物語編
第三章 第十四話 物語編
第三章 業 と 徳
第十四話 縛り付ける事 と 受け容れる事
生まれ変わり、逃げる気が無いと、見て取ると、
彼に遣わされた兵士は、私に手枷を施すことなく、
その両脇を固めるだけで、閻魔が待つ法廷に導いた。
自ずと道を外れる者には、使者は獄卒だったが、
自ら道を進もうとする者に、使徒は守護者である。
見方次第で、因果の楔は、業にもなれば法にもなる。
『開廷、善悪を知らしめる、律法の鐘を打ち鳴らせ。』
三度目の鐘が響き渡り、眼の前の扉が開かれた。
欲界を圧縮した如き、視界の中央に彼が君臨する。
荘厳な法服を纏う彼は、威厳と自信を漂わせていた。
私が、私らしさ故に、罪を招き起こしたように、
法徳も、彼らしさ故に、業に巻き込まれるだろう。
隠し切れない彼らしさが、彼を縛り付けてやまない。
『君を殺そうと思えば、闇に葬ることも出来た。
しかし、敢えて、君を生かして、公に裁いている。
何故だか、解るか、責も負えない、名も無いものよ。』
「法を犯す者が許せない、王の性が為せる業と、
責を負わないで逃げ出した、我が罪の為せる業と、
その二つを合せた、天の使命、天の徳が認める業だ。」