第三章 第二二話 問答編
マサシ 自作(ジサ)とは、どういうものですか?
アキラ 自作は、我に因って、原因を作ること。
因を作るものは、我であり、他ではない。
たとえ、他の者が、悪と捕らえていようと、
我が善と捉えるなら、善の結果が返って来る。
マサシ 他作(タサ)とは、どういうものですか?
アキラ 他作は、他に縁って、条件を作ること。
縁を作るものは、他であり、我ではない。
たとえ、我が者が、善と捕らえていようと、
他が悪を捉えるなら、善の結果が覆って来る。
マサシ 身業(シンゴウ)は、どういうものですか?
アキラ 身業は、身における、業のことであり、
梵語では、カーヤ・カルマと呼べるもの。
身の業とは、行動による、業のことであり、
欲の界に対応している、業として積み重なる。
マサシ 口業(クゴウ)とは、どういうものですか?
アキラ 口業は、口における、業のことであり、
梵語では、ヴァーチ・カルマと呼ぶもの。
口の業とは、言葉による、業のことであり、
色の界に対応している、業として積み重なる。
マサシ 意業(イゴウ)とは、どういうものですか?
アキラ 意業は、心における、業のことであり、
梵語では、マノ・カルマと呼ばれるもの。
心の業とは、意識による、業のことであり、
無色界に対応している、業として積み重なる。
ビゼン 障害を持つ私でも、徳を積めますか?
マコト 徳とは、善でもなければ、悪でもない、
そもそも、実体が無い、空なる器のこと。
よって、徳を積む為には、悪を善に変える、
空を悟り、苦を楽に変える、必要が有ります。
それゆえ、古来より、聖なる求道者は、
決して、逃げ出さない、不退転の覚悟で、
耐え難い、苛酷な境遇に、自らを投げ出し、
暗黒に灯る、歓喜の光明を、求めて来ました。
あなたも、おそらく、彼らの中の一人。
断じて、逃げ出さない、不退転の決意で、
忍び難い、過酷な人生を、選び取りました。
ここまでは見事、ここから、どうするかです。
もし、あなたが、障害を物ともせずに、
選び取った人生に、感謝し尽せるならば、
苦を楽に変え続ける、菩薩に生まれ変わり、
生存即功徳という、稀有な大役を果たせます。
蔑まれたり、憐れまれたり、する中で、
それには、巻き込まれず、喜んで下さい。
人は見とめませんが、神は見とめています。
最前線で戦う、貴方の勇姿は、人類の宝です。
ミヨシ 積善を、あまり勧めないのは、何故ですか?
積善より、積徳が説かれている、気がします。
マコト 現代は、善悪が逆転している時代です。
相手が喜べば善いと、徒に善行をすれば、
宛も、麻薬中毒の人に、麻薬を施すような、
条件が、変わり易い、業を積む事になります。
真の利他とは、相手を成長させること。
決して、好きにさせる事ではありません。
そこが外れていると、善行に励んでいても、
心は虚しさに溢れ返り、本心から喜べません。
勿論、相手が喜ぶことは、大事ですが、
何より、自分が歓ぶことが、大前提です。
神に、何を与えられても、有り難く授かる、
積徳こそ、他を利する、貴重な型となります。