物語編
第二章 第五四話 物語編
第二章 修学 と 修道
第五四話 日に日に益す と 日に日に損す
〈先刻、君にも、鐘が鳴ったのが聞えたはずだ。
あの鐘が、計三回、すなわち、後二回鳴ったとき、
君の目の前に、乱世の奸雄、法徳が現われるだろう。〉
〈そのときまでに、君は、彼を越える要がある。
少々、手荒くなるが、その方法は無いことは無い。
最速にして最難、君に、その秘法を聞く気は有るか。〉
しばらく考えた後に、私は、有りますと答えていた。
〈先の君と全く繋がらないが、それも君らしい。
聞いたからには、後には引けないが、構わないな。
聞く前と聞いた後では、道の感じ方が、全く異なる。〉
〈道を聞く前は、得をしている如く、感じるが、
道を聞いた後には、損をしている如く、感じよう。
損を被ろうと、道を進みうる、不退転の決意が要る。〉
〈利で誘われている限り、君は客人に過ぎない。
理に従っていない限り、私の友人に成れないのだ。
君に、総てを捨てて、全てを修める、決心が有るか。〉
「朝に道を聞ければ、夕に死んでも構いません。」
〈良いだろう、その言葉、胸に刻んでおくと良い。
その言葉が真実である限り、君は真実を見るだろう。〉