物語編
第三章 第二三話 物語編
第三章 身業 と 心業
第二三話 身に積まれる と 心に積まれる
最早、魔王の怒りは、私だけに向いてはいない。
何故に、治め切れない、欲の界を創り上げたのか。
総てを知るが故の怒りは、全てを造りし者に向かう。
『我が義憤が、奴らが怨念と、等しいと言うか。』
「然り、彼らは、王が法を破る事を、望んでいる。
心の闇から、汝を操り、汝の手をして汝を狂わせる。」
「これは、我が善の中に、他の善を抱えたから。
我が善と他の善が克し合い、悪しき様を映し合う。
苦しいだろう、他の罪を負うとは、こういうことだ。」
「凡俗なら、一つ二つで、限界を感じるだろう。
独り善がりに囚われて、他の善を知りもしないか。
只の一つの葛藤を抱えて、心を塞ぎ切ってしまうか。」
「それを、万の罪を飲み乾すとは、流石は大徳。
法の下に善と悪を明らめて、悪だけを殺いで来た。
汝は、悪の怨嗟の咆哮を、拒むことなく聴いている。」
「ただ、悪が善に変わることを、汝は知らない。
汝に切り捨てられた悪は、後に必ず善として蘇る。
そのとき、汝は、我が善を、諦めなければならない。」
「もう十分に明らめた、もう完全に諦めてしまえ。
この世に、絶対の善など、諦らめる、他にないのだ。」