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物語編

第三章 第二九話 対話編

CASE 輪廻 の裏に 涅槃

 

マナミ サンサーラ、輪廻って、どういうものなの?
マサシ 輪廻とは、苦楽に塗れて、二元を巡ることさ。
マナミ 楽を求めて、苦を避けると、転生に対かうの?
マサシ そうだよ、欲を持つから、欲界に生れ変わる。
マナミ ニルヴァーナ、涅槃は、どういうものなの?
マサシ 涅槃とは、苦楽を越えて、一元に至ることさ。
マナミ 楽を見とめ、苦を認めると、解脱に向かうの?
マサシ そうだよ、空を悟るから、欲界を抜け出せる。
マナミ つまり、善を突き詰めると、欲界を巡り続け、
    逆に、悪を受け容れると、欲界を抜け出すの?
マサシ そうさ、欲を持って、欲界に生まれて来て、
    輪廻して、徳を以って、欲界を越えて行くよ。
マナミ つまり、善を突き詰めて、天の界に昇っても、
    その先に、欲を抜ける、出口は無いってこと?
マサシ そうさ、善を積み重ねて、最善に至っても、
    欲の頂は、行き止りだから、出口は無いのさ。
マナミ う~ん、涅槃に至るには、地から望むより、
    更に高い、天から望む方が、簡単に思えるの。
マサシ 確かに、そう想えるけど、それが欲界の罠さ。
マナミ ……………………

 


 

CASE 輪廻 の先に 涅槃

 

サトミ 欲を重ねる、輪廻って、どういうものかな?
メグミ 輪廻とは、良くを望んで、飽くに臨むことよ。
サトミ 欲を越える、涅槃って、どういうものかな?
メグミ 涅槃とは、良くを望んで、解くに臨むことよ。
サトミ 良くを望み、飽くに臨むと、どうなるのかな?
メグミ どれだけ、良くを修めたかで、道が別れるよ。
サトミ 飽くことに、厭いてないと、どうなるのかな?
メグミ 異なる良くを望んで、今度も飽くに臨むのよ。
サトミ 例えば、リンゴに飽いたら、ミカンを望むの?
メグミ うん、ミカンに飽いたら、バナナを望むのよ。
サトミ 飽くことに、厭いていると、どうなるのかな?
メグミ 更なる良くを望んで、今度は解くに臨むのよ。
サトミ 例えば、バナナに飽いたら、もう望まないの?
メグミ うん、良くに飽く仕組み、そのものに飽くの。
サトミ 完全に飽くと、二度と、生まれ変らないけど、
    半端に飽くから、何度も、生まれ変るのかな?
メグミ そうよ、良くの対象を変え、輪廻するのよ。
サトミ 必ず、良くは飽くものなのに、どうしてかな?
メグミ うふっ、それを完全に解くのは、難しいのよ。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 輪廻 という 涅槃

 

サトシ 巡り続ける、輪廻って、どういうものかな?
アツシ 輪廻とは、一元を忘れて、二元を巡ることだ。
サトシ 苦楽に塗れ、二元を巡ると、どうなるのかな?
アツシ 楽に追い縋り、苦に逃げ惑い、色に囚われる。
サトシ 在り続ける、涅槃って、どういうものかな?
アツシ 涅槃とは、二元を越えて、一元に在ることだ。
サトシ 苦楽を越え、一元に至ると、どうなるのかな?
アツシ 楽も乗り超え、苦も乗り越え、空に止まれる。
サトシ 僕もさ、空を悟って、涅槃に止まりたいよ。
アツシ どうして、輪廻を越え、涅槃に到りたいんだ?
サトシ だって、この輪廻なんて、総じて苦だから、
    僕も、早く抜け出して、楽に成りたいんだよ。
アツシ そうして、涅槃に縋って、輪廻から逃げても、
    やっていることが、輪廻と同じと思わないか?
サトシ 楽に縋って、苦から逃げるのが、同じなの?
アツシ だから、そういう動機から、涅槃に至っても、
    最終的に、輪廻の世界に、戻って来てしまう。
サトシ う~ん、それだったら、どうすれば良いの?
アツシ ほら、輪廻と涅槃の、二元も越えてしまえよ。
サトシ ……………………!!

