物語編
第三章 第十九話 物語編
第三章 善因 と 善果
第十九話 善と思い込む と 善と想い返す
『甘えるな、小僧、再び、乱世に戻すつもりか。
浮ついた、貴様の物言いが、徒に亡者を蘇らせる。
私が何を背負って、ここまで来たか、知っているか。』
『己が重ねた罪は、久しく、己の心の内にあり、
その数は万を越えて、絶えず、我が心を苛ませる。
そうだ、私は、逃げもしないし、逃げられもしない。』
『少しでも、肩代りさせれば、死を選ぶだろう。
貴様のように、口先だけの者は、昔から多かった。
軽く試そうなら、恨み言を吐いて、死を望んだ程だ。』
『過酷に死ぬ法より、苛酷に生きる方が難しい。
私と貴様では、背負った物に、天地の開きがある。
簡単に諦らめた、貴様如きには、容易に解かるまい。』
『これが、最後の勧告だ、我が国の法に従うか。
従うならば、善の法を弁える、善人として報いる。
順わないなら、我が法を危める、悪人として酬いる。』
『私とて、人を活かすことに、異論はないのだ。
本心を言うなら、才のある者を、殺したくはない。
しかし、それゆえ、口だけの者を、生かしたくない。』