clear
clear
物語編

第二章 第四三話 物語編

第二章     長   と   幼
第四三話 道に従うもの と 道に背くもの

 

もしや、私の方が、彼の器を、量り切れてないのか。

 

ああ、見えて、彼には、道徳が根付いている。
即ち、それは、天を畏れるが故の、天の道であり、
同時に、それは、天を恐れぬが為の、人の徳である。

 

彼は、小人に対して寛容である、というのも、
得を与えないと、彼らは、徳を悟らない、からだ。
その一方、小人が苦しんでも、彼は彼らを援けない。

 

彼は、君子に対して厳酷である、というのも、
損を被らないと、彼らが、徳を培えない、からだ。
その一方、君子が窮するなら、彼は彼らから助ける。

 

一見して、彼は、人道に外れた者のようだが、
その実、彼ほど、真に、道徳を究めた者はいない。
彼は、誰もが研鑚をする、上流の世界を望んでいる。

 

彼が、民意を外しているように、見えるのは、
君の方が、無意識に、人道に背いているからだ。
民を甘やかしてしまって、民が育たなくなっている。

 

彼が、天意を受けているように、見えるには、
君の方が、意識的に、天道に従ってみることだ。
弱いものは滅ぼされるが、強いものは活かされると。

コメントを残す

入力エリアすべてが必須項目です。メールアドレスが公開されることはありません。