第三章 第十二話 対話編
CASE 悦 の裏に 喜
マナミ パーモッジャ、悦って、どういうものなの?
マサシ 悦とは、我が表に招じる、身の歓びのことさ。
マナミ 我が外に、表れる歓びって、どういうもの?
マサシ いつか、苦が現れてくる、相対的な悦びだよ。
マナミ 我が身を、動かさなければ、苦が現れないの?
マサシ そうさ、体が動かないと、心も動じないのさ。
マナミ じゃ、ピーティ、喜は、どういうものなの?
マサシ 喜とは、我が奥に生じる、心の歓びのことさ。
マナミ 我が中に、現れる歓びって、どういうもの?
マサシ いつも、苦に囚われない、絶対的な喜びだよ。
マナミ 我が身が、動いたとしても、苦が現れないの?
マサシ そうさ、苦が生じようと、心が動じないのさ。
マナミ 体の歓びでも、感じているのは、心だから、
身の悦びよりも、心の喜びの方が、大事なの?
マサシ うん、心を介するにせよ、体を介するにせよ、
歓びを、修めることで、心が身を治めるのさ。
マナミ 逆に、歓びを修めて、身が心を治めていると、
次第に、心が体の様に、老い始めていくのね。
マサシ 最終的に、心が物の様に、何も感じなくなる。
マナミ ……………………!!
CASE 悦 の先に 喜
サトミ 外に表われる、悦って、どういうものかな?
メグミ 悦とは、身に招じる、壊れやすい歓びなのよ。
サトミ どうして、外の悦びは、崩れやすいのかな?
メグミ 外に近いと、条件に、左右されやすいからよ。
サトミ 外なる悦びは、心の中で、何を思っていても、
条件が遷っていくとき、実感も移っていくの?
メグミ そうよ、条件が変わると、悦びが消えるのよ。
サトミ 内に現われる、喜って、どういうものかな?
メグミ 喜とは、心に生じる、壊れにくい歓びなのよ。
サトミ どうして、内の喜びは、崩れにくいのかな?
メグミ 内に近いと、条件に、左右されにくいからよ。
サトミ 内なる喜びは、外の界で、何が起っていても、
原因が変わらなければ、実感が換わらないの?
メグミ そうよ、条件が遷っても、喜びは消えないよ。
サトミ じゃ、身の悦びを深め、心の喜びに至るほど、
相対的な歓びから、絶対的な歓びに変わるの?
メグミ うん、身体の感覚に、左右されなくなるのよ。
サトミ いつでも、歓喜に浸れるって、最高じゃない?
メグミ うふっ、そう見てしまうと、外に見ちゃうよ。
サトミ ……………………
CASE 喜のない悦 と 悦のない喜
サトミ 悦と喜、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 外に表われる、悦って、どういうものかな?
メグミ 悦とは、外の歓びであり、身の味わいなのよ。
サトミ 内に現われる、喜って、どういうものかな?
メグミ 喜とは、内の歓びであり、心の味わいなのよ。
サトミ 悦を重んじて、喜を軽んじると、どうなるの?
メグミ 喜のない悦なんて、唯の悦楽に過ぎないよ。
サトミ じゃ、外に歓ぶだけで、内は悲しんでいるの?
メグミ そうよ、内を見ないから、身が楽なだけだよ。
サトミ 喜を重んじて、悦を軽んじると、どうなるの?
メグミ 悦のない喜なんて、只の喜楽に過ぎないよ。
サトミ じゃ、内に歓ぶだけで、外は悲しんでいるの?
メグミ そうよ、外を見ないから、気が楽なだけだよ。
サトミ 悦だけは、内なる悲しみに、気づけないし、
喜ばかりは、外なる苦しみに、気づけないの?
メグミ そうよ、悦と喜、そのどちらも、必要なのよ。
サトミ じゃ、喜を究めながら、悦を極めていくの?
メグミ うふっ、悦を超えながら、喜を越えていくの。
サトミ ……………………!!
CASE 自灯 の裏に 法灯
マナミ 自らに依る、自灯って、どういうものなの?
マサシ 自灯とは、他に依らずに、己に拠ることだよ。
マナミ 己に拠らず、他に頼るほど、どうなるのかな?
マサシ 他に流されて、我が業が、見えなくなるのさ。
マナミ 他に頼らず、己に拠るほど、どうなるのかな?
マサシ 他に流されず、我が業が、見えるようになる。
マナミ 教えに拠る、法灯って、どういうものなの?
