第三章 第二一話 対話編
CASE 善 の裏に 徳
マナミ ねぇ、プンニャ、善は、どういうものなの?
マサシ 善とは、我が解しながら、善く思うことだよ。
マナミ じゃ、Aを善く捉えて、非Aは悪く捕えるの?
マサシ そうさ、どちらかが善いと、考えているんだ。
マナミ それなら、グナ、徳は、どういうものなの?
マサシ 徳とは、我を介さないで、良く想うことだよ。
マナミ じゃ、Aを良く捉えて、非Aも良く捕えるの?
マサシ そうさ、どちらでも良いと、考えているんだ。
マナミ 善と徳は、似ている様で、全く違うものなの?
マサシ 世の半分を、否定しているのが、善であり、
世界の全部を、肯定しているのが、徳なのさ。
マナミ 悪を認めるほど、損われるのが、善であり、
悪を見とめるほど、培われるのが、徳なのね。
マサシ 欲を明らめると、研かれるのが、善であり、
欲を諦らめるほど、磨かれるのが、徳なのさ。
マナミ そっか、本当に、善と徳って、全く違うのね。
マサシ うん、その違いが、分かるとは、徳が高いね。
マナミ どうして、違いが解る事が、徳が高い証なの?
マサシ 両方を、受け容れないと、分からないからさ。
マナミ ……………………!!
CASE 善 の先に 徳
サトミ 悪の裏にある、善って、どういうものかな?
メグミ 善とは、善と悪に分ける、欲の良いことだよ。
サトミ 欲の裏にある、徳って、どういうものかな?
メグミ 徳とは、善と悪を合せる、空の器のことだよ。
サトミ 欲を持ち、善と悪に分けて、二元に変えて、
徳を以って、善と悪を合せて、一元に還るの?
メグミ そうよ、善と徳って、似て非なるものなのね。
サトミ どうして、善と徳って、同じ意味で用いるの?
メグミ 善は善いものであり、徳は良いものであり、
この微妙な区別が、なかなか出来ないからよ。
サトミ 善で言う、善いものって、どういうものかな?
メグミ 何でも、自らが善いと、考えられるものよ。
サトミ 徳で言う、良いものって、どういうものかな?
メグミ 自らが、何でも良いと、考えられるものよ。
サトミ もう、違いが微妙過ぎて、全く分からないわ。
メグミ わざと、微妙にしたの、どっちでも良くない?
サトミ ダメ、確実に解らないと、絶対に善くないわ。
メグミ うふっ、前者の良くが徳で、後者の善くが善。
こうして、総じて良くなる方が、徳の良くよ。
サトミ ……………………!!
CASE 善 と 徳 と 悪
サトシ 徳が分かれる、欲って、どういうものかな?
アツシ 欲とは、善と悪に別ける、良くを持つことだ。
サトシ 欲に憑かれる、善って、どういうものかな?
アツシ 善とは、善と悪に分けて、良くを選ぶことだ。
サトシ 欲に疲かれる、悪って、どういうものかな?
アツシ 悪とは、善と悪に分けて、飽くを択ぶことだ。
サトシ 欲を合わせる、徳って、どういうものかな?
アツシ 徳とは、善と悪を会せて、良くを解くことだ。
サトシ 欲を持ち、善と悪に分けて、徳が壊れるし、
徳を以って、善と悪を合せて、欲を越えるの?
アツシ そうだな、欲と徳の関係は、表と裏の関係だ。
サトシ 善を望んで、楽しんでいると、欲に憑かれて、
悪まで臨んで、苦しんでいると、欲に疲れる?
アツシ そうだな、善と悪の関係は、表と裏の関係だ。
サトシ 色に留まり、飽いて来るほど、空に臨んで、
空に止まって、空いて来るほど、色を望むの?
アツシ そうだな、色と空の関係は、表と裏の関係だ。
サトシ 表と裏、片方が善いではなく、両方良いんだ。
アツシ そうだな、まさに、そう捉えるのが、徳だな。
サトシ ……………………!!
CASE 徳のない善 と 善のない徳
サトミ 善と徳、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 悪を認めない、善って、どういうものかな?
メグミ 善とは、欲を持って、善と悪に別れたものよ。
サトミ 悪を見とめる、徳って、どういうものかな?
メグミ 徳とは、欲を越えて、善と悪を合せたものよ。
サトミ 善を重んじて、徳を軽んじると、どうなるの?
メグミ 徳のない善なんて、単なる悪に過ぎないよ。
サトミ じゃ、悪を認めない、善は厳しくなるのかな?
メグミ そうよ、善が究められ、悪に極められるのよ。
サトミ 徳を重んじて、善を軽んじると、どうなるの?
メグミ 善のない徳なんて、単なる欲に過ぎないよ。
サトミ じゃ、善を認めない、徳は壊れていくのかな?
メグミ そうよ、徳が溶かれて、欲が解かれていくよ。
サトミ 善だけでは、研ぎ澄まし、悪の様になるし、
徳ばかりでは、磨き過ぎて、欲の様になるの?
メグミ そうよ、善と徳、その両方が、必要になるの。
サトミ じゃ、徳を追いながら、善を負っていくの?
メグミ うふっ、善を究めながら、徳を極めていくの。
サトミ ……………………!!