物語編
第三章 第二四話 物語編
第三章 俗諦 と 真諦
第二四話 世俗に合せる と 世俗を越える
刹那、国王は、天を睨み付けて、鮮血を吐いた。
王の動揺が、天の動揺となり、大地を揺るがせる。
傍らに控える、不動の忠臣達が、浮き足立ち始めた。
王は、虚空を睨み付けたまま、微動だにしない。
辺りに滲み出る、強い静けさが、動揺を圧し殺し、
無言のままに、乱れた気の巡りを、蘇らせて行った。
『確かに、認め難い、およそ、信じ難い一撃だ。
精鋭の鎧で身を固めた、我が衷心が動じるとはな。
しかし、言って良い相手と、言って悪い相手がいる。』
そう呟くと、彼は、愛する者達に、向かって言った。
『諸君、君らの強さを、認めない訳ではないが、
それでも、君らの強さは、彼の強さには適わない。
君の強さが、鋼の其れなら、彼の強さとは水の其れ。』
『不用意に、近づこうものなら、錆びてしまう。
彼に近づくな、諸君の才能を、私は穢したくない。
総員、表に出よ、私が許すまで、入ってはならない。』
そして、全員が外に出るのを、待って、こう言った。
『雛を孵すというのに、卵を火で炙る奴がいるか。
流れる水が燃える火のようだ、一体、貴様は何者だ。』