。
サトシ このまま、僕は、怠けたって、許されるんだ。
マナミ 社会は、そのように、見とめるべきだけど、
彼方から、そのように、見とめたらだめなの。
サトシ どうしてさ、引き籠っても、別に良いでしょ。
マナミ 引き篭もると、あなただけで、十割になるの。
二割として、見られるのは、社会に出てから。
サトシ ……………………
CASE 奇のない正 と 正のない奇
サトミ 正と奇、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 主役を演じる、正って、どういうものかな?
メグミ 正とは、中心を司る、見とめ易い役のことよ。
サトミ 脇役を演じる、奇って、どういうものかな?
メグミ 奇とは、周辺を司る、見とめ難い役のことよ。
サトミ 正を重んじて、奇を軽んじると、どうなるの?
メグミ 奇のない正なんて、単なる端役に過ぎないよ。
サトミ じゃ、中心が輝くのは、周辺が陰るからなの?
メグミ そうよ、周辺を認めない、中心は端になるよ。
サトミ 奇を重んじて、正を軽んじると、どうなるの?
メグミ 正のない奇なんて、単なる雑役に過ぎないよ。
サトミ じゃ、周辺が耀くのは、中心が輝くからなの?
メグミ そうよ、中心を認めない、周辺は雑になるよ。
サトミ 正だけでは、締りが無くて、芯が外れるし、
奇ばかりでは、纏りが無くて、心に届かない。
メグミ そうよ、正と奇、そのどちらも、必要なのよ。
サトミ じゃ、奇を負いながら、正を追っていくの?
メグミ うふっ、正を究めながら、奇を極めていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 自生 の裏に 寄生
マナミ 自ら労する、自生って、どういうものなの?
マサシ 自生とは、自ら損をして、得が生じることさ。
マナミ 他を労する、寄生って、どういうものなの?
マサシ 寄生とは、自ら損をせず、得を招じることさ。
マナミ 自生の者が、寄生を認めないと、どうなるの?
マサシ 損を負い、得を授かる、これを繰り返すのさ。
マナミ 自生の者が、寄生を見とめると、どうなるの?
マサシ 得を与え、徳を授かる、これに辿り着くのさ。
マナミ つまり、食べる為に働き、働く為に食べる。
この労苦の繰り返しを、抜け出す鍵になるの?
マサシ うん、寄生を受け容れる、自生の生き方は、
総てを、歓びに感じる、歓喜の園の入口だよ。
マナミ 寄生者は、邪魔者でなく、使者に他ならない?
う~ん、それは流石に、買い被り過ぎと思う。
マサシ うん、甘やかしても、彼らの為には為らない。
しかし、自らの為には、寄生を認めるべきさ。
マナミ ダメ、働かざる者は、喰うべからずで良いの。
寄生を、認めたら、誰もが寄生してしまうの。
マサシ 皆が、そう考えれば、自ずから、そうなるよ。
マナミ ……………………
CASE 自生 の先に 寄生
サトミ 自ら生きる、自生って、どういうものかな?
メグミ 自生とは、自ら生み、他から奪わないものよ。
サトミ 社会が、自生に偏ると、どうなっていくの?
メグミ 世の中が、実に充たされ、力が強くなるのよ。
サトミ じゃあ、強くなり過ぎると、どうなるのかな?
メグミ 外に、力が溢れ出すから、衝突してしまうよ。
サトミ だから、力が余らないよう、力を奪うのかな?
メグミ 世の中に、寄生する者が、自ずと増えるのよ。
サトミ 寄り生きる、寄生って、どういうものかな?
メグミ 寄生とは、他に頼り、自らは生まないものよ。
サトミ 社会が、寄生に偏ると、どうなっていくの?
メグミ 世の中が、虚に満たされ、力が弱くなるのよ。
サトミ じゃあ、弱くなり過ぎると、どうなるのかな?
メグミ 内に、力が吸い取られて、自壊してしまうよ。
サトミ じゃあ、力が尽きないよう、力を生むのかな?
メグミ 世の中に、自生する者が、自ずと殖えるのよ。
サトミ 世の中って、無意識に、釣り合いを取るのね。
不自然に、偏っても、自然に直っていくんだ。
メグミ 社会も、自然に寄生ばかり、出来ないからね。
サトミ ……………………!!
CASE 小 国 寡 民
サトシ 同時に、自生と寄生は、生まれているのかな?
アツシ ああ、自生が生まれると、寄生が埋れている。
サトシ う~ん、それが本当ならさ、不公平だよね。
誰だって、自生する人に、寄生する方が良い。
アツシ 確かに、そう考えるならば、不公平に見える。
でも、実際は、持ち回りだから、公平なんだ。
サトシ う~ん、長い目で見れば、誰もが等しいの?
でも、信じられない、僕は、寄生の方が良い。
アツシ そんな、輩が多ければ、小さい社会が良い。
サトシ じゃ、器が小さい人々が、大きな器を造ると?
アツシ 立場が、入れ代り難く、邪推で充たされる。
サトシ じゃ、器が小さい人々が、小さな器を作ると?
アツシ 立場が、入れ替り易く、経験が豊かになる。
サトシ じゃ、器が大きい人々が、相応の器を創ると?
アツシ どんな、役も受け容れ、叡智で満たされる。
サトシ じゃ、智と徳が具われば、公平と見抜けるの?
アツシ そうだ、巡り廻る役を、有り難く受け容れる。
サトシ いや、僕は信じない、寄生した方が楽だもん。
アツシ そうか、いつも君には、損な役を回して悪い。
サトシ ……………………
CASE 寄生なき自生 と 自生なき寄生
サトミ 自生と寄生、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 自らが働く、自生って、どういうものかな?
メグミ 自生とは、自らが労して、生を得ることだよ。
サトミ 周りに働く、寄生って、どういうものかな?
メグミ 寄生とは、自らは労せず、生を得ることだよ。
サトミ 自生を望み、寄生に臨まないと、どうなるの?
メグミ 寄生なき自生なんて、唯の労役に過ぎないよ。
サトミ じゃ、自ら生きるため、自ら働くだけなの?
メグミ そうよ、損して得しても、徳は積めてないの。
サトミ 寄生を望み、自生に臨まないと、どうなるの?
メグミ 自生なき寄生なんて、只の懲役に過ぎないよ。
サトミ じゃ、自ら生きるため、他に働くだけなの?
メグミ そうよ、損せず得しても、損を秘めているの。
サトミ 自生だけは、借りは無いが、巡りが続くし、
寄生ばかりは、借りを作って、縛りが続くの?
メグミ うん、自生と寄生、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、寄生を負い、自生を追っていくの?
メグミ そうなの、自生を超え、寄生を越えていくの。
サトミ ……………………!!