第三章 第一話 対話編
CASE 色 の裏に 空
マナミ ねぇ、ルーパ、色って、どういうものなの?
マサシ 色とは、二元の世界には、実感が有ることさ。
マナミ 陰と陽を、介していくほど、実感が表れるの?
マサシ そうさ、因と果が縺れるほど、色に塗れるよ。
マナミ じゃ、シューニャ、空は、どういうものなの?
マサシ 空とは、一元の世界に、実体が無いことだよ。
マナミ 陰と陽を、解していくほど、実感が消えるの?
マサシ そうさ、因と果が解けるほど、空を悟れるよ。
マナミ 本来、世界は、実体が無い、にもかかわらず、
陰と陽に拠って、実感が有るように見えるの?
マサシ そうさ、因果に酔って、実感が湧いてきて、
世界には、実体が有ると、思い込んでしまう。
マナミ 絡んだ、因果を解せば、実感が醒めていき、
世界には、実体が無いと、目が覚めるわけね。
マサシ そうさ、陰陽を介するほど、色に塗れていき、
逆に、陰陽を解するほど、空が蘇ってくるよ。
マナミ じゃあ、色が付く前と、色を落ちた後では、
空は空でも、同じものかな、異なるものかな?
マサシ まさしく、その違いこそ、色が為せる業だね。
マナミ ……………………!!
CASE 色 の先に 空
サトミ 二元に現れる、色って、どういうものかな?
メグミ 色とは、陰と陽が現れる、実感が有るものよ。
サトミ 実感が有る、色を見とめると、どうなるの?
メグミ 内なる型を捉えず、外なる形に囚われるのよ。
サトミ 一元に隠れる、空って、どういうものかな?
メグミ 空とは、陰と陽を越える、実体が無いものよ。
サトミ 実体が無い、空を見とめると、どうなるの?
メグミ 外なる形に捕われず、内なる型を捉えるのよ。
サトミ じゃあ、色即是空って、どういう意味なの?
メグミ 違う形の中には、同じ型が隠れていることよ。
サトミ じゃあ、空即是色って、どういう意味なの?
メグミ 同じ型の中から、違う形が生れてくることよ。
サトミ つまり、実体の無い、空っぽの型の中から、
実感の有る、色々な形が、生まれて来るの?
メグミ そうよ、実体が無い、空の器であるからこそ、
無限の実感を生む、可能性を秘めているのよ。
サトミ う~ん、そう言われても、実感が湧かないな。
メグミ うん、実体が無い、という、実感が湧くまで、
色々と、空を彩るのが、私達の役目だからね。
サトミ ……………………!!
CASE 色 という 空
サトシ 実感が有ること、色って、どういうものかな?
アツシ 色とは、陰陽が偏って、差が現れることだな。
サトシ どうして、差の有る色は、様々な色が有るの?
アツシ それは、陰と陽の偏り方が、色々あるからだ。
サトシ Aと非A、どちらかに偏ると、差が現れて、
色が生じるけど、その招じ方は、好きなだけ?
アツシ そうだな、偏れば偏るほど、好きな色になる。
サトシ 実体が無いこと、空って、どういうものかな?
アツシ 空とは、陰陽を均して、差が取れることだな。
サトシ どうして、差の無い空は、様々な空が無いの?
アツシ それは、陰と陽が並ぶ点は、色々ないからだ。
サトシ Aと非A、どちらも等しいと、差が取れて、
色を超えるけど、その越え方は、ひとつだけ?
アツシ そうだ、釣り合う一点のみ、透きな空になる。
サトシ なるほど、透明な境地は、ただ一つしかない。
いつか、そんな境地に、僕も辿り着きたいよ。
アツシ いや、そんな境地だから、この瞬間にもある。
サトシ たとえ、色が有っても、透けて見えるわけか。
アツシ 隙を作り、魔に捕われる、必要なんて無いぞ。
サトシ ……………………!!
CASE 空のない色 と 色のない空
サトミ 色と空、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 実感が肥える、色って、どういうものかな?
メグミ 色とは、陰陽を彩り、二元に映るものなのよ。
サトミ 実感を越える、空って、どういうものかな?
メグミ 空とは、陰陽を悟り、一元に写るものなのよ。
サトミ 色を重んじて、空を軽んじると、どうなるの?
メグミ 空のない色なんて、単なる原色に過ぎないよ。
サトミ じゃ、濃厚に為るから、刺激が強くなるの?
メグミ そうよ、経験は多いけど、境地は低くなるよ。
サトミ 空を重んじて、色を軽んじると、どうなるの?
メグミ 色のない空なんて、単なる無色に過ぎないよ。
サトミ じゃ、透明に為るから、刺激が弱くなるの?
メグミ そうよ、境地は高いけど、経験は寡くなるよ。
サトミ 色だけでは、味が濃すぎて、旨く遷らないし、
空ばかりでは、味が薄すぎて、旨く移らない?
メグミ そうよ、色と空、そのどちらも、必要なのよ。
サトミ じゃ、空を介しながら、色を解していくの?
メグミ うふっ、色を究めながら、空を極めていくの。
サトミ ……………………!!