マサシ 法灯とは、我に依らずに、法に拠ることだよ。
マナミ 法に拠らず、我に拘るほど、どうなるのかな?
マサシ 業に流されて、繰り返しから、抜けられない。
マナミ 我に拘らず、法に拠るほど、どうなるのかな?
マサシ 業に流されず、繰り返しから、抜けられるよ。
マナミ 最終的に、我が業を越える、必要があるけど、
そのために、我が業を認める、必要があるの?
マサシ そうさ、業を認めるまで、自灯を重んじて、
そうして、業を見とめたら、法灯を重んじる。
マナミ そっか、でも、この教え、初めて聞いたの。
これって、他に依るのかな、法に拠るのかな?
マサシ それは、法に拠っている、己に依っているよ。
マナミ ……………………!!
CASE 自灯 の先に 法灯
サトミ 我を明らめる、自灯って、どういうものかな?
メグミ 自灯明とは、他に依らずに、我に拠ることよ。
サトミ 我を諦らめる、法灯って、どういうものかな?
メグミ 法灯明とは、我に依らずに、法に拠ることよ。
サトミ 我に依る、我に拠らない、どっちが正しいの?
メグミ 最初は、明らめるため、我に依るべきだし、
最終的に、諦らめるため、法に拠るべきだよ。
サトミ う~ん、良く解からないな、どういうこと?
メグミ あなたが、Aしたいのに、するなと言われた。
この時、Aをしないと、他に依っているのよ。
サトミ これでは、Aしないから、明らめられないね。
メグミ だから、Aすることで、我に拠っていくのよ。
そうして、現れた結果を、我が責任と認める。
サトミ たとえ、悪い結果が出ても、受け容れるのね。
メグミ うん、結果から悔い改め、法に依っていくの。
サトミ ここで、悔い改めなければ、過ちを繰り返す。
メグミ うん、我を明らめてから、我を諦らめるのよ。
サトミ この時、良い結果が出たら、諦らめないよね?
メグミ それはね、まだ、悪いと、明らめてないだけ。
サトミ ……………………
CASE 自灯 という 法灯
サトシ 己を島とする、自灯は、どういうものかな?
アツシ 自灯明とは、他に尋ねず、自ら考えることだ。
サトシ 法を島とする、法灯は、どういうものかな?
アツシ 法灯明とは、自ら考えず、法に尋ねることだ。
サトシ 考えるか、考えないか、どっちが正しいの?
アツシ ここで、考えるなと、俺が君に言ったとする。
君は、俺の事を信じて、俺の言う事に従うか?
サトシ いいよ、僕は君に順うよ、どうすれば良いの?
アツシ とはいえ、俺に従って、間違えたら、どうだ?
サトシ 当然だけど、君のことが、信じられなくなる。
アツシ まさに、このように、他に尋ねたとしても、
潜在的に、我を信じる、自分が存在している。
サトシ だから、間を省いて、初めから我に拠るのか。
アツシ そうして、我が責まで、総べてを変えていく。
すると、最終的には、必ず苦しむことになる。
サトシ そのとき、我を捨てて、法を尋ねるわけだね。
でもな、最終的には、必ず苦しむの本当かな?
アツシ まあ、俺を信じた、君は、そこで躓くだろう。
だから、自ら考えて、出発点に立つべきだな。
サトシ ……………………
CASE 法灯なき自灯 と 自灯なき法灯
サトミ 自灯と法灯、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 自らを灯す、自灯って、どういうものかな?
メグミ 自灯とは、我を明らめて、他を諦めることよ。
サトミ 教えを灯す、法灯って、どういうものかな?
メグミ 法灯とは、法を明らめて、我を諦めることよ。
サトミ 自灯を望み、法灯に臨まないと、どうなるの?
メグミ 法灯なき自灯なんて、唯の消灯に過ぎないよ。
サトミ じゃ、我を明らめても、我を諦らめないの?
メグミ そうよ、我に捕らわれて、我を信じるだけよ。
サトミ 法灯を望み、自灯に臨まないと、どうなるの?
メグミ 自灯なき法灯なんて、只の幻灯に過ぎないよ。
サトミ じゃ、法を明らめても、他を諦らめないの?
メグミ そうよ、他に囚らわれて、法を信じるだけよ。
サトミ 自灯だけは、我が闇となり、灯を消すだけ。
法灯ばかりは、法が他となり、幻を灯すだけ?
メグミ うん、自灯と法灯、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、法灯を望み、自灯に臨んでいくの?
メグミ そうなの、自灯を究め、法灯を極めていくの。
サトミ ……………………!!