物語編
第二章 第四六話 物語編
第二章 小徳 と 大徳
第四六話 小さく容れる と 大きく容れる
〈君が、彼の前で、道について、説いたように、
君の前にも、彼に向かって、道を説いた者は居た。
しかし、その道の広さで、彼に勝る者は居なかった。〉
〈道家は無為を重んじ、法家は作為を重んじる。
太上の老君を真似て、無為の自然を気取る道家は、
内心、作為を捻じ込む、法家の怪物を見下していた。〉
〈そんな彼らの心を、見すかし嘲うかのように、
彼は、彼らの隠れ住む、怠惰や妥協を打ち壊した。
追い詰めるか、引き寄せるか、いずれも心の闇まで。〉
〈斯くして、無味乾燥とした、道理が滅びる中、
虚無に呑み尽くされていた、道理が蘇えり始めた。
天の気運は滞りなく流れ、天下が活気に満ち溢れた。〉
〈即ち、無に落ちて行く道を、封鎖したことで、
より多くの者が、未知の道を求めるようになった。
甘えてばかりだった者が、死の中に活を求め始めた。〉
〈無為を作為せよ、この、道を踏み外した法が、
その実、真の意味で、道を辿らせることになった。
彼は、一言も道を説くことなく、無言で道を解いた。〉