物語編
第三章 第一話 物語編
第三章 色 と 空
第一話 実感あるもの と 実体なきもの
この世の物とは思えぬ、心の叫びで目が覚めた。
額から脂汗が流れて、胸から鼓動が伝わって来る。
呼吸の激しさが乗じて、一気に現実に引き戻された。
夢と言われるものだが、決して夢ではなかった。
むしろ、こちらの世界が、夢に見えて来るような、
核心に迫る現実であり、それこそ真実の世界だった。
なるほど、夢を見ているとき、彼は他人だった。
しかし、夢から覚めてしまえば、彼は自分だった。
彼の言う通り、自と他の境なんて、幻想でしかない。
敵を殺めたように見えて、師を殺めてしまった。
敵が師を殺すように見えて、私が師を殺していた。
真実は、自らの中にしかない、そうとしか思えない。
“師を殺めたのは、他の誰でもない、私自身だった。”
確かに、言い訳したければ、幾らでも出来るが、
縦しんば、何も知らない人は、言い含められても、
何故に、色界を覗いてしまった、自分を騙せようか。
自ら騙せる訳もなく、他に擦り付ける道もない。
誰の手に頼ることなく、自ら乗り越えるしかない。
あらゆる現実は、自らが認めるまで、繰り返される。