物語編
第三章 第四話 物語編
第三章 行 と 識
第四話 時間を重ねる と 空間を分ける
絶対善の、御旗を掲げて、他の善を滅し続ける。
それを、互いに遣り合えば、考えるだに恐ろしい。
師は、その身命を賭して、人々の為に演じてくれた。
祇園の中は、尊師を絶対と崇めて、慢に嵌まり、
精舎の外では、天帝を絶対と奉って、慢に陥った。
相容れない、相異なる善の陣営が、地上に現われた。
教団を導く老師は、敢えて世間を挑発していた。
俗に塗れる聖ならば、潰してしまった方が良いと、
世間の常識に合わせず、決して妥協などしなかった。
もし、本心を隠したまま、世間と合わせたなら、
教団は、摩り減ることなく、膨れ上がっただろう。
とはいえ、繁栄が長引くほど、破滅の日が酷くなる。
世間を導く法徳は、努めて強権を用いなかった。
社会通念を振り翳し、一方的に断罪することなく、
教団の思惑を知るため、自ら施設に入り込んでいた。
もし、立場を越えて、両者を行き来しなければ、
黙々と、教団と世間は、棲み分けられただろうが、
内だけで、閉鎖するほど、外との衝突が激しくなる。
立場こそ違え、老子の行いと、法徳の行ないは、
最低最悪な型を演じる、この点で無駄が無かった。
最短かつ最小の型を創り、人類に悟る機会を与えた。