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物語編

第三章 第十五話 対話編

CASE 味著 の裏に 過患

 

マナミ アッサーダ、味著って、どういうものなの?
マサシ 味著とは、煩悩の楽しさ、良い面のことだよ。
マナミ アーディーナヴァ、過患は、どういうもの?
マサシ 過患とは、煩悩の苦しさ、悪い面のことだよ。
マナミ じゃあ、味著と過患のない、煩悩なんてない?
マサシ うん、いかなる煩悩にも、味著と過患がある。
マナミ う~ん、味著しかない、煩悩もあるはずなの。
マサシ 食べる楽しさの裏に、食べない苦しさがある。
    つまり、食の煩悩には、味著と過患があるよ。
マナミ 旨いものを、食べられるって、楽しむほど、
    美味いものを、食べられないと、苦しむのね。
マサシ 美しい喜びの裏には、美しくない憂いがある。
    つまり、色の煩悩には、味著と過患があるよ。
マナミ 美しいことを、優れていると、楽しむほど、
    醜いことを、劣っていると、苦しんでしまう。
マサシ この様に、全ての煩悩に、味著と過患がある。
マナミ う~ん、味著しかない、煩悩もあるはずなの。
    まだ、探し切れていない、私はそう見えるの。
マサシ この様に、味著だけを望み、煩悩に囚われる。
マナミ ……………………

 


 

CASE 味著 の先に 過患

 

サトミ 楽を味わう、味著って、どういうものかな?
メグミ 味著とは、煩悩を喜んで、夢を見ることだよ。
サトミ 苦を味わう、過患って、どういうものかな?
メグミ 過患とは、煩悩に苦しみ、目が覚めることよ。
サトミ 味著を知り、過患を知らないと、どうなるの?
メグミ 煩悩に対して、肯定的になり、捕われるのよ。
サトミ 過患を知り、味著を知らないと、どうなるの?
メグミ 煩悩に対して、否定的になり、囚われるのよ。
サトミ 味著を知り、過患まで知るとき、どうなるの?
メグミ 煩悩に対して、客観的になり、越えられるよ。
サトミ じゃ、味著を望んでいると、幻想に捕われて、
    さらに、過患に臨んでいくと、真実に覚める?
メグミ うん、味著と過患こそ、煩悩の表裏であると、
    認めない限りは、絶対に、夢から覚めないの。
サトミ 例えば、食べる喜びと、食べられない憂いは、
    同じ食から生じると、認めないと行けないの?
メグミ うん、別のものと考えると、抜け出せないよ。
サトミ う~ん、それとこれとは、違うと思うけどな。
メグミ うん、そう考えるから、煩悩に囚われるのよ。
サトミ ……………………

 


 

CASE 味著 と 出離 と 過患

 

サトシ 煩悩を味わう、味著は、どういうものかな?
アツシ 味著とは、煩悩に於いて、良くを得ることだ。
サトシ 煩悩を患らう、過患は、どういうものかな?
アツシ 過患とは、煩悩に於いて、飽くを得ることだ。
サトシ 煩悩を離れる、出離は、どういうものかな?
アツシ 出離とは、煩悩に於いて、解くを得ることだ。
サトシ う~ん、良く解らない、どういうことなの?
アツシ それなら、恋愛して、楽しい思いを抱いたら?
サトシ 恋愛は、良かったって、恋愛に囚われるよね。
アツシ それから、失恋して、苦しい想いを抱いたら?
サトシ 相手が、悪かったって、新しい恋を探すよね。
アツシ それだと、迷走して、恋愛の煩悩を解けない。
サトシ 恋愛が、悪かったって、恋愛から覚めるのか。
アツシ ああ、相手の所為にすると、煩悩は解けず、
    すべて、自分の所為にすると、煩悩を越える。
サトシ 我に拠ると、味著と過患が、直結するんだね。
アツシ そうだな、他に拠る限り、出離には臨めない。
サトシ 良く解ったけど、僕は未だ、恋愛をしたいよ。
アツシ 迷走している君に、何を話しても、無駄だな。
サトシ ……………………

