物語編
第三章 第三話 物語編
第三章 無明 と 行蘊
第三話 実感を固める と 実感を重ねる
無明に覆われ、我が存在すると、思い込むから、
思いのまま、真実を切り取り、現実を作り上げる。
実感を積み重ねて、自我は、頑なに塗り固められる。
どれだけ、積み重ねても、我の世界に過ぎない。
取り入れた、内から見れば、美しく見えていても、
受け容れない、外から見れば、歪んで見えてしまう。
すなわち、自分だけ、絶対に正しいと思うこと。
それ自体が、罪であり、詰んでしまった証である。
欲が適えられ、慢を抱くことが、詰みに他ならない。
逆に言えば、自らの絶対善を、思い込むために、
どれだけ、他の善を捨てないと、いけないことか。
独り善がり、我が独りの善のため、悉く切り捨てる。
この先、慢心した私が、切り捨てるだろう善を、
師は、一身に寄せ集めて、我が手により屠られた。
師を殺めてなければ、何人、私は危めていたことか。
老師は、時間の流れを早めて、自ら犠牲になり、
私が、将来に積むであろう罪を、現在に済ませて、
且、最悪に詰むであろう罪を、最小に止めてくれた。