物語編
第三章 第十五話 物語編
第三章 味著 と 過患
第十五話 煩悩の楽しみ と 煩悩の苦しみ
それを聞くと、玉座の方から、法徳は笑って言った。
『法で裁いているから、私が法を犯せない事と、
法を犯しているからこそ、君が法で裁かれる事を、
同列に扱うか、都合の良い、天命があったものだな。』
「王よ、残酷なことだが、私と王は良く似てる。
私が、法で裁かれることが、煩悩に過ぎなければ、
法王が、法に縛られることも、煩悩に過ぎないのだ。」
「私は、法を守らない、という、旨みを味わい、
それゆえ、法で裁かれる、という、患いを味わう。
これは、国の法の価値を破った、因果の応報だろう。」
「王は、法に従わせる、という、喜びを味わい、
それゆえ、法に縛られる、という、憂いを味わう。
これも、地の法の仕組を作った、自業の自得だろう。」
「すなわち、煩悩が生じると、苦と楽が生じる。
煩悩に捕われると、楽を求めて、総じて苦となり、
煩悩に囚われないと、苦を認めて、総じて楽となる。」
「あらゆる煩悩が消えた、我が心中は穏やかだ。
私が受け容れたら、今度は、汝が突き付けられる。
自らの業で、人を裁いた罪を、自ら負う事になろう。」