第二章 第五五話 対話編
CASE 若 の裏に 老
マナミ 経験が寡い、若いって、どういうものなの?
マサシ 若いとは、良い方を認め、悪い法を認めない。
何でも、楽観的に捉らえて、行えることだよ。
マナミ それなら、若いことって、良いことだけなの?
マサシ ううん、悪い法を見ないから、失敗し易いよ。
マナミ じゃ、若さを生かすならば、どうするべき?
マサシ 欲は有っても、徳が無いから、若い時には、
未知に挑戦して、結果を受け容れたら良いよ。
マナミ 経験が多い、老いって、どういうものなの?
マサシ 老いとは、悪い方を認め、良い法を認めない。
何でも、悲観的に捕らえて、行えないことさ。
マナミ それなら、老いることは、悪いことだけなの?
マサシ ううん、悪い方を認めるから、失敗し難いよ。
マナミ じゃ、老いを活かすならば、どうするべき?
マサシ 知は有っても、欲が無いから、老いが来たら、
過去を反省して、原因を突き詰めたら良いよ。
マナミ そういうことなら、私は、どうしたら良いの?
マサシ まだ、若いんだから、聞いてばかりいないで、
失敗を怖れることなく、未知に挑めば良いよ。
マナミ ……………………!!
CASE 若 の先に 老
サトミ 親が授ける、若さって、どういうものかな?
メグミ 若さとは、周りに依って、道を開くことだよ。
サトミ 若い時には、他に助けられ、道に進めるの?
メグミ うん、他に依存するから、一時的に過ぎない。
サトミ この間、若さに感けるほど、どうなるのかな?
メグミ 最終的に、借りを返さないと、いけなくなる。
サトミ 自ら与える、老いって、どういうものかな?
メグミ 老いとは、自らに拠って、道を閉すことだよ。
サトミ 老いた時は、自らが決めて、道を諦めるの?
メグミ うん、自ら決定するから、恣意的に過ぎない。
サトミ この時、老いに託けるほど、どうなるのかな?
メグミ 現実的に、衰えを纏わないと、いけなくなる。
サトミ つまり、甘えを止めないと、若さを誤まるし、
また、逃げを已めないと、老いが始まるのね。
メグミ そうよ、若さに頼らず、成長する方が良いし、
また、老いに依らず、挑戦する法が良いのよ。
サトミ そっか、若さや老いに、偏り過ぎた世の中は、
誰も、成熟を求めてない、幼稚な世界なのね。
メグミ うふっ、そんな世界に、感謝してこそ大人よ。
サトミ ……………………!!
CASE 若 という 老
サトミ 良くを望む、若さって、どういうものかな?
マナミ 若さとは、過ちを犯せる、欲を持つことなの。
サトミ 解くに臨む、老いって、どういうものかな?
マナミ 老いとは、過ちを許せる、徳を持つことなの。
サトミ 若いときに、自らが過ちを、犯した分だけ、
老いたときに、周りが犯した、過ちを許せる?
マナミ うん、そのためには、若者から老人の間に、
絶対に、大人に成って、おかないといけない。
サトミ それなら、成人するには、どうしたらいいの?
マナミ 犯した過ちを、過ちと認めて、悔い改めるの。
サトミ 幼い時には、甘えて許して、貰った過ちを、
しっかり、過ちと認めて、罪を悔い改めるの?
マナミ うん、過ちが解からないと、借りが分からず、
今まで、許してもらった、借りが返せないの。
サトミ 借りを返さずに、年だけ取ると、どうなるの?
マナミ 借りが解けず、負い始めると、老い始めるよ。
幼いままに、老いていくけれど、それでいい?
サトミ う~ん、まあ、何とかなるわ、大丈夫だって。
マナミ まだ、若いから、解けなくても、良いのかな。
サトミ ……………………
CASE 老 という 若
サトシ 未知に寄る、若いって、どういうものかな?
マサシ 若いとは、知らない道を、選べることなのさ。
サトシ 知が寡いと、解らない路を、択びやすいの?
マサシ 恐れを知らず、新しいことに、奮えやすいよ。
サトシ 違う道だけ、巡り続けると、どうなるのかな?
マサシ 有り難くなり、気が逸るから、若さが漲るよ。
サトシ 既知に頼る、老いって、どういうものかな?
マサシ 老いとは、知らない道を、選ばないことだよ。
サトシ 知が多いと、解らない路を、択びにくいの?
マサシ 怖れを知って、奇しいことに、震えやすいよ。
サトシ 同じ道だけ、廻り続けると、どうなるのかな?
マサシ 当り前になり、気が進まずに、老いて逝くよ。
サトシ そうすると、若さや老いは、気の持ち様なの?
マサシ そうさ、でも、年を重ねると、知が増えて、
なかなか、若い時の様には、気を保てないよ。
サトシ そうなると、生まれ変わって、全てを忘れて、
最初から、仕切り直すしか、道は無いのかな。
マサシ 畏れを知る、だからこそ、活かせる道がある。
若い魂に、悔い改めを説く、老練な役なのさ。
サトシ ……………………!!
CASE 若人 と 成人 と 老人
サトミ 甘えがある、若人って、どういうものかな?
アツシ 若人とは、援けてないが、助けられるものだ。
サトミ 若年は、借りを作って、成年になっていくの?
アツシ 成年とは、借りを返せる、年のことだからな。
サトミ 借りがある、成人って、どういうものかな?
アツシ 成人とは、助けられたら、援けていくものだ。
サトミ 成年は、借りを返して、壮年になっていくの?
アツシ 壮年とは、貸しを作れる、年のことだからな。
サトミ 貸しがある、老人って、どういうものかな?
アツシ 老人とは、援けていると、助けられるものだ。
サトミ 壮年は、貸しを作って、老年になっていくの?
アツシ 老年とは、貸しが返える、年のことだからな。
サトミ つまり、年齢に応じて、相応しい業があって、
年相応に、振舞わないと、借りを作るわけね。
アツシ いつまでも、若い振りをすると、負いを作る。
サトミ でも、あたしは、いつまでも、可愛く居たい。
アツシ 無理だ、年相応の、美しさを身に着けろよ。
サトミ やだやだ、あたしは、可愛いままで居たいの。
アツシ そんな姿が、可愛く見えるのは、今だけだぞ。
サトミ ……………………
CASE 老のない若 と 若のない老
サトミ 若さと老い、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 罪を侮どる、若さって、どういうものかな?
メグミ 若さとは、過ちを恐れず、寄って行くものよ。
サトミ 罪を悔いる、老いって、どういうものかな?
メグミ 老いとは、過ちを怖れて、離れて逝くものよ。
サトミ 若さを望み、老いに臨まないと、どうなるの?
メグミ 老いなき若さなんて、唯の若朽に過ぎないよ。
サトミ じゃ、過ちを犯しても、過ちを恐れないの?
メグミ そうよ、過ちを改めずに、過ちを重ねるのよ。
サトミ 老いを望み、若さに臨まないと、どうなるの?
メグミ 若さなき老いなんて、只の老朽に過ぎないよ。
サトミ じゃ、過ちを悔いても、過ちを改めないの?
メグミ そうよ、過ちを革めない、過ちを重ねるのよ。
サトミ 若さだけでは、罪を畏れず、道を改めない。
老いばかりでは、罪を怖れて、道を革めない。
メグミ うん、若さと老い、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、老いを究め、若さを極めていくの?
メグミ そうなの、若さを超え、老いを越えていくの。
サトミ ……………………!!