第三章 第十九話 対話編
CASE 善因 の裏に 善果
マナミ 善なる原因、善因って、どういうものなの?
マサシ 善因とは、善いことだと、先に思うことだよ。
マナミ 善なる結果、善果って、どういうものなの?
マサシ 善果とは、善いことだと、後で想うことだよ。
マナミ つまり、先に善と思ったら、後も善と想うの?
マサシ そうだよ、自らが決めて、善と思ったから、
それを、覆さない限り、善と想うことになる。
マナミ 善いと思って、他に為すとき、どうなるの?
マサシ 同じことを、他に為されて、善いと想うのさ。
マナミ なるほど、自ら決めれば、自ら覆さないのね。
マサシ そうさ、自分の作用は、原因として返るのさ。
マナミ それなら、善いと思って、自らが為しても、
相手は、悪いと想ったとき、どうなるのかな?
マサシ 初めこそ、心より善いと、思えたとしても、
後になると、心から善いと、想えなくなるよ。
マナミ なるほど、自ら決めても、他に覆されるのね。
マサシ そうさ、相手の作用は、条件として返るのさ。
マナミ うん、聴いていたら、そんな気がしてきたの。
マサシ ほらね、原因は条件に、引き摺られるものさ。
マナミ ……………………!!
CASE 善因 の先に 善果
サトミ どうして、善因を積むと、善果が返るのかな?
メグミ 絶対に、積んだものは、摘まないといけない。
サトミ じゃ、どんなときに、善因を積むことになる?
メグミ 善いと、捉えるときに、善業を積んでいるよ。
サトミ じゃ、どんなときに、善因を摘むことになる?
メグミ 善いと、捕えるときに、善業を摘んでいるよ。
サトミ なら、善いと思えば、もう、返って来ないの?
メグミ そうよ、先に苦しんで、善を積んだ分だけ、
後で楽しみ、善を摘んで、業が消えて行くの。
サトミ それなら、摘まないことも、有り得るのかな?
メグミ 善いと、果を捕えないと、業を摘まないのよ。
サトミ 傍目には、善いことが、返って来ていても、
本人が、捕らえなければ、摘まないままなの?
メグミ うん、善いと思うまで、善いことが続くのよ。
サトミ じゃあ、善いことが続き、楽しんでいても、
そのうち、摘んでいくから、楽しめなくなる?
メグミ 楽でも良い、苦でも良い、空に立ち返るのよ。
サトミ 楽が尽き、苦に振れるのか、空に触れるのか?
メグミ ほんの一瞬、楽の苦の狭間に、空が見えるよ。
サトミ ……………………!!
CASE 善因 という 善果
サトシ 善いと思う、善因って、どういうものかな?
アツシ 善因とは、自然を解して、善に分けることだ。
サトシ 善いと想う、善果って、どういうものかな?
アツシ 善果とは、自我を介して、善を合せることだ。
サトシ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
アツシ 君が、相手に善いことを、報いたい時には、
その分、自分は悪いことを、受ける要がある。
サトシ うん、自分が損するだけ、相手は得するよね。
アツシ いずれ、自分に同じことが、酬われる時には、
その前に、善いと思っただけ、善いと想える。
サトシ ここで、善いと想わないと、どうなるのかな?
アツシ 何度でも、同じ事ばかり、繰り返すだろうな。
サトシ 繰り返して、同じだけ想うと、どうなるの?
アツシ 最終的に、業が落ち切って、空に戻って行く。
サトシ つまり、自ら損を受けて、得を与えた分は、
同じだけ、得を受けるまで、繰り返すんだね。
アツシ 善悪を、全く気にしなければ、徳に変わるが。
サトシ 直接的に、徳に換える道も、存在するんだね。
アツシ しかし、気にするまいと、気にするものだな。
サトシ ……………………
CASE 善因 と 善縁 と 善果
サトシ 善なる原因、善因って、どういうものかな?
マナミ 善因とは、善と見とめる、因となるものなの。
サトシ 善なる条件、善縁って、どういうものかな?
マナミ 善縁とは、善と見とめる、縁となるものなの。
サトシ 善なる結果、善果って、どういうものかな?
マナミ 善果とは、善と見とめる、果となるものなの。
サトシ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
マナミ あなたが、Aすることは、善いと認める中で、
自分が、Aすることは、善因を積んでいるの。
サトシ うん、善因を積むと、善果が返りやすくなる。
マナミ 他の人が、Aすることは、善いと認める中で、
自分が、Aすることは、善縁を作っているの。
サトシ うん、善縁を作ると、善因を積みやすくなる。
マナミ 他の人が、Aすることは、悪いと認める中で、
自分が、Aすることは、悪縁を作っているの。
サトシ うん、悪縁を作ると、善因を積みにくくなる。
マナミ 確かに、善とは何かは、自分が決めている。
サトシ でも、最善が何かは、他者と極めていくのか。
マナミ だから、あなたも、しっかり考えて欲しいの。
サトシ ……………………!!
CASE 善果なき善因 と 善因なき善果
サトミ 善因と善果、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 善が生じる、善因って、どういうものかな?
メグミ 善因とは、因が無い所に、善が生じることよ。
サトミ 善を招じる、善果って、どういうものかな?
メグミ 善果とは、因が有る処に、善を招じることよ。
サトミ 善因を望み、善果に臨まないと、どうなるの?
メグミ 善果なき善因なんて、果を認めないだけだよ。
サトミ じゃ、徳が小さいから、待ち切れないだけ?
メグミ そうよ、徳が大きければ、果を見とめるのよ。
サトミ 善果を望み、善因に臨まないと、どうなるの?
メグミ 善因なき善果なんて、因を認めないだけだよ。
サトミ じゃ、智が曇っていて、探り切れないだけ?
メグミ そうよ、智が明るければ、因を見とめるのよ。
サトミ 善因だけは、器が小さくて、待てないだけ。
善果ばかりは、灯が暗いから、見えないだけ?
メグミ うん、善因と善果、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、善果を究め、善因を極めていくの?
メグミ そうなの、善因を超え、善果を越えていくの。
サトミ ……………………!!