第二章 第五七話 対話編
CASE 姓 の裏に 名
マナミ 祖が銘じるもの、姓って、どういうものなの?
マサシ 姓とは、時に繰り越される、人の業のことさ。
マナミ 先代から、世の様相を見ると、何が見えるの?
マサシ 多彩な命が、埋まれているのが、見えるのさ。
マナミ 埋まれた命を、果たすように、姓を繋げるの?
マサシ そうさ、生が宿らなければ、命を果せないよ。
マナミ 親が銘じるもの、名って、どういうものなの?
マサシ 名とは、今に映し出される、人の業のことさ。
マナミ 現代から、世の様子を見ると、何が見えるの?
マサシ 多様な命が、生まれているのが、見えるのさ。
マナミ 生まれた命を、果たすように、名を与えるの?
マサシ そうさ、名を介さなければ、命を解せないよ。
マナミ 先祖が果し損ねた命が、子孫に伝わるけど、
それに、祖が姓を授けて、親が名を与えるの?
マサシ 生まれて、祖が遺した、姓を介していけば、
活きながら、親が残した、名を解していける。
マナミ 姓と名が、天の命を紡いでいるの、面白いね。
じゃあ、わたしの姓には、どんな命があるの?
マサシ いや、君の姓だからね、君が果すべきなのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 姓 の先に 名
サトミ 銘じるもの、姓名って、どういうものかな?
メグミ 姓名とは、人から人へと、言を交わすことよ。
サトミ つまり、言霊の中の言、ネームと呼ぶもの?
メグミ うん、姓名を付けないと、役目を招じないよ。
サトミ じゃあ、言のない霊なんて、幽霊に過ぎない?
メグミ うん、理が通らなければ、幻想に過ぎないよ。
サトミ 命じるもの、生命って、どういうものかな?
メグミ 生命とは、天から地へと、霊を下ろすことよ。
サトミ つまり、言霊の中の霊、ライフと呼ぶもの?
メグミ うん、生命が宿らないと、実感が生じないよ。
サトミ じゃあ、霊のない言なんて、因果に過ぎない?
メグミ うん、霊が宿らなければ、機械に過ぎないよ。
サトミ 神なる、言が無ければ、霊が迷っていくし、
分霊なる、霊が無ければ、言が虚しくなるの?
メグミ 天の指令が、降らなければ、霊が彷徨うし、
神から使命を、授からないと、言を果せない。
サトミ 姓名と生命、両方が揃って、言霊が幸ふのね。
あたしも、そういう命を、授かっているかな?
メグミ うふっ、悟りの美しさ、伝える役が見えるよ。
サトミ ……………………!!
CASE 名のない姓 と 姓のない名
サトミ 姓と名、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 命が継がれる、姓って、どういうものかな?
メグミ 姓とは、祖に授けられる、生の意味のことよ。
サトミ 命が告がれる、名って、どういうものかな?
メグミ 名とは、親に与えられる、生の意味のことよ。
サトミ 姓を重んじて、名を軽んじると、どうなるの?
メグミ 名のない姓なんて、単なる種姓に過ぎないよ。
サトミ じゃ、生を継いでも、命を告がないのかな?
メグミ そうよ、命を果たせず、姓を繋ぐだけになる。
サトミ 名を重んじて、姓を軽んじると、どうなるの?
メグミ 姓のない名なんて、単なる渾名に過ぎないよ。
サトミ じゃ、生を告げても、命を継がないのかな?
メグミ そうよ、命を果たせず、名が濁るだけになる。
サトミ 姓だけは、姓を守っても、命に拘るばかり。
名ばかりは、名を付けても、命が歪むばかり。
メグミ そうよ、姓と名、その両方が、必要になるの。
サトミ じゃ、名を介しながら、姓を解していくの?
メグミ うふっ、姓を究めながら、名を極めていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 親 の裏に 子
マナミ 型となるもの、親って、どういうものなの?
マサシ 親とは、子を介しながら、自ら育てるものさ。
マナミ 型が、形から学べるのって、どうしてなの?
マサシ 形の中に、自らの過去が、見えて来るからさ。
マナミ 子を通して、客観的に、過去を省みられるの?
マサシ そうだよ、我が子だから、直視せざる得ない。
マナミ 形となるもの、子って、どういうものなの?
マサシ 子とは、親を解しながら、自ら育てるものさ。
マナミ 形が、型から学べるのって、どうしてなの?
