物語編
第二章 第五九話 物語編
第二章 暗鬼 と 明鬼
第五九話 心の虚を見る と 真の実を見る
内に築き上げられた信頼が、音を立てて崩れていく。
「万が一と思ったが、貴様は奴からの廻し者か。
貴様の言っている事は、奴と全く同じではないか。
露骨に奴を持ち上げたり、思い当たる節が多々ある。」
〈落ち着け、彼より先に、君が躓いてどうする。
誓を思い出せ、私と君とは、同志ではなかったか。
君の使命を奪うだけなら、初めから私が奪っている。〉
「殺す前に、聞きたい事があった、だけだろう。
師の名を騙り、心を許した処で、全て聞き出して、
用が済めば殺す、貴様らなら、考えそうなことだな。」
〈止めろ、昔の君の姿を、今の私の姿に映すな。
君は、私を通して、己の心の闇を見ているだけだ。
君が彼にしたように、私が君にすると、思っている。〉
「かっ、今もって、口だけは、良く回るようだ。
だが無駄だ、貴様の言葉は、もう俺には届かない。
信じたものを、裏切られては、もう元には戻らない。」
〈いや、内に現れたものが、外に溢れただけだ。〉
「覆水盆に返らず、もう話すのは止めた方がいい。
言えば言うほど、俺は、貴様を信じなくなるだろう。」