第二章 第四六話 対話編
CASE 小徳 の裏に 大徳
マナミ 小さな解く、小徳って、どういうものなの?
マサシ 小徳とは、我が解かれる、徳に臨むことだよ。
マナミ 小さな徳は、我が解かれて、他に説かないの?
マサシ そうだよ、他を解かないから、我も縛られる。
マナミ つまり、解くから良くまで、短いものなの?
マサシ うん、酔いが早くなって、徳が溶けていくよ。
マナミ 大きな解く、大徳って、どういうものなの?
マサシ 大徳とは、皆が解かれる、徳に臨むことだよ。
マナミ 大きな徳は、皆に説くから、他も解かれるの?
マサシ そうだよ、他が解かれるから、我も解かれる。
マナミ つまり、解くから良くまで、長いものなの?
マサシ うん、酔いが遅くなって、徳を磨いていくよ。
マナミ つまり、酔うまでが早いと、欲に変っていき、
逆に、酔うまでが遅いと、徳を重ねていくの?
マサシ そうさ、閉しやすいものは、酩いやすいし、
その一方、鎖しにくいものは、酊いにくいよ。
マナミ この世界で、最も解き難く、最も酔い難い、
この世で、最も大きな徳って、どういうもの?
マサシ まさに、その界とは何かを、受け容れる徳さ。
マナミ ……………………!!
CASE 小徳 の先に 大徳
サトミ 小さく臨む、小徳って、どういうものかな?
メグミ 小徳とは、器が小さくて、飽きやすいものよ。
サトミ 一元の世に、飽いて来ると、どうなるのかな?
メグミ 徳を溶き、良くを持って、善と悪に分けるよ。
サトミ 二元の界に、飽いて来ると、どうなるのかな?
メグミ 欲を解き、解くを以って、善と悪を合せるよ。
サトミ じゃあ、器が小さいと、我だけで閉じるの?
メグミ うん、俗に関らないから、高徳に似ているよ。
サトミ 大きく臨む、大徳って、どういうものかな?
メグミ 大徳とは、器が大きくて、空きやすいものよ。
サトミ 一元の世に、空いて来ると、どうなるのかな?
メグミ 他に説く、良くを持って、自と他に分けるよ。
サトミ 二元の界に、空いて来ると、どうなるのかな?
メグミ 他を解き、解くを以って、自と他を合せるよ。
サトミ じゃあ、器が大きいと、他までも含めるの?
メグミ うん、世俗に関わるから、寡徳に似ているよ。
サトミ そっか、我が解けたら、他も解いていくのね。
空に籠り、殻に篭ったら、徳が広がらないか。
メグミ これも、自ら解けたら、他に説いてあげてね。
サトミ ……………………!!
CASE 小徳 という 大徳
サトシ 自らを解く、小徳って、どういうものかな?
アツシ 小徳とは、我が解かれて、他に説かない徳だ。
サトシ 他に説かず、我を閉ざすと、どうなるのかな?
アツシ 器を閉じると、外を容れ難く、中が汚れ難い。
サトシ 周りも解く、大徳って、どういうものかな?
アツシ 大徳とは、我が解かれて、他に説かれる徳だ。
サトシ 他に説いて、我を開けると、どうなるのかな?
アツシ 器を開けると、外を容れ易く、中が汚れ易い。
サトシ つまり、外を容れないと、内は汚れないけど、
いつまで、経っても、内と外は溶け合わない。
アツシ そうだ、本当の意味で、解くことが出来ない。
サトシ その一方、外を容れると、内は汚れるけど、
その汚れが、落ちれば、内と外の壁が溶ける。
アツシ そうだな、本当の意味で、解くことが出来る。
サトシ 深いな、こんな深い教えは、初めて聞いたよ。
長いこと、疑問だったことが、漸く解かった。
アツシ そうか、自ら解けたものは、他に説くんだな。
サトシ そうかな、説いても無駄だよ、否定されるよ。
アツシ なんだ、俺と君さえ、まだ、溶け合えてない。
サトシ ……………………
CASE 大徳なき小徳 と 小徳なき大徳
サトミ 小徳と大徳、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 空くに臨む、小徳って、どういうものかな?
メグミ 小徳とは、解くを持って、空くに臨むことよ。
サトミ 開くに臨む、大徳って、どういうものかな?
メグミ 大徳とは、解くを以って、開くに臨むことよ。
サトミ 小徳を望み、大徳に臨まないと、どうなるの?
メグミ 大徳なき小徳なんて、唯の鎖すに過ぎないよ。
サトミ じゃ、空くを望んでも、開くに臨まないの?
メグミ そうよ、開くが無いから、器が閉じたままよ。
サトミ 大徳を望み、小徳に臨まないと、どうなるの?
メグミ 小徳なき大徳なんて、只の汚すに過ぎないよ。
サトミ じゃ、開くを望んでも、空くに臨まないの?
メグミ そうよ、空くが無いから、器が穢れたままよ。
サトミ 小徳だけは、開かないから、鎖すだけだし、
大徳ばかりは、空かないから、汚すだけなの?
