第三章 第二十話 対話編
CASE 悪因 の裏に 悪果
マナミ 悪なる原因、悪因って、どういうものなの?
マサシ 悪因とは、悪いことだと、先に思うことだよ。
マナミ 悪なる結果、悪果って、どういうものなの?
マサシ 悪果とは、悪いことだと、後で想うことだよ。
マナミ つまり、先に悪と思ったら、後も悪と想うの?
マサシ そうだよ、自らが決めて、悪と思ったから、
それを、覆さない限り、悪と想うことになる。
マナミ 悪いと思って、他に為すとき、どうなるの?
マサシ 同じことを、他に為されて、悪いと想うのさ。
マナミ なるほど、自ら決めれば、自ら覆さないのね。
マサシ そうさ、自分の作用は、原因として返るのさ。
マナミ それなら、悪いと思って、自らが為しても、
相手は、善いと想ったとき、どうなるのかな?
マサシ 初めこそ、心より悪いと、思えたとしても、
後になると、心から悪いと、想えなくなるよ。
マナミ なるほど、自ら決めても、他に覆されるのね。
マサシ そうさ、相手の作用は、条件として返るのさ。
マナミ うん、聴いていたら、そんな気がしてきたの。
マサシ ほらね、原因は条件に、引き摺られるものさ。
マナミ ……………………!!
CASE 悪因 の先に 悪果
サトミ どうして、悪因を積むと、悪果が返るのかな?
メグミ 絶対に、積んだものは、摘まないといけない。
サトミ じゃ、どんなときに、悪因を積むことになる?
メグミ 悪いと、捉えるときに、悪業を積んでいるよ。
サトミ じゃ、どんなときに、悪果を摘むことになる?
メグミ 悪いと、捕えるときに、悪業を摘んでいるよ。
サトミ なら、悪いと思えば、もう、返って来ないの?
メグミ そうよ、先に楽しんで、悪を積んだ分だけ、
後で苦しみ、悪を摘んで、業が消えて行くの。
サトミ それなら、摘まないことも、有り得るのかな?
メグミ 悪いと、果を捕えないと、業を摘まないのよ。
サトミ 傍目には、悪いことが、返って来ていても、
本人が、捕らえなければ、摘まないままなの?
メグミ うん、悪いと思うまで、悪いことが続くのよ。
サトミ じゃあ、悪いことが続き、苦しんでいても、
そのうち、摘んでいくから、苦しめなくなる?
メグミ 苦でも良い、楽でも良い、空に立ち返るのよ。
サトミ 苦が尽き、楽に振れるのか、空に触れるのか?
メグミ ほんの一瞬、苦と楽の狭間に、空が見えるよ。
サトミ ……………………!!
CASE 悪因 という 悪果
サトシ 悪いと思う、悪因って、どういうものかな?
アツシ 悪因とは、自然を解して、悪に分けることだ。
サトシ 悪いと想う、悪果って、どういうものかな?
アツシ 悪果とは、自我を介して、悪を合せることだ。
サトシ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
アツシ 君が、相手に悪いことを、報いたい時には、
その分、自分は善いことを、受ける要がある。
サトシ うん、自分が得するだけ、相手は損するよね。
アツシ いずれ、自分に同じことが、酬われる時には、
その前に、悪いと思っただけ、悪いと想える。
サトシ ここで、悪いと想わないと、どうなるのかな?
アツシ 何度でも、同じ事ばかり、繰り返すだろうな。
サトシ 繰り返して、同じだけ想うと、どうなるの?
アツシ 最終的に、業が落ち切って、空に戻って行く。
サトシ つまり、自ら得を受けて、損を与えた分は、
同じだけ、損を受けるまで、繰り返すんだね。
アツシ 善悪を、全く気にしなければ、徳に変わるが。
サトシ 直接的に、徳に換える道も、存在するんだね。
アツシ しかし、気にするまいと、気にするものだな。
サトシ ……………………
CASE 悪因 と 悪縁 と 悪果
サトシ 悪なる原因、悪因って、どういうものかな?
マナミ 悪因とは、悪と見とめる、因となるものなの。
サトシ 悪なる条件、悪縁って、どういうものかな?
マナミ 悪縁とは、悪と見とめる、縁となるものなの。
サトシ 悪なる結果、悪果って、どういうものかな?
マナミ 悪果とは、悪と見とめる、果となるものなの。
サトシ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
マナミ あなたが、Aすることは、悪いと認める中で、
自分が、Aすることは、悪因を積んでいるの。
サトシ うん、悪因を積むと、悪果が返りやすくなる。
マナミ 他の人が、Aすることは、悪いと認める中で、
自分が、Aすることは、悪縁を作っているの。
サトシ うん、悪縁を作ると、悪因を積みやすくなる。
マナミ 他の人が、Aすることは、善いと認める中で、
自分が、Aすることは、善縁を作っているの。
サトシ うん、善縁を作ると、悪因を積みにくくなる。
マナミ 確かに、悪とは何かは、自分が決めている。
サトシ でも、最悪が何かは、他者と極めていくのか。
マナミ だから、あなたも、しっかり考えて欲しいの。
サトシ ……………………
CASE 悪果なき悪因 と 悪因なき悪果
サトミ 悪因と悪果、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 悪が生じる、悪因って、どういうものかな?
メグミ 悪因とは、因が無い所に、悪が生じることよ。
サトミ 悪を招じる、悪果って、どういうものかな?
メグミ 悪果とは、因が有る処に、悪を招じることよ。
サトミ 悪因を望み、悪果に臨まないと、どうなるの?
メグミ 悪果なき悪因なんて、果を認めないだけだよ。
サトミ じゃ、徳が小さいから、待ち切れないだけ?
メグミ そうよ、徳が大きければ、果を見とめるのよ。
サトミ 悪果を望み、悪因に臨まないと、どうなるの?
メグミ 悪因なき悪果なんて、因を認めないだけだよ。
サトミ じゃ、智が曇っていて、探り切れないだけ?
メグミ そうよ、智が明るければ、因を見とめるのよ。
サトミ 悪因だけは、器が小さくて、待てないだけ。
悪果ばかりは、灯が暗いから、見えないだけ?
メグミ うん、悪因と悪果、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、悪果を究め、悪因を極めていくの?
メグミ そうなの、悪因を超え、悪果を越えていくの。
サトミ ……………………!!