clear
clear
物語編

第三章 第十三話 物語編

第三章    軽安   と   安楽
第十三話 煩悩が消える と 煩悩を越える

 

実は、彼が人目を忍んで、見舞いに来たと言い、
彼女は、差し入れを使って、乳粥を作ってくれた。
彼は、度々遣ってきては、私の経過を案じたらしい。

 

様々な想いが籠った粥は、五臓六腑に染み渡り、
動かしたくても動かせない、我が身命を蘇らせた。
暗い牢獄の一室だったが、何か懐かしい一時だった。

 

実に慌しい、時の流れに在って、この間だけは、
不思議と、邪魔が入らず、心行くまで話が弾んだ。
そして、心から満たされた時、彼からの迎えが来た。

 

有り難う、貴女と出会えて、本当に良かった。
私に取っては、僅かに許された、優しい時でした。
師と貴女の恩は、ここで噛み締め、置いて行きます。

 

御二人が、我々の人生に現われた、その結果、
我が罪は最小で済み、人類の罪も際限が生まれた。
貴重な犠牲も生じたが、彼らに人類として感謝する。

 

最後になります、貴女の名前を教えて下さい。
私の使命はね、混沌たる世の、出口を直すもの。
お別れです、どうか元気で、いつか会いましょう。

 

私だって、あんたと出会えて、楽しかったよ。
最後の最後に、面白い人生だった、良い役でした。
次に会う時には、あんたの娘として、厄介になるよ。

コメントを残す

入力エリアすべてが必須項目です。メールアドレスが公開されることはありません。