マサシ 型の中に、自らの未来が、見えて来るからさ。
マナミ 親を通して、潜在的な、未来が認められるの?
マサシ そうだよ、我が親だから、直視せざる得ない。
マナミ 親は、子の姿を透して、自らを顧ているし、
子らは、親の姿を通して、自らを見ているの?
マサシ そうだよ、親は子の鏡、子は親の鏡なのさ。
血が通う鏡だから、良く映るし、逃げ難いよ。
マナミ 良く映る鏡から、逃げ出すと、どうなるの?
マサシ これ以上に、我を映す鏡は、他には無いから、
赤の他人、他に移す我に、揉まれるだけだよ。
マナミ ……………………
CASE 親 の先に 子
サトミ 子に望むもの、親って、どういうものかな?
メグミ 親とは、子を鏡と認めて、我を育てるものよ。
サトミ 子の姿を見て、我が姿であると、認めるの?
メグミ そうよ、我が過去と、子の過ちを、許すのよ。
サトミ 親が、我と認めず、子を怒ると、どうなるの?
メグミ 自ずと、認めるまで、子は過ちを反復するよ。
サトミ 親が、我と認めて、自ら省ると、どうなるの?
メグミ 自ずと、認めるから、子は過ちを反省するよ。
サトミ 親に望むもの、子って、どういうものかな?
メグミ 子とは、親を鏡と認めて、我を育てるものよ。
サトミ 親の姿を見て、我が姿であると、認めるの?
メグミ そうよ、我が未来と、親の過ちを、赦すのよ。
サトミ 子が、我と認めず、親を怨むと、どうなるの?
メグミ 自ずと、親になると、同じ過ちを反復するよ。
サトミ 子が、我と認めて、自ら省ると、どうなるの?
メグミ 自ずと、親になると、同じ過ちを克服するよ。
サトミ 親にしても、子にしても、自らの鏡なのね。
でも、せめて、親の方から、改めて欲しいよ。
メグミ 鏡だよ、自ずと、見る方から、革めて欲しい。
サトミ ……………………!!
CASE 親 という 子
サトシ 今でも、親が子を育てるの、どうしてかな?
必ずしも、肉親が育てる、必要は無いと思う。
マサシ つまり、学校の場ばかりか、家庭の場までも、
専門的に、社会が用意すべき、という事かな?
サトシ そうさ、文明が進歩すると、分化が進むんだ。
漏れなく、教育の分野も、専門的になるはず。
マサシ 確かに、合理性を求めれば、そうなるけど、
代え難い、最高の教育の場を、失うだけだよ。
サトシ う~ん、血縁の家庭の方が、遥かに良いわけ?
マサシ そうだよ、縁が近い故に、互いが鏡なのさ。
鏡を通して、自分の短所を、直視させられる。
サトシ 決して、逃げられない、血の縁というものは、
この世に、一つしかない、代え難いものなの?
マサシ そうさ、合理的だからって、血を捨てるのは、
甚だ、勿体ないことだと、君は認めるべきさ。
サトシ う~ん、その判断だってさ、合理的だよね。
マサシ まあ、そうだけど、君は、認められないかい?
サトシ やはり、血縁よりも、合理性の方が大事だよ。
マサシ ほら、血縁が無ければ、もう、何も言えない。
サトシ ……………………
CASE 子のない親 と 親のない子
サトミ 親と子、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 子から学べる、親って、どういうものかな?
メグミ 親とは、我が子を透して、過去を見るものよ。
サトミ 親から学べる、子って、どういうものかな?
メグミ 子とは、我が親を通して、未来を見るものよ。
サトミ 親を重んじて、子を軽んじると、どうなるの?
メグミ 子を侮る親なんて、子と同じ道を辿るだけよ。
サトミ じゃ、子を叱るだけ、子から学ばないのかな?
メグミ そうよ、親が学ぶまで、子は同じ事をするよ。
サトミ 子を重んじて、親を軽んじると、どうなるの?
メグミ 親を恨む子なんて、親と同じ道を辿るだけよ。
サトミ じゃ、親を怨むだけ、親から学ばないのかな?
メグミ そうよ、親に為るとき、子に同じ事をするよ。
サトミ 親だけは、子から学べず、子の儘になるし、
子ばかりは、親から学べず、親の侭になるの?
メグミ そうよ、親と子、その両方が、必要になるの。
サトミ じゃ、子を介しながら、親を解していくの?
メグミ うふっ、親を感じながら、子を観じていくの。
サトミ ……………………!!