物語編
第三章 第五話 物語編
第三章 名 と 色
第五話 意識を隔する と 意味を画する
善を究めようと、最善を極めず、最悪に窮まる。
欲に囚われて、絶対善を掲げると、絶対悪になる。
この欲の仕掛を、幸運にも私は、目の前で見られた。
善と善が、最善を懸けて戦うことが、実に最悪。
命を懸けて、師と彼が描き出した、この仕掛けを、
この場で、私が悟れないならば、画竜の点睛を欠く。
一方、最後の日に、末席に招かれた、この私が、
型を悟ることが出来るなら、型を悟った型となり、
この最悪を免れる法輪は、世界の隅々まで転がろう。
もし、この席に、早くから、私が招かれたなら、
教団の善か、世間の善か、何れかに染まっていた。
終末日に、訪れたからこそ、業を背負わずに済んだ。
それでも、私自身が、持ち越した、業によって、
慢心に陥り、迫害を受ける側に、偏ってしまった。
その結果、その過ちを改めるため、師の命を要した。
しかし、それさえも、許されていたことである。
私が、人類の型となり、過ちを繰り返しながらも、
人々と、智恵を磨くこと、それが使命に他ならない。