 


 

CASE 過患なき味著 と 味著なき過患

 

サトミ 味著と過患、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 煩悩の良さ、味著って、どういうものかな?
メグミ 味著とは、煩悩の楽しみ、良い面のことだよ。
サトミ 煩悩の悪さ、過患って、どういうものかな?
メグミ 過患とは、煩悩の苦しみ、悪い面のことだよ。
サトミ 味著を望み、過患に臨まないと、どうなるの?
メグミ 過患なき味著なんて、唯の自虐に過ぎないよ。
サトミ じゃ、煩悩を楽しんで、煩悩に捕われるの?
メグミ そうよ、煩悩が解けずに、煩悩に憂うだけよ。
サトミ 過患を望み、味著に臨まないと、どうなるの?
メグミ 味著なき過患なんて、只の嗜虐に過ぎないよ。
サトミ じゃ、煩悩に苦しんで、煩悩に囚われるの?
メグミ そうよ、煩悩が解けずに、煩悩に愁うだけよ。
サトミ 味著だけは、楽を愉しんで、煩うだけだし、
    過患ばかりは、苦を楽しんで、悩むだけなの?
メグミ うん、味著と過患、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、過患を負い、味著を追っていくの?
メグミ そうなの、味著を超え、過患を越えていくの。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 苦苦 と 行苦 と 壊苦

 

サトシ 因の苦しみ、苦苦って、どういうものかな?
アツシ 苦苦とは、楽が生れると、苦も産れることだ。
サトシ つまり、良くを望むと、飽くに臨むのかな?
アツシ 飽く事を、良く見ること、創造による苦だな。
サトシ 縁の苦しみ、行苦って、どういうものかな?
アツシ 行苦とは、楽を求めても、楽を得ないことだ。
サトシ つまり、良くを望んで、良くに臨めないの?
アツシ 飽く事に、飽き難いこと、維持による苦だな。
サトシ 果の苦しみ、壊苦って、どういうものかな?
アツシ 壊苦とは、楽が在っても、楽が壊れることだ。
サトシ つまり、良くに臨んで、良くが続かないの?
アツシ 良い事に、飽き易いこと、破壊による苦だな。
サトシ 原因にせよ、条件にしても、結果にしても、
    すべてが、苦しみへと、繋がっていくわけか。
アツシ そうだ、偶然ではなくて、必然的にそうなる。
サトシ もう、こんな世界なら、どう生きたら良いの?
アツシ 簡単だ、すべての元凶は、良くと気づいたか。
サトシ うん、良くを望むから、飽くに臨んでしまう。
アツシ そうだ、そこまで明らめたら、諦めるだけだ。
サトシ ……………………!!

 


 

CASE 煩い という 悩み

 

メグミ あなたの誕生日、贈り物は、何が良いかな?
    わたしが選ぶ、あなたが択ぶ、どっちが良い?
サトミ わ~い、あたしが、本当に、選んで良いの?
メグミ うん、ここから、好きなもの、択んで良いよ。
サトミ あ~ん、こんなに、沢山あると、迷っちゃう。
    ねえ、どうしようか、何を選べば良いと思う?
メグミ うふっ、好きなものを、択んでも良いのよ。
サトミ うん、でもね、せっかく、好きに選べるのよ。
    良くないものを、選びたくないと、思わない?
メグミ だからって、わたしに、択んで欲しいのかな?
サトミ う~ん、確かに、自分で、選びたいんだけど、
    あなたは、何を選ぶのかを、聞いておきたい。
メグミ うふっ、そんなこと言っちゃって、面白いの。
サトミ もう、どうしてよ、あたし、真剣なんだから。
メグミ だって、どっちなのかが、解らないんだもん。
    選べるの、喜んでいるのか、悩んでいるのか。
サトミ あっ、本当だわ、あたしって、どっちなの?
メグミ うふっ、もう、あなたって、面白過ぎるよ。
    でも、何でも望めるって、苦しいだけなのね。
サトミ ……………………

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