物語編
第三章 第十八話 物語編
第三章 善業 と 悪業
第十八話 善が善で返る と 悪が悪で返る
抉り出されたものは、決して美しいもの、ではない。
「私には、王の心の闇が、手に取る様に見える。
法に徹したい一心で、合理を重ねてみたところが、
まさか、その合理ゆえ、法を撤することになるとは。」
「賢明なる王よ、汝が、乱れた世を治めるため、
厳しい法を布いたことは、何も咎める処ではない。
王は、民に善かれと思って、厳しく法を強いた筈だ。」
「しかし、器から漏れて、流した血が多過ぎた。
確かに、血を流した分だけ、地は固まっただろう。
だが、寄せ集まり流れ出せば、いずれ氾濫し始める。」
「法を破る、輩を捕える為に、法を積み重ねる。
このまま、漏れては繕うを、永遠に繰り返すのか。
たとえ、其の積もりでも、耐え切れず内より崩れる。」
「何となれば、真の敵は、自らの内に居るから。
他に布いた法が、己を強いる業となり、心を縛る。
人の闇を厳しく見れば、己の闇も等しく見てしまう。」
「何となれば、後の姿とは、今の姿に映るから。
先に現れた因が、後に顕れる果となり、罪を洗う。
今の自らを許せないなら、後も自ずと許せなくなる。」