物語編
第三章 第十一話 物語編
第三章 苦 と 信
第十一話 楽しみを解く と 苦しみを解く
[目覚める筈の君に、老師から伝言を預かった。
老子は、この次は、世界の屋根に、生まれ変わる。
授かった命を、果たせたか否か、確かめに来なさい。]
そうか、この次は、聖なる地に降誕されるのか。
我が胸は高鳴ったが、直ぐ落ち着きを取り戻した。
如何に、仏陀を探し出せば良いか、全く解からない。
「菩薩の化身、師の生まれ変わりが、誰なのか。
如何にして、確かめたら良いのか、分かりますか。
老師から、何らかの手掛かりを、預っていませんか。」
[それが、簡単に判かるなら、試験に課すかね。
むしろ、仏に会う試験こそ、仏に至る試練であり、
あなたが、真に目覚めたとき、本物に出会えるはず。]
[たとえ、私が目の前に表れ、形跡を教えても、
それで、信じられた貴方は、私を信じているだけ。
あなたは、仏に会えても、我に頼って甘えるばかり。]
[たとえ、仏が眼の前に現れ、奇跡を示しても、
それで、認められた貴方は、証を認めているだけ。
あなたは、仏に逢えても、幻に見とれ溺れるばかり。]