物語編
第三章 第二一話 物語編
第三章 善 と 徳
第二一話 徳が溶かれる と 善が解かれる
欲界全土を震え慄かせる、怒声が法廷を切り裂いた。
『その首を出せい、その口と共に、断ってやる。』
「たとえ、断っても、絶たれるのは、汝の法だぞ。
我が首を以って、法が切り捨てた、業が噴き出すぞ。」
「王が、ここまで、法を積み重ねて来れたのは、
紛いなりにも、王が、善を突き詰めて来たからだ。
世の為に布いて、己の為に強いたことは、あるまい。」
「だからこそ、ここまで、業を重ねて来られた。
善の裏に悪を隠し、思い通りに、世を治めている。
実際に、気の流れは、王を型とし、地を巡っている。」
「だからとて、こうして、汝が業に振り回され、
自ら布いた法を、自らの手で、破り捨てるならば、
周りに向けていた、裁きの剣は、自らに向けられる。」
「もとより、善でもなければ、悪でもないのに、
こうして、善の名の下に、悪が抑え込まれるのは、
一度として、王自身が、法を犯した事がないからだ。」
「王よ、汝が善の切り札、汝が法を犯せるのか。
その瞬間、積み上げた法は、罪を挙げる業となる。
汝が罪を以って、善が隠し通した、悪が噴き出すぞ。」