第三章 第十八話 対話編
CASE 善業 の裏に 悪業
マナミ 善いカルマ、善業って、どういうものなの?
マサシ 善業とは、先に苦しむと、後で楽しいことさ。
マナミ 悪いカルマ、悪業って、どういうものなの?
マサシ 悪業とは、先に楽しむと、後で苦しいことさ。
マナミ 絶対に、片方を味わい、もう片方も味わうの?
マサシ そうだよ、最終的に、苦と楽を等しく味わう。
マナミ 総じて零なら、どうして、善業の方が善いの?
マサシ 意識的に楽を望んで、無意識に苦に臨んだら?
マナミ どうして、こんなに苦しいのって、思いそう。
マサシ 意識的に苦を望んで、無意識に楽に臨んだら?
マナミ どうして、こんなに楽しいのって、想いそう。
マサシ そうさ、善悪なんて、主観的なもの、なのさ。
マナミ じゃ、悪業を重ねると、苦を感じ易いだけで、
反対に、善業を重ねると、楽を感じ易いだけ?
マサシ うん、それ以上でも、それ以下でもないのさ。
マナミ そっか、善と悪は、感じ方の違いに過ぎない。
これまで、決定的で、重要な差だと思ってた。
マサシ そうさ、業が落ちた時は、そういうものだよ。
無意識に、重く見ていたものは、軽く見える。
マナミ ……………………!!
CASE 善業 の先に 悪業
サトミ 善く報いる、善業って、どういうものかな?
メグミ 善業とは、善を報いると、善が酬われる事よ。
サトミ 悪く酬いる、悪業って、どういうものかな?
メグミ 悪業とは、悪を酬いると、悪が報われる事よ。
サトミ じゃあ、そもそも、業って、どういうもの?
メグミ 必ず、報いたことが、酬われるというものよ。
サトミ じゃあ、そもそも、善悪の区別なんてなくて、
ただ、そのまま、為したことが返るだけなの?
メグミ そうよ、善と思えば、返って善いと思うし、
その一方、悪と想えば、還って悪いと想うよ。
サトミ 元々、自然には、色なんて、着いてないのに、
自我が、色を付けるから、善悪が現れるのね。
メグミ うん、好き嫌いを言うから、業が積み重なり、
自分が、思うようにしか、想えなくなるのよ。
サトミ じゃ、好き嫌いを諦めれば、業が崩れ落ちて、
自然を、見とめるがまま、認められるわけね。
メグミ さてさて、あなたは、どっちを選びたいかな?
サトミ 大丈夫、あたしは、どちらも受け容れるから。
メグミ うふ、引っ掛からないね、業が落ちているよ。
サトミ ……………………!!
CASE 善業 という 悪業
サトシ 善を重ねる、善業って、どういうものかな?
アツシ 善業とは、先に悪く、後に善い業のことだな。
サトシ 悪を重ねる、悪業って、どういうものかな?
アツシ 悪業とは、先に善く、後に悪い業のことだな。
サトシ う~ん、同じ事が、起きているだけなのに、
どうして、先と後で、感じ方が変わるのかな。
アツシ 業とは、囚われることで、積み重なるものだ。
無意識に、積み重なり、条件が変るからだな。
サトシ 例えば、僕は、ラーメンが、好きなんだけど、
ラーメンは、いくら食べても、好きだと思う。
アツシ 君は、百万杯、食べても、同じ事が言えるか?
サトシ 酷いな、言っていることが、極端すぎるよね。
アツシ いや、業を積み重ねれば、自然に移り変わる。
サトシ たとえ、不自然に見えても、自然に現れるの?
アツシ ああ、器に収まる限りは、積み重ねられるが、
最後は、器から溢れ出して、感じ方が変わる。
サトシ 最終的に、善と思うほど、悪と想ってしまう。
う~ん、信じられない、そんなはずがないよ。
アツシ 最終的に、思い知るまで、積み重ねてくれよ。
サトシ ……………………
CASE 悪業 という 善業
サトシ 善を重ねる、善業って、どういうものかな?
