物語編
第三章 第十七話 物語編
第三章 正道 と 邪道
第十七話 苦悩を越える と 苦悩が増える
核心を突いたのだろう、彼の顔から、笑みが消える。
『亡き師の霊が、取り憑いた、とでも言うのか。
笑止だ、師に似て、舌先だけは、良く回るようだ。
少しは見込んで居たものが、単なる見込み違いかな。』
「見抜けて無いだけで、見込みは正しそうだぞ。
賢い王よ、どうして、半端に諦めようとするのか。
愚かな王よ、なにゆえ、完全に明らめようとしない。」
『ここに、実体がないから、傲慢になれるのか。
すでに、己が諦めたから、周りまで諦めさせるか。
呆れた者よ、己が責任の無さに、責任を持つが良い。』
「王よ、師に代って、法を授けようというのだ。
師には求められたのに、私からは求められないか。
それとも何か、師を殺めた手前、諦めざる得ないか。」
『かっ、小人、ここに至って、独善に嵌まるか。』
「それは、異なことを、王の望みを適えるだけだ。
それとも何か、王の法こそ、独善に陥っていたのか。」
「実に、こうして、欲を究めると、独善となる。
法は、自らが殺めた、法と矛盾して、業に変わる。
例外なき合理ほど、例外なく矛盾する、これが理だ。」