第三章 第九話 問答編
マサシ 生苦(ショウク)は、どういうものですか?
アキラ 生苦とは、四苦の中の、ひとつであり、
身を有して、生きて行く、苦しみである。
その業が重なるほど、その身が生きていき、
その業が解かれるほど、その身が活かされる。
マサシ 老苦(ロウク)とは、どういうものですか?
アキラ 老苦とは、四苦の中の、ひとつであり、
身を有して、老いて行く、苦しみである。
その業が重なるほど、その身が老いていき、
その業が解かれるほど、その身が活きてくる。
マサシ 病苦(ビョウク)は、どういうものですか?
アキラ 病苦とは、四苦の中の、ひとつであり、
身を有して、病んで行く、苦しみである。
その業が重なるほど、その身が病んでいき、
その業が解かれるほど、その身が活きてくる。
マサシ 死苦(シク)とは、どういうものですか?
アキラ 死苦とは、四苦の中の、ひとつであり、
身を有して、死んで行く、苦しみである。
その業が重なるほど、その身が朽ちていき、
その業が解かれるほど、その身が活きてくる。
アワノ 菩薩から見て、生とは、どういうものですか?
マコト およそ、菩薩は、狂気の芸術家であり、
授けられた生命を、未完の作品と捉えて、
日夜、磨き上げることに、集中しています。
それ以外、興味が無い点が、狂気と言えます。
アワノ 菩薩から見て、苦とは、どういうものですか?
マコト およそ、菩薩は、狂気の芸術家であり、
授けられた使命を、無二の傑作とすべく、
感謝で研き上げることに、邁進しています。
苦しみの美学を心得る点が、狂気と言えます。
アワノ 菩薩から見て、死とは、どういうものですか?
マコト およそ、菩薩は、狂気の芸術家であり、
授けられた天命を、最大限まで生かして、
作品の完成の日、即ち、死に臨んでいます。
美が過ぎ、未完を望む点が、狂気と言えます。