アツシ 善業とは、我に悪く、他に善い業のことだな。
サトシ 悪を重ねる、悪業って、どういうものかな?
アツシ 悪業とは、我に善く、他に悪い業のことだな。
サトシ う~ん、同じ事が、起きているだけなのに、
どうして、自と他で、感じ方が変わるのかな。
アツシ 業とは、囚われることで、我に重なるものだ。
自と他を、選り分けて、差異を作るからだな。
サトシ 例えば、僕は、ラーメンが、好きなんだけど、
ラーメンは、誰が食べたって、好きだと思う。
アツシ 他の人に、食べられても、同じ事が言えるか?
サトシ じゃあ、人が食べたら、僕は食べられないの?
アツシ ああ、自と他、どちらかしか、食べられない。
それでも、誰が食べても、善いと思えるのか?
サトシ う~ん、自分が食べられないと、想えないな。
アツシ これこそ、業が為せる技、我に重なる業だな。
サトシ 業を積んで、我に偏るほど、特別になるけど、
業が返り、我に返るほど、平等になるわけか。
アツシ 全ては、持ち回りだったと、思い知るわけだ。
サトシ ……………………!!
CASE 悪業なき善業 と 善業なき悪業
サトミ 善業と悪業、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 善と見なす、善業って、どういうものかな?
メグミ 善業とは、善いと思うと、善いと想うことよ。
サトミ 悪と見なす、悪業って、どういうものかな?
メグミ 悪業とは、悪いと思うと、悪いと想うことよ。
サトミ 善業を望み、悪業に臨まないと、どうなるの?
メグミ 悪業なき善業なんて、唯の劣善に過ぎないよ。
サトミ じゃ、善と見るばかり、悪と見ないのかな?
メグミ そうよ、裏の悪を認めず、碌な善に成らない。
サトミ 悪業を望み、善業に臨まないと、どうなるの?
メグミ 善業なき悪業なんて、只の劣悪に過ぎないよ。
サトミ じゃ、悪と見るばかり、善と見ないのかな?
メグミ そうよ、裏の善を認めず、碌な悪に為らない。
サトミ 善業だけは、裏に隠される、悪に怯えるし、
悪業ばかりは、裏に匿される、善に脅えるの?
メグミ うん、善業と悪業、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、悪業を負い、善業を追っていくの?
メグミ そうなの、善業を介し、悪業を解していくの。
サトミ ……………………!!
CASE 善 と 業 と 悪
サトシ 欲に縛られる、業って、どういうものかな?
マサシ 業とは、我に捕らわれて、欲を重ねることさ。
サトシ 善に縛られる、善業は、どういうものかな?
マサシ 善業とは、欲に囚われて、善を重ねることさ。
サトシ 悪に縛られる、悪業は、どういうものかな?
マサシ 悪業とは、欲に囚われて、悪を重ねることさ。
サトシ つまり、我が無いなら、業を重ねられないの?
マサシ うん、我が有るから、善悪を究められるのさ。
サトシ じゃあ、善悪を重ねると、どうなるのかな?
マサシ 我が器に、入る限りで、善や悪を明らめるよ。
サトシ 我が器から、溢れ出すと、どうなるのかな?
マサシ 少しずつ、業が落され、善や悪を諦めるのさ。
サトシ 完膚なきまで、業を落とすと、どうなるの?
マサシ その途上で、我が善と悪が、引っ繰り返るよ。
サトシ 善と悪が、引っ繰り返らない、落ち方ならば、
時が経って、器が空いたら、同じ業を積むの?
マサシ そうだよ、一時的に空いても、飽いてないよ。
サトシ そっか、引っ繰り返るって、どんな感じかな?
マサシ 我が消えるから、そっか、の延長にはないよ。
サトシ ……………………