第二章 第四八話 対話編
CASE 天才 の裏に 秀才
マナミ 先天の才である、天才は、どういうものなの?
マサシ 天才とは、徳を以って、得に変える才なのさ。
マナミ 労せず、才に恵まれると、徳が損われるの?
マサシ うん、先に得を享けた分は、後で損を受ける。
マナミ 天才が、後で損を受けるのは、どうしてなの?
マサシ 天才ほど、道を省いたから、道を説けないよ。
道を通して、伝わらない才は、価値が下がる。
マナミ 後天の才である、秀才は、どういうものなの?
マサシ 秀才とは、欲を持って、得に変える才なのさ。
マナミ 労して、才が磨かれると、欲が培われるの?
マサシ うん、先に損を受けた分は、後で得を受ける。
マナミ 秀才が、後で得を享けるのは、どうしてなの?
マサシ 秀才ほど、道を辿ったから、道を説けるのさ。
道を通して、伝えられる才は、価値が上がる。
マナミ 天の才は、道が絶えるから、才が研かれず、
後天の才は、道が伝えるから、才が磨かれる?
マサシ そうだよ、弛まず努めることが、大事なのさ。
マナミ 確かに、あなたも天才だけど、努力の天才ね。
マサシ 道を説く、才を活かそうと、努力しているよ。
マナミ ……………………!!
CASE 天才 の先に 秀才
サトミ 天で具える、天才って、どういうものかな?
メグミ 天才とは、道を修めずに、授かる才のことよ。
サトミ 例えば、先天の才って、どういうものがある?
メグミ 超常の力、容色の美しさ、出生の良さなどね。
サトミ つまり、内から具えず、外から供えるもの?
メグミ 天才とは、天から借りた、仮の才に過ぎない。
サトミ 地で備える、秀才って、どういうものかな?
メグミ 秀才とは、道を修めると、授かる才のことよ。
サトミ 例えば、後天の才って、どういうものがある?
メグミ 職人の技、精神の豊かさ、人格の高さなどね。
サトミ つまり、外から供えず、内から具えるもの?
メグミ 秀才とは、借りを返した、真の才と言えるよ。
サトミ 借りた、仮の才ならば、返さないとならない。
その間に、真の才にまで、変えるしかないね。
メグミ そうよ、慢心を抱くと、どんどん失われるよ。
サトミ うん、磨かない才なんて、衰えていくだけね。
メグミ さらに、元々有るから、有り難さが解らない。
サトミ 尚更、慢心するよね、これは気を付けないと。
メグミ それが、解かるのって、真の才と言えるのよ。
サトミ ……………………!!
CASE 秀才 という 天才
サトシ 君は、恵まれているね、何でも出来るから。
アツシ 君こそ、恵まれているな、何も出来ないから。
サトシ ひどいな、そんなこと、どうして言うんだよ。
アツシ いつ、得られたのか、分からないものなど、
いつに、損われるのか、解からないものだな。
サトシ 君の場合、初めから出来るけど、どうなるの?
アツシ 出来るようになる、道が分かってないから、
誰にも教えられない、失ったら取り戻せない。
サトシ 僕の場合、初めは出来ないけど、どうなるの?
アツシ 出来るようになる、道を解かっているから、
誰にも教えられるし、失っても取り戻せるな。
サトシ そもそも、解いた道を説く、必要なんてある?
アツシ 道を説かなければ、才能自体の価値が下がる。
サトシ 人のために、活かしたり、教えたりしてこそ、
才能というものは、価値が有るものなのかな?
アツシ 当然だ、仕えない才に、何の価値が有るんだ?
サトシ そう言われたら、そうだね、何の価値も無い。
アツシ ほら、君の程よい鈍さは、一種の才能なんだ。
俺には、当然なものも、君には納得が出来る。
サトシ ……………………!!
CASE 秀才なき天才 と 天才なき秀才
サトミ 天才と秀才、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 才を使える、天才って、どういうものかな?
メグミ 天才とは、道を修めずに、表れる才のことよ。
サトミ 才に仕える、秀才って、どういうものかな?
メグミ 秀才とは、道を修めると、現れる才のことよ。
サトミ 天才を望み、秀才に臨まないと、どうなるの?
メグミ 秀才なき天才なんて、単なる債に過ぎないよ。
サトミ じゃ、才を使えるけど、道を修めないのかな?
メグミ そうよ、債に為るだけで、誰も続けないのよ。
サトミ 秀才を望み、天才に臨まないと、どうなるの?
メグミ 天才なき秀才なんて、単なる載に過ぎないよ。
サトミ じゃ、道を修めるけど、才を使わないのかな?
メグミ そうよ、載に成るだけで、何も降せないのよ。
サトミ 天才だけでは、使い続けて、誰も修めないし、
秀才ばかりでは、修め続けて、何も使えない?
メグミ うん、天才と秀才、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、秀才を研き、天才を磨いていくの?
メグミ そうなの、天才を究め、秀才を極めていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 大 器 晩 成
サトシ 僕は、何も出来ない、詰まらない人間です。
マコト 確かに、あなたは、底辺の人生を歩んでいる。
何でも出来て、人気のある彼とは、大違いね。
サトシ はい、彼は、僕とは違って、才能の塊です。
マコト でもね、わたしは、あなたが、大いなる使命、
大きな命を、宿していることを、知っている。
サトシ この僕が、使命を負っている、訳がないです。
マコト 当然でしょ、簡単に気づく、代物じゃないわ。
気づいた途端、あなたの器は、研けなくなる。
サトシ 気づいたら、器が磨けないのは、何故ですか?
マコト 気づいた瞬間、ストレスが、抜けていくから。
ストレスを、貯めに貯め、ギリギリまで粘る。
サトシ 苦しみを、受け容れてこそ、器を広げられる?
マコト 普通は、耐え切れなくなって、逃げ出すか、
外に尋ね、答え合わせして、苦を紛らわすか。
サトシ じゃあ、出来るだけ長く、耐えた方が良いと。
マコト 死の直前、使命を悟れたら、大いなる器ね。
サトシ すると、こんな僕自身も、そんな運命ですか?
マコト 教えない、答え合せなんて、絶対にさせない。
サトシ ……………………