第三章 第十四話 対話編
CASE 業 の裏に 徳
マナミ ねぇ、カルマ、業って、どういうものなの?
マサシ 業とは、縛り付けるもの、行為のことなのさ。
マナミ わたしは、悪い意味だって、思っていたけど。
マサシ 業には、善い意味もあり、悪い意味もあるよ。
マナミ じゃあ、グナ、徳って、どういうものなの?
マサシ 徳とは、受け容れるもの、性質のことなのさ。
マナミ わたしは、善い意味だって、想っていたけど。
マサシ 徳には、悪い意味もあり、善い意味もあるよ。
マナミ どうして、こういうことに、なったのかな?
マサシ 元より、この世の中には、善も悪も無いんだ。
ただ、受け容れる性質、空の器が在ったのさ。
マナミ そこに、欲を抱えた、自我が生まれて来て、
色々、積み重ねて、善と悪に選り分けたのね。
マサシ そうさ、欲に付き従がい、業を積み重ねて、
いつしか、戻ろうとしても、戻れなくなった。
マナミ そんな、人から見るから、元の世界は善に、
一方、今の世界は悪に、見えてしまうわけね。
マサシ そうさ、今にも、昔にも、見る人が見れば、
空なる器、在りのままだけ、広がっているよ。
マナミ ……………………!!
CASE 業 の先に 徳
サトミ 偏らせるもの、業って、どういうものかな?
メグミ 業とは、思いのまま、切り取れるものなのよ。
サトミ 偏らないもの、徳って、どういうものかな?
メグミ 徳とは、在りのまま、受け取れるものなのよ。
サトミ 幾らでも、業を積んで、偏り続けられるの?
メグミ ううん、器に入らないと、切り取れなくなる。
サトミ 業が詰み、器から溢れると、どうなるのかな?
メグミ 跳ね返って、受け容れるよう、迫って来るよ。
サトミ 諦らめず、受け取れないと、どうなるのかな?
メグミ 繰り返して、受け容れるまで、迫って来るよ。
サトミ 諦らめて、受け取れるなら、どうなるのかな?
メグミ その分だけ、業が消えて、空の器に還るのよ。
サトミ 器が大きいと、思いのまま、業を積めるけど、
積んだ分は、受け容れないと、詰んだままか。
メグミ 好きなものを、切り取って、偏らせたなら、
嫌いなものまで、受け取って、直すしかない。
サトミ そう考えると、器が大きいのは、考えものね。
取り返しが、付かないほどに、偏ってしまう。
メグミ そうだよ、分を弁えるのは、自分の為なのよ。
サトミ ……………………!!
CASE 業 という 徳
サトシ 色が塗られる、業って、どういうものかな?
アツシ 業とは、好き嫌いが有る、我が形のことだな。
サトシ 色が着かない、徳って、どういうものかな?
アツシ 徳とは、好き嫌いが無い、空の器のことだな。
サトシ それなら、Aを好きになると、どうなるの?
アツシ 業を積んで、非Aが嫌いになる、ことになる。
サトシ どんどん、Aを好きになると、どうなるの?
アツシ 業が重なり、器が詰まっていく、ことになる。
サトシ ますます、Aを好きになると、どうなるの?
アツシ 業が詰んで、器から溢れていく、ことになる。
サトシ それでも、非Aから逃げると、どうなるの?
アツシ 業が返って、非Aが迫り続ける、ことになる。
サトシ 諦めず、非Aを避け続けると、どうなるの?
アツシ 繰り返し、非Aに襲われ続ける、ことになる。
サトシ 諦めて、非Aを受け容れると、どうなるの?
アツシ 徳が生じて、非Aが好きになる、ことになる。
サトシ つまり、Aを好きになり、非Aも好きになる。
Aと非A、等しく認めると、元に戻るわけか。
アツシ Aの分だけ、以前よりも、空は広がっている。
サトシ ……………………!!
CASE 徳のない業 と 業のない徳
サトミ 業と徳、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 時が刻まれる、業って、どういうものかな?
メグミ 業とは、空を透して、色が移っていくものよ。
サトミ 空が現われる、徳って、どういうものかな?
メグミ 徳とは、色を通して、空が映っているものよ。
サトミ 業を重んじて、徳を軽んじると、どうなるの?
メグミ 徳のない業なんて、単なる罪業に過ぎないよ。
サトミ じゃ、時が刻まれても、空が現われないの?
メグミ そうよ、罪を重ねるだけ、業が解けないのよ。
サトミ 徳を重んじて、業を軽んじると、どうなるの?
メグミ 業のない徳なんて、単なる空虚に過ぎないよ。
サトミ じゃ、空が現われても、時が刻まれないの?
メグミ そうよ、空が広がるだけ、色が移らないのよ。
サトミ 業だけでは、透けなくなり、詰んでしまい、
徳ばかりでは、詰らなくなり、空いてしまう。
メグミ そうよ、業と徳、そのどちらも、必要なのよ。
サトミ じゃ、徳を追いながら、業を負っていくの?
メグミ うふっ、業を介しながら、徳を解していくの。
サトミ ……………………!!