第三章 第二四話 対話編
CASE 俗諦 の裏に 真諦
マナミ サンヴリティ、俗諦って、どういうものなの?
マサシ 俗諦とは、俗に合せている、真理のことだよ。
マナミ どのように、世俗に合わせて、真理を説くの?
マサシ 右を望んでいるなら、右に臨むようにして、
左を望んでいるならば、左に臨むようにする。
マナミ つまり、世間の良くを適える、教えを説くの?
マサシ うん、良くが叶えられると、飽くに変わるよ。
マナミ パラマールタ、真諦って、どういうものなの?
マサシ 真諦とは、俗を越えている、真理のことだよ。
マナミ どのように、世俗に逆らった、真理を解くの?
マサシ 右に偏っているなら、左に直るようにして、
左に偏っているならば、右に直るようにする。
マナミ つまり、世間の飽くを超える、教えを解くの?
マサシ うん、良くを越えられると、解くに変わるよ。
マナミ 最初に、俗諦を説いて、善から悪に誘って、
最終的に、真諦を解いて、悪から徳に導くの?
マサシ 真理は、条件に応じて、段階的に説かれるよ。
マナミ 真諦は解るけど、俗諦って、本当に真理なの?
マサシ 飽くに誘わないと、解くに導けない、からね。
マナミ ……………………
CASE 俗諦 の先に 真諦
サトミ 俗に合せる、俗諦って、どういうものかな?
メグミ 俗諦とは、良くを適える、相対的な真理だよ。
サトミ その時代の、善に従がって、欲に飽かせるの?
メグミ うん、俗諦は、良くから飽くまで、誘うのよ。
サトミ 俗を超える、真諦って、どういうものかな?
メグミ 真諦とは、良くを越える、絶対的な真理だよ。
サトミ その時代の、善に囚われず、欲を解かせるの?
メグミ うん、真諦は、飽くから解くまで、導くのよ。
サトミ つまり、時代が変わると、善悪も換わるけど、
いつでも、良くに捕われる、それは同じなの?
メグミ 良くに、囚われる人々に、超えろと説いても、
誰も、手放さないから、欲を適えてあげるの。
サトミ 何度も、良くを満たすと、自然に飽きるから、
そのとき、良くを越えろと、真理を解くわけ?
メグミ 欲を持って、良くと飽く、十分に繰り返すと、
開かない、欲の仕組を、自然と解きたくなる。
サトミ 閉ざされた、欲の世界を、繰り返し巡り続け、
ようやく、良くを解く教え、真理を望むのね。
メグミ うふっ、そういう時こそ、この真諦を説くの。
サトミ ……………………!!
CASE 俗諦 という 真諦
サトミ あ~ん、あたしも、素敵な恋愛がしたいなあ。
サトシ 恋愛なんて、脳内ホルモンによる、幻想だよ。
サトミ 良いじゃない、あたしは、夢が見たいのよ。
サトシ 三年で覚めるよ、必ず、恋愛は失恋に変わる。
マナミ サトミは、恋愛の悪い所を見た方が良いし、
サトシ君は、恋愛の良い処を見た方が良いの。
サトミ 矛盾してるじゃない、適当なこと言わないで!
マナミ 違うの、どちらも、相対的に正しいけれど、
それでも、絶対的に、正しいわけじゃないの。
サトシ じゃあ、相対的に正しいって、どういうこと?
マナミ どちらにも、実感が有る、ということなの。
サトシ じゃあ、絶対的に正しいって、どういうこと?
マナミ だからこそ、実体が無い、ということなの。
サトシ どちらも、実感が有るから、実体が無いし、
それ故、実体が無い、という、実感が有るの?
マナミ うん、これだけ、絶対的に正しいと言えるの。
サトミ なによ、あんただけ、正しいなんてずるいわ。
サトシ いや、そう考えないからこそ、絶対なんだよ。
誰もが、正しいと認める、唯一の正しさだね。
サトミ ……………………
CASE 真諦なき俗諦 と 俗諦なき真諦
サトミ 俗諦と真諦、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 欲を適える、俗諦って、どういうものかな?
メグミ 俗諦とは、良くを飽くに、誘う教えのことよ。
サトミ 欲を越える、真諦って、どういうものかな?
メグミ 真諦とは、飽くを解くに、導く教えのことよ。
サトミ 俗諦を望み、真諦に臨まないと、どうなるの?
メグミ 真諦なき俗諦なんて、唯の通俗に過ぎないよ。
サトミ じゃ、欲を適えるだけ、欲を越えないのかな?
メグミ そうよ、欲に塗れるだけ、俗に囚われるのよ。
サトミ 真諦を望み、俗諦に臨まないと、どうなるの?
メグミ 俗諦なき真諦なんて、只の厭世に過ぎないよ。
サトミ じゃ、欲を越えるだけ、欲を適えないのかな?
メグミ そうよ、欲を離れるだけ、世が厭になるのよ。
サトミ 俗諦だけは、良くに塗れて、飽くだけだし、
真諦ばかりは、飽くを離れて、良くならない。
メグミ うん、俗諦と真諦、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、真諦を追い、俗諦を負っていくの?
メグミ そうなの、俗諦を究め、真諦を極めていくの。
サトミ ……………………!!