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物語編

第三章 第三十話 対話編

CASE 有情 の裏に 無情

 

マナミ 情が有るもの、有情って、どういうものなの?
マサシ 有情とは、人や獣のような、心が有るものさ。
マナミ 心が有る者が、欲を持つとき、どうなるの?
マサシ 思いのまま、欲を積み重ね、生まれ変わるよ。
マナミ 情が無いもの、無情って、どういうものなの?
マサシ 無情とは、木や草のような、心が無いものさ。
マナミ 心が無い物が、欲を持たないと、どうなるの?
マサシ 在りのまま、型を受け容れて、在り続けるよ。
マナミ ということは、草や木って、悟っているの?
マサシ ううん、欲が無いだけで、欲を越えてないよ。
マナミ 将来的に、有情として、生まれ変わったとき、
    欲を超えるか、欲を越えないか、解らないの?
マサシ 意志を持ち、有情は、有欲を選んでいるけど、
    意志を以って、無情は、無欲を択んでないよ。
マナミ そもそも、無情って、生まれ変わるのかな?
    生まれ変わるのは、有情だけじゃなかったの?
マサシ 無情は、生まれ変わる、意志を持ってないよ。
マナミ なるほど、いつのまにか、生まれちゃうのね。
マサシ そうさ、誰でも初めは、そういうものなのさ。
マナミ ……………………!!

 


 

CASE 有情 の先に 無情

 

サトミ 欲が有る者、有情って、どういうものかな?
メグミ 有情とは、意志を持って、善を究めるものよ。
サトミ 欲が無き物、無情って、どういうものかな?
メグミ 無情とは、意志を持たず、無に極まるものよ。
サトミ 欲を持って、善を究めると、どうなるのかな?
メグミ 善と悪が、大きく分かれ、心が動いていくよ。
サトミ 欲を以って、善が窮まると、どうなるのかな?
メグミ 善と悪が、器から溢れて、心が揺れていくよ。
サトミ 欲を捨てて、心を停めると、どうなるのかな?
メグミ 無情に生まれ、欲が殺されて、動かなくなる。
サトミ 欲を越えて、心を止めると、どうなるのかな?
メグミ 菩薩に変わり、欲を活かして、動じなくなる。
サトミ 良くを究めると、いずれ、飽くに極まるけど、
    欲を滅するか、欲を活かすか、迫られるのね。
メグミ 欲を悪として見れば、無に続く道を選んで、
    欲を徳として捉えれば、空に続く道を択ぶの。
サトミ う~ん、悩まず止まるか、悩んで活かすか。
    あたしは、どっちを選べば、良いか解んない。
メグミ うふっ、そうして悩めるのは、有情だけだよ。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 無情 と 有情 と 菩薩

 

サトシ サットヴァ、有情って、どういうものなの?
アツシ 有情とは、善性を有する、欲を抱くものだな。
サトシ 生きとし生けるもの、誰もが善性を持つの?
アツシ そうだ、善人も悪人も、誰もが良くを有する。
サトシ 我が為に、良くを使うと、どうなるのかな?
アツシ いずれ、良くが窮められて、飽くまで極まる。
サトシ 欲に飽き、使う事を止めると、どうなるの?
アツシ 良くと共に、心を亡くして、無情に変わるな。
サトシ 欲に飽き、使い方を変えると、どうなるの?
アツシ 良くを、我が為に使わずに、他の為に用いる。
サトシ 他の為に、良くを遣うと、どうなるのかな?
アツシ いずれ、良くを究められて、解くまで極まる。
サトシ じゃ、我が為に使えば、良くが飽くになり、
    反対に、他の為に遣えば、良くが空くになる?
アツシ ああ、我が為に使えば、苦に続く業となり、
    反対に、他の為に遣えば、空に続く法となる。
サトシ 即ち、欲を捨てるなら、無情に為るだけで、
    上手く、欲を用いるなら、菩薩に成るわけか。
アツシ これこそ、智と徳を修める、菩薩の良くだな。
サトシ ……………………!!

 


 

CASE 無情なき有情 と 有情なき無情

 

サトミ 有情と無情、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 者なるもの、有情って、どういうものかな?
メグミ 有情とは、人や獣の様な、欲が有るものだよ。
サトミ 物なるもの、無情って、どういうものかな?
メグミ 無情とは、木や石の様な、欲が無いものだよ。
サトミ 有情を望み、無情に臨まないと、どうなるの?
メグミ 無情なき有情なんて、唯の強情に過ぎないよ。
サトミ じゃ、感情が強いから、拘り過ぎるのかな?
メグミ そうよ、諦らめないから、獣のようになるよ。
サトミ 無情を望み、有情に臨まないと、どうなるの?
メグミ 有情なき無情なんて、只の物情に過ぎないよ。
サトミ じゃ、感情が無いから、在り続けるのかな?
メグミ そうよ、明らめないから、物のようになるよ。
サトミ 有情だけでは、情が過ぎて、智を研けない。
    無情ばかりでは、情が無くて、徳を磨けない?
メグミ うん、有情と無情、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、有情を究め、無情を極めていくの?
メグミ そうなの、無情を超え、有情を越えていくの。
サトミ ……………………!!

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