第三章 第二八話 対話編
CASE 無明 の裏に 無常
マナミ アヴィディヤ、無明は、どういうものなの?
マサシ 無明とは、明りが無くて、凝り固まることさ。
マナミ アニッチャ、無常って、どういうものなの?
マサシ 無常とは、常では無くて、移り変わることさ。
マナミ 凝り固まると、移り変わるのは、どうして?
マサシ 意識に、表の意味を、固めていくためには、
無意識に、裏の意味を、隠さないといけない。
マナミ 確かに、裏の意味が、無意識に積み重なるの。
マサシ うん、意味が重なると、意識が変わるから、
次第に、意識が捕らえる、意味も換わるのさ。
マナミ 表で、意味を捉えるために、意味を固定する。
意味が、凝り固まるから、意識に積み重なる。
マサシ 裏に、意味が重なるために、意識が変化する。
意識が、移り変わるから、意味も遷り換わる。
マナミ 即ち、意味を捉えると、意識に重なるから、
次第に、意識が変わって、意味も換っていく。
マサシ 実感はね、捕らわれるほど、逃げていくのさ。
マナミ 実感を、捉えることって、特に難しいのね。
マサシ そうだよ、この実感さえも、移り変わるのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 無明 の先に 無常
サトミ あたしの、幸せの青い鳥、何処に居るのかな?
メグミ 絶対に、外を探しても、見つからないと思う。
サトミ どうして、そんなことを、言い切っちゃうの?
メグミ 実感は、追い求めていくと、積み重なるし、
そうして、積み重ねていくと、移り変わるの。
サトミ 幸福は、探し続ける時だけ、幸福であって、
ようやく、手に入れた刻から、壊れていくの?
メグミ 幸福は、執着しているほど、変化していくの。
ああ、あれでも違ったし、これでも違ったと。
サトミ あたし、そんなの嫌よ、どうすれば良いの?
メグミ それなら、外に望まずに、内に臨めば良いの。
実感を、探し回らずに、噛み締めていくのよ。
サトミ 不幸でも、構わないから、受け容れていくの?
メグミ それを、悟ることこそ、幸福の青い鳥なのよ。
サトミ そんなの、詰らない、そんな青い鳥は偽物よ。
メグミ じゃあ、外の世界まで、本物を探して来る?
サトミ うん、折角だけれど、これとも違ったみたい。
メグミ うふっ、探し回る間が、幸福なんだもんね。
また、探しておいで、ここで待っているから。
サトミ ……………………
CASE 無明 という 無常
サトミ あ~ん、あたしだって、美容整形やりたいよ。
マナミ どうして、在りのままの、自分を愛せないの?
サトミ う~ん、何となくだけどね、気に入らないの。
マナミ 何となくだと、直したくても、直せないけど。
サトミ じゃあ、鼻かな、もう少し、鼻を高くしたい。
マナミ 実際、鼻を直すと、次は、目が気になるの。
サトミ そして、目を直すと、次は、耳が気になるの?
マナミ あなたは、在りのままを、受け容れるために、
自然を、思いのままに、作り変えているだけ。
サトミ うん、思い通りに為れば、受け容れ易いもん。
マナミ 自然を、受け容れない、不徳が在る限りは、
不自然を、見つけ出して、永遠に作り変える。
サトミ たとえ、全能である、神に為れたとしても、
あたしは、満足せずに、世界を作り変えるの?
マナミ これは、例え話じゃなく、仕組からそうなの。
すべてが、思いのままでも、受け容れないの。
サトミ 容姿を、作り変える、是非の問題じゃなくて、
思い通り、積み重ねる、構造の問題だったの?
マナミ 積み重ねると、移り変わって、終わらないの。
サトミ ……………………
CASE 無常なき無明 と 無明なき無常
サトミ 無明と無常、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 明りが無い、無明って、どういうものかな?
メグミ 無明とは、闇に覆われて、凝り固まることよ。
サトミ 常では無い、無常って、どういうものかな?
メグミ 無常とは、凝り固まって、移り変わることよ。
サトミ 無明を望み、無常に臨まないと、どうなるの?
メグミ 無常なき無明なんて、同じ事を繰り返すだけ。
サトミ じゃ、凝り固まるだけ、移り変わらないの?
メグミ そうよ、条件が変わらず、経験が広がらない。
サトミ 無常を望み、無明に臨まないと、どうなるの?
メグミ 無明なき無常なんて、違う事が過ぎ去るだけ。
サトミ じゃ、移り変わるだけ、凝り固まらないの?
メグミ そうよ、因果が固まらず、体験が深まらない。
サトミ 無明だけは、固まるだけで、変わらないし、
無常ばかりは、換わるだけで、定まらないの?
メグミ うん、無明と無常、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、無常を究め、無明を極めていくの?
メグミ そうなの、無明を超え、無常を越えていくの。
サトミ ……………………!!