メグミ うん、小徳と大徳、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、大徳を追い、小徳を負っていくの?
メグミ そうなの、小徳に臨み、大徳を望んでいくの。
サトミ ……………………!!
CASE 空く の裏に 開く
マナミ 器を空ける、空くって、どういうものなの?
マサシ 空くとは、器を空けると、徳になることだよ。
マナミ 自我の器を、空にするとき、徳に変わるの?
マサシ 限界を決めて、中を空けると、徳に換わるよ。
マナミ 境を極めて、外から汚れを、入れないのね?
マサシ そうだよ、そのままでは、徳は閉じてしまう。
マナミ 器を開ける、開くって、どういうものなの?
マサシ 開くとは、器を開けると、徳になることだよ。
マナミ 自我の器が、開かれるとき、徳が広がるの?
マサシ 限界を壊して、外に開けると、徳が拡がるよ。
マナミ 境が滅して、外から汚れが、入ってくるよね?
マサシ そうだよ、そのままでは、欲に塗れてしまう。
マナミ 小さい器は、空け易いけど、開け難くなり、
大いなる器は、開け易いけど、空け難くなる?
マサシ 確かに、他と関わらないと、空け易いけど、
境が生じ、器が閉じてしまい、徳を積めない。
マナミ 反対に、他と係っていると、開け易いけど、
欲が生じ、器が汚れてしまい、徳を積めない。
マサシ そうさ、こんな風に上手く、関わると良いね。
マナミ ……………………!!
CASE 空く の先に 開く
サトミ 内を空ける、空くって、どういうものかな?
メグミ 空くとは、限界を決めて、良くを解くことよ。
サトミ 自分という、条件に定めて、良くを超えるの?
メグミ そうだよ、自我が有する、良くを越えるのよ。
サトミ 外に開ける、開くって、どういうものかな?
メグミ 開くとは、限界を広げて、良くを解くことよ。
サトミ 自分という、条件に限らず、良くを超えるの?
メグミ そうだよ、他我が有する、良くを越えるのよ。
サトミ う~ん、他我の分まで、どうして超えるの?
自我だけ、欲を越えれば、良いんじゃないの?
メグミ ううん、必ず、良くなると、飽くことになる。
この闇が、明けたら、開けて、徳を積むのよ。
サトミ う~ん、他者のことは、放って置けば良いよ。
無用心に、開けていたら、汚い欲を招じるよ。
メグミ 確かに、器が小さいと、巻き込まれるかもね。
でも、逃げていたら、ずっと、小さいままよ。
サトミ 良いよ、放って置こう、関わるだけ損になる。
それより、自らの内だけ、清浄に保つべきよ。
メグミ うふっ、そこまで言うなら、もう開けないよ。
サトミ ……………………
CASE 飽く と 空く と 開く
サトシ 欲が満ちる、飽くって、どういうものかな?
マサシ 飽くとは、良くが満ちて、器が埋まることさ。
サトシ 欲が消える、空くって、どういうものかな?
マサシ 空くとは、良くが消えて、器を空かすことさ。
サトシ 欲が溢れる、開くとは、どういうものかな?
マサシ 開くとは、良くが溢れて、器を超えることさ。
サトシ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
マサシ そもそも、この世界には、善も悪も無かった。
サトシ つまり、空の器である、空しか無かったの?
マサシ うん、その空が汚されて、善と悪に分かれた。
サトシ じゃあ、良くを持って、善を究めていくと?
マサシ 最終的に、飽くを以って、悪に極めてしまう。
サトシ 欲は飽きる、この鍵が空くと、どうなるの?
マサシ 連鎖が空くと、自然な姿である、空が蘇える。
サトシ 欲は空ける、この扉が開くと、どうなるの?
マサシ 出口が開くと、本来の姿である、空が広がる。
サトシ 自分で、良くは飽く、この連鎖に飽きたら、
他の人に、良くは飽く、この出口を開くのか。
マサシ そうさ、君も飽いたなら、空に還ると良いよ。
サトシ ……………………!!
CASE 開くなき空く と 空くなき開く
サトミ 空くと開く、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 自らが明く、空くって、どういうものかな?
メグミ 空くとは、良くを超えて、徳を積むことだよ。
サトミ 周りが明く、開くって、どういうものかな?
メグミ 開くとは、限りを越えて、徳を積むことだよ。
サトミ 空くを望み、開くに臨まないと、どうなるの?
メグミ 開くなき空くなんて、単なる扼に過ぎないよ。
サトミ じゃ、空いているのに、開いてないのかな?
メグミ そうよ、空けているけど、絞められているの。
サトミ 開くを望み、空くに臨まないと、どうなるの?
メグミ 空くなき開くなんて、単なる悪に過ぎないよ。
サトミ じゃ、開いているのに、空いてないのかな?
メグミ そうよ、開けているけど、害なわれているの。
サトミ 空くだけでは、我に限られ、徳を積めないし、
開くばかりでは、他に釣られ、徳を積めない?
メグミ うん、空くと開く、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、開くを望み、空くに臨んでいくの?