 


 

CASE 涅槃なき輪廻 と 輪廻なき涅槃

 

サトミ 輪廻と涅槃、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 二元を巡る、輪廻って、どういうものかな?
メグミ 輪廻とは、煩悩に塗れた、喧噪の地のことよ。
サトミ 一元に居る、涅槃って、どういうものかな?
メグミ 涅槃とは、煩悩を越えた、静寂の地のことよ。
サトミ 輪廻を望み、涅槃に臨まないと、どうなるの?
メグミ 涅槃なき輪廻なんて、下位の二元に嵌まるよ。
サトミ じゃ、良くに止まって、飽くを避けるのかな?
メグミ そうよ、良くと飽く、旧い対立に倦むだけよ。
サトミ 涅槃を望み、輪廻に臨まないと、どうなるの?
メグミ 輪廻なき涅槃なんて、上位の二元に填まるよ。
サトミ じゃ、涅槃に止まって、輪廻を避けるのかな?
メグミ そうよ、輪廻と涅槃、新たな対立を生むのよ。
サトミ 輪廻だけは、良くと飽くが、解けないまま。
    涅槃ばかりは、輪廻と涅槃が、解けないまま?
メグミ うん、輪廻と涅槃、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、涅槃を追い、輪廻を負っていくの?
メグミ そうなの、輪廻を究め、涅槃を極めていくの。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 諸行 と 諸法 と 涅槃

 

サトシ 輪廻を越えて、涅槃に至るには、どうするの?
マサシ ダルマ・ウッダーナ、法印を修めることだよ。
サトシ 原因を司る、諸行無常は、どういうものかな?
マサシ 涅槃に対かう、動機となる、法印のことだよ。
サトシ すべてが、移り変わると、涅槃に向かうの?
マサシ 得ても、壊れてしまうなら、諦めるしかない。
サトシ 条件を司る、諸法無我は、どういうものかな?
マサシ 涅槃に対かう、過程となる、法印のことだよ。
サトシ すべてを、脱ぎ捨てると、涅槃に向かうの?
マサシ 拘りを、離れていくことに、拘るしかないよ。
サトシ 結果を司る、涅槃寂静は、どういうものかな?
マサシ 涅槃に対かう、成果となる、法印のことだよ。
サトシ すべてが、落ち着いたら、涅槃を迎えるの?
マサシ 苦楽が無い、すっきりした、一元の境地だよ。
サトシ う~ん、これだけ修めて、静かになるだけ?
マサシ そうだよ、他には無かった、静けさがあるよ。
サトシ なんだ、もっと良いものかと、思っていたよ。
マサシ それはね、原因の法印から、実感できてない。
    無常を、実感していれば、有り難さが解るよ。
サトシ ……………………

 


 

CASE 無常 と 無我 と 寂静

 

サトシ 涅槃に、至るためには、どうすれば良いの?
マサシ 諸行無常、諸法無我、涅槃寂静を修めるのさ。
サトシ 一切皆苦も加え、四つ在ると、教わったけど。
マサシ ああ、それは、取り敢えず、横に置いといて。
サトシ 総て移り変わる、諸行無常は、どういうこと?
マサシ それなら、移り変わる世で、何を望めば良い?
サトシ たとえ、何かに臨んでも、壊れてしまうよね。
マサシ うん、だから、変わらない、涅槃を望むのさ。
サトシ 我が物ではない、諸法無我は、どういうこと?
マサシ それなら、我が物に非ずで、何を望めば良い?
サトシ たとえ、何かに臨んでも、詰らないだろうね。
マサシ うん、だから、在りのまま、涅槃を望むのさ。
サトシ 心が波立たない、涅槃寂静は、どういうこと?
マサシ 良くと飽くを解くと、空くことが出来るのさ。
サトシ う~ん、これだけ修めたのに、空くだけなの?
マサシ そうだよ、楽は無いけれど、すっきりするよ。
サトシ なんだ、もっと良いものかと、思っていたよ。
マサシ ああ、そういうことなら、一切皆苦も加えて。
    つまり、君の様な人向けに、後で加えたのさ。
サトシ ……………………

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