メグミ そうなの、空くを究め、開くを極めていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 解く の裏に 説く
マナミ 自ら解する、解くって、どういうものなの?
マサシ 解くとは、欲を超えると、徳になることだよ。
マナミ 良くと飽く、罠を越えると、徳に変わるの?
マサシ 条件を決めて、因果を解くと、徳に換わるよ。
マナミ 境を極めて、他による縁を、隠していくのね。
マサシ そうだよ、そのままでは、徳は閉じてしまう。
マナミ 他を介する、説くって、どういうものなの?
マサシ 説くとは、我を超えると、徳になることだよ。
マナミ 自我と他我、境を越えると、徳が広がるの?
マサシ 条件を壊して、因果を説くと、徳が拡がるよ。
マナミ 境が滅して、他による縁が、現れてくるよね。
マサシ そうだよ、そのままでは、縁に塗れてしまう。
マナミ 小さい我は、解き易いけど、説き難くなり、
大いなる我は、説き易いけど、解き難くなる?
マサシ 確かに、他と関わらないと、解き易いけど、
境が生じ、器が閉じてしまい、徳を積めない。
マナミ 反対に、他と係っていると、説き易いけど、
縁が生じ、器が汚れてしまい、徳を積めない。
マサシ そうさ、こんな風に上手く、説けると良いね。
マナミ ……………………!!
CASE 解く の先に 説く
サトミ 内に解ける、解くって、どういうものかな?
メグミ 解くとは、条件を決めて、因果を解すことよ。
サトミ 自分という、条件に定めて、因果を解すの?
メグミ そうだよ、自我を支える、条件を考えるのよ。
サトミ 外に説ける、説くって、どういうものかな?
メグミ 説くとは、条件を広げて、因果を解すことよ。
サトミ 自分という、条件を越えて、因果を解すの?
メグミ そうだよ、他我を支える、条件を考えるのよ。
サトミ う~ん、他我の分まで、どうして考えるの?
自我だけ、因果を解けば、良いんじゃないの?
メグミ ううん、必ず、良くなると、飽くことになる。
この罠が、解けたら、説いて、徳を積むのよ。
サトミ う~ん、他人のことは、放って置けば良いよ。
不用意に、説いていたら、変な縁を招じるよ。
メグミ 確かに、器が小さいと、巻き込まれるかもね。
でも、逃げていたら、ずっと、小さいままよ。
サトミ 良いよ、放って置こう、関わるだけ損になる。
それより、自らの内だけ、正常に保つべきよ。
メグミ うふっ、そこまで言うなら、もう説かないよ。
サトミ ……………………
CASE 溶く と 解く と 説く
サトシ 徳が消える、溶くって、どういうものかな?
マサシ 溶くとは、解くが溶けて、欲が生じることさ。
サトシ 徳が現れる、解くって、どういうものかな?
マサシ 解くとは、良くが解けて、徳が生じることさ。
サトシ 徳を重ねる、説くって、どういうものかな?
マサシ 説くとは、解くを説いて、徳を招じることさ。
サトシ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
マサシ そもそも、この世界には、善も悪も無かった。
サトシ つまり、空の器である、徳しか無かったの?
マサシ うん、その徳が溶かれて、善と悪が現われた。
サトシ じゃあ、良くを持って、善を究めていくと?
マサシ 最終的に、飽くを以って、悪に極めてしまう。
サトシ 欲は飽きる、この業を解くと、どうなるの?
マサシ 仕掛を解くと、自然な姿である、徳が蘇える。
サトシ 欲は解ける、この法を説くと、どうなるの?
マサシ 仕組を説くと、本来の姿である、徳が広がる。
サトシ 自分で、良くは飽く、この仕掛が解けたら、
他の人に、解くを説く、この仕組を説くのか。
マサシ そうさ、君も解けたなら、他に説くと良いよ。
サトシ ……………………!!
CASE 説くなき解く と 解くなき説く
サトミ 解くと説く、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 自らを解く、解くって、どういうものかな?
メグミ 解くとは、良くを解いて、徳を積むことだよ。
サトミ 周りを解く、説くって、どういうものかな?
メグミ 説くとは、解くを説いて、徳を積むことだよ。
サトミ 解くを望み、説くに臨まないと、どうなるの?
メグミ 説くなき解くなんて、単なる得に過ぎないよ。
サトミ じゃ、解いているのに、説いてないのかな?
メグミ そうよ、他を解かないで、独り得するだけよ。
サトミ 説くを望み、解くに臨まないと、どうなるの?
メグミ 解くなき説くなんて、単なる涜に過ぎないよ。
サトミ じゃ、説いているのに、解いてないのかな?
メグミ そうよ、誰も解けないで、皆を涜するだけよ。
サトミ 解くだけでは、他が得せず、徳を積めないし、
説くばかりでは、皆を涜して、徳を積めない?
メグミ うん、解くと説く、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、説くを望み、解くに臨んでいくの?
メグミ そうなの、解くを究め、説くを極めていくの。
サトミ